14 『イケメンを指導した先輩』の災難
けして名前を考えるのが面倒になったわけではありません
先輩の名前は剛田です
『イケメンを指導した先輩』です
入社5年目です
3年目は先輩に教えられながら営業を勉強しつつ実践の日々でした
4年目に新人の指導係になりました
その新人はまじめでやる気があり、1年がたったころには一人で営業に回れるまでに成長しました
そこで相談があった時だけフォローするということになり手が離れました
5年目に担当した新人がイケメン君です
こちらはとても苦労しました
何せ入社当時は「マジッすか」、「超すげー」、「ハンバないっすね」とかの単語ばかりで会話をします
これでどうやって営業しろというのだ?
指導の仕方に悩みました
結構頑張って矯正しました
でも駄目でした
とりあえずは良いかと思い、いや、上司からの圧力に負けてだな、外回りに連れて行きました
そしたら最初っからやらかしました
「ちーっす」
と挨拶したのです
すぐに
「すみません!」
と頭を下げるとともにイケメンの頭も下げさせたのですが暴走はその後も続きました
あやうく取引停止になるところでした
帰社して課長に言いましたが「外回りに連れていけ」とかしか言いません
埒が明かないので次の日はイケメンに「課長の指示に従え」といって置いていきました
指導係は私なので正しい指示です
1日普通に営業して、普通のありがたさを噛みしめて帰社しました
そしたら凄い事態になっていました
困った課長が他の営業に丸投げしたそうです
予想通り?、創業当時から付き合いのある会社の社長の前でもやらかして、取引停止になったそうです
うちの社長が急いで謝罪にいき何とか元通りになったそうです
でもその後始末に営業2課は大混乱です
課長に呼ばれて明日からは指導に戻ってくれと言われました
無理ですと答えると裏話を聞かされました
イケメン君は某銀行の頭取の娘関係だったそうです
といっても就職活動でうちの会社に来ていたイケメン君を入社するように言っただけだそうです
それを聞いたうちの会社の銀行系の社員が希望をかなえるように手配したとのこと
だったら
その銀行に関係のある会社の営業のみに連れて行く
何かあれば某銀行が後始末をする
問題が起こっても俺は責任をとることはない
ってことにしました
書面も貰いました
部長の承認印まであります
どんだけ嫌われているだよイケメン・・・
結果、午前に1社、午後1社の1日2社、それを週5日で計10社がいけにえ、もとい選抜されました
後日譚
選ばれた会社では週に1回、天災が訪れることになった
おかげで担当者は胃に穴が空く
銀行の頭取に話が行く、と思いきや、とりまきがブロックしたため頭取は最後まで何も知ることがなかった
そのため『イケメンを指導した先輩』の災難はまだまだ続くことになる
残念!