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28:俺はあの魔物の魔石が欲しい 

 魔石集めが佳境に入っていた。

 現在俺たちのチームは全部で十四個集めている。

 二人には、とりあえず今ある分で上がれといったが、三人一緒に上がるといって聞かないので、最後の一体を探していた。


「最後の一個は楽なのがいいですね」


「そうね。数でいいんだから、もっと小さいのを狙えばいいのよ。だいたい、なんでジャックは好き好んでこんなサイズの魔物ばっかり狙うわけ」


 魔石は一番小さいものでも赤ん坊の握りこぶし程度はある。


「これ全部売り払ったら、四、五年は遊んで暮らせるわよ?」


 つまり、あれか。

 俺たちがやってる魔石集めは入学試験を兼ねた学校運営資金の調達だったのか。


 俺が、特待生制度の無料のからくりを看破していたところで、突如爆裂音がした。

 森の外で何らかの炎系の爆裂魔法を使ったようである。


「何が起きた?」


『ダンジョン内の受験生に告ぐ。現在、ダンジョン内に超A級の魔物が確認された。試験を一時中断する。速やかにダンジョン内から撤退せよ。繰り返す……』


「超ええ灸って何でしょうね? 肩こりでも取れるんでしょうか?」


「超A級よ! 魔物の中でも最大級の化け物! 村が一つ滅んだなんて話いくらでもあるんだから!」


「ほう」


 俺は、気配を探る。

 左手方向の動きがやけに騒がしい。


「ジャック、本気ですか?」


「本気って何のこと?」


 カミラは不思議そうにミーアを見た。

 ミーアは、その視線に答えるように引きつったように挙げた自分の口角をつついている。

 俺もまた、いつのまにかひん上がった自分の口角を親指でなぞった。


「カミラ。ジャックは……アホの子なんです……」


「アホの子?」


「バトルアホなんとかっていう病気だそうです」


 ミルウーダが言ったのは『バトルアホリック』である。


 意味は戦闘中毒だそうだ。

 まったくをもって失礼な奴らである。


「お前たちは、魔石もって先に戻ってろ!」


「ちょっと、ジャック! 待ってください! 本気ですか!?」


◆◆◆


「腕が! 腕がぁぁぁぁ!!」


「おい、けが人を連れていけ!」


 血なまぐさい空気をかき分け俺が到着した時、そこは地獄だった。


 辺りの木々には、血や肉片がこびりついている。

 また、地面には、いくつもの血だまりが出来上がっていた、


 その中心にいるのは、ミミズであった。

 しかし、ミミズというにはサイズがでかい。

 全長十メートルはある。

 さらに、鱗のような表皮が、気合の入った鎧のようにギザギザと突き出ている。

 しかし、その中で最も異様なのはその三つに分かれた頭部である。


 三つ首ミミズと相対するのは、二十人以上の男たちであった。

 魔術師が十名程度。

 そして、それをかばうように剣士達が立っていた。


 その輪の外にいるとんがった銀の兜をかぶった男が叫ぶ。


「そいつはもう無理だ! 陣形に戻れ! それよりも、応援はまだか!」


 銀兜をかぶった男が、さらに叫ぶ。


「おい! 通信術士! 聞いているのか!」


「聞こえてます! 援軍はまだ、三十分はかかりそうです! それまで持ちこたえろと! とりあえず、場所知らせるためにのろしあげときます」


 銀兜の男は罵りの言葉を放つ。

 と、それを何かの合図に勘違いしたのか、囲んでいた剣士の内の一人が剣を高く掲げた。


「一斉に、かかれ!!」


 そういって、三つ首ミミズに向かって男が走り出した。

 それに剣士たちが続く。


 が、その突撃はすぐに止まってしまった。

 最初に走り出した男が真ん中の頭に食われてしまったのだ。

 げっぷでもするかのように身体を震わせた真ん中の頭は大口を開ける。

 そして、両サイドの首は、獲物のえり好みでもするかのように剣士たちを見渡した。


「む、無理だ!!」


 一人の男が叫び剣を取り落とした。

 ミミズの動きが一瞬止まり、そちらを向いた。

 そして、ゾルッと滑るように男に向かって動き出す。

 大口が開いた。


 男に口が迫ったとき、俺は、足元にあったこぶし大の石をミミズに向かってぶん投げた。


 三つ首ミミズの左の頭が爆ぜる。

 男は、その隙に走り出した。

 それに倣うように、他の剣士たちもクモの子を散らすように走りだす。


「待て! お前たち!」


 残ったのは、銀兜の男と通信術士の二人。

 銀兜の男は、意を決したようにミミズに相対する。


 と、ミミズが尾を振り回した。

 銀兜の男は慌ててそれを遮ろうと剣で受けた。

 が、ボゴという音と共に吹き飛んだ。


 俺は、その男に走り寄る。


「おい、大丈夫か?」


「ま、まだ、いたのか。逃げろ! ここは俺たちが食い止める!」


 男は、剣を杖代わりに何とか立ち上がった。

 先ほど剣を持っていた腕は青黒くはれ上がっている。

 恐らく折れているであろうが、男はそんなそぶりは見せない。


「隊長!! ぼぼぼぼ、僕もですか?」


「当たり前だ!」


 通信術士が、震えながら剣を構える。


「む、無理ですよ! あいつ、頭が……頭が再生してる!!」


 確かに弾け飛んだはずの頭に肉腫が浮いてきている。


「あんたら誰だ?」


「俺達は冒険者だ! この試験中に危険すぎる魔物を退治していたんだが…… 超A級が出てくるとはな」


 三つ首ミミズの吹き飛んでいた頭は今や、完全に元に戻っていた。


「そうか。ただ、試験中なんでな。俺は魔石が必要なんだ」


「バカを言うな! 受験は中止だ!」


「いや、ダメだ。俺はあの魔物の魔石が欲しい」


 俺は、鞘と剣を構えた。


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