465 月下青年 服部聖の章 その3
「きみ、困るよ」
出社早々部長様に突撃されました
・・・思わず天を仰ぎましたね
ブルータス、お前もか
加藤です
昨日の夜から部長様ご一行に振り回されている加藤です
いや予想はしていましたよ?
部長様の突撃があるでしょうね、と
そして愚痴なのか文句なのか知らないけど楽しくない時間が始まる、のもね
だってたぶん部長様の奥様とお嬢様は自分に都合の良いことしか報告していないでしょうから
・・・だったら部長様も同席すればよかったのに、と思いましたね
「(娘のことは)妻に任せているから」
の一言で逃げやがりあそばせましたのよ?
そのくせ文句だけは言ってくる
「この町にはまともな市民はいないのか!」
と世界の中心で叫びたい気持ちで一杯です
だってね彼と一緒に指定された店について驚いたんですよ
回らないお寿司屋さんじゃん!
さすが部長様
パないですね
まあしっかり「奢り」なのを事前に確認していたのでいいんですけどね
だって彼の要求は最初
「ファミレスで!」
でしたもの
知らない人に娘や自分が結婚できない事実を知られたくない部長様一家
即座に場所を指定してきました
彼は「高い所は無理」と言っていましたがそこは部長様権限で決まりました
・・・たぶん妻や娘からの突き上げもあったんだと思いますけどね
店に入ると座敷に案内されました
すでに座ってニコニコしている奥様とお嬢様がいました
すかさず一人前ごとの寿司桶が出てきました
「さあ食べて」と言われました
食べました
ここまでは順調でした
大変おいしゅうございました(笑)
さすが一人数万円の寿司ですからね
でも問題はここからでした
「娘が結婚できるように何とかしろ(意訳)」
と奥様が言ってきました
一方、無理やり呼び出された彼は不機嫌でしたね
全然関係ない人間に呼び出された上に無茶振りですからね
しかしGTMとの感応機能が壊れている彼の対応は凄かったです
無表情のまま
「だが断る!」
と面と向かって言いました
・・・リアルで初めて聞きましたが「それでいいのか?社会人」と言いたいですね
しかし相手は自分を中心に世界が回っていると勘違いしている人間です
「寿司を食べたんだから言うことを聞くのは当たり前(意訳)」
・・・先ほどから(意訳)というのが頻発していますがこれは私なりに簡潔にまとめたものです
実際には奥様とお嬢様の言っていることが理解できませんでしたから
「朝食を食べた?」
と聞いて
「パンは食べてない」
と答える頭のおかしな人間かそれ以上ですからね
理解しようとする方が間違っているんです
・・・突然ですが元彼氏の『バカ嫁』を思いだしました
本当にそっくり
居るところにはいるんですね
一匹見つけたら30匹はいるというのは本当でしたね
とまあ昨日の夜のことを部長様にしっかり言っておきました
奥様とお嬢様の都合の良い話だけを聞いて無茶振りされたら困りますからね
・・・ところが部長になる人間は凄かったです
「わかった、でも娘の婚活もよろしく(意訳)」
この町にはまともな市民はいないのか!、言いたいです
いや会社では仕事しましょう、ですかね