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会社では仕事をしましょう(連載版)  作者: 焼ミートスパ


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12 開発部長独白

「貢物を忘れるな」


「了解です、手土産も途中で買います」


「イチゴ大福だぞ」


「わかってます、行ってきます」


そういって車が発進した







あれからもう2週間


それが始まりだった


最初は地震だった


小さなものだったが水道ガス電気が3日間止まった


そのせいで近くの学校に避難することになった


体育館の床は冷たく硬かった


そこで思い出したのが社内公募で出された『モフモフ君』という変な名前のマットだった


会社で仕事するとき足が冷えるので暖かいマットが欲しいというものだ


需要がないと思い部長の私が却下したのだがそれを聞いた研究部の女子事務員が必要性を訴えた


そこで他にも転用できる高保温毛布ということで開発が始まった


取引のあったメーカーに話をすると異様に食いついてきた


聞いてみるとあちらも事務員からの要望だそうだ


経費削減で暖房が押さえられる


足元からくる冷気と戦いながら一日中事務をする


それなら暖房費0円の『モフモフ君』があればいいのでは?となったそうだ


潜在的な要求があったってことだ


似たようなものがすでにあるが、汚れたら帰宅時に水洗いしてほしておけば朝には乾く


そんなハイスペックなんて無茶ブリだろうと思った


しかし開発員が家に帰ってその話をすると育児中の妻から催促されたとの報告があった


ジュースをこぼし、食事をこぼし、よだれをたらして汚す、暖かくって洗いやすいなら良いとのこと


難攻したが試作品が出来てきた


ロールできたのを小さく切って使い勝手を試している最中


そんな中、地震が起きた


秋口なので夜には体育館の床が冷える


なら『モフモフ君』があればいいんじゃね?


開発部の人間は皆考えた


そこで携帯で電話して使用許可をとる


非常時だから良いとのこと


ついでに実地の使用試験もしておけばOKになった


上層部太っ腹!


うちの若いのが取りに行って家族分を切り分ける


使うと家族から「あったかいー」との声が上がる


それを見た近所の人が「うちにも!」と要望


またたくまに体育館じゅうに広がる


そこにTVクルーが中継にくる


全国放送で良さが広がる


それを見た他の体育館からも声がかかる


開発メーカーが追加で送ってくる


避難所全体に広がる


それがまたTVでニュースになる


メーカーの知名度が上がる


地方都市の中小企業の名前が全国に広がる


ライフラインが復活してもそれは止まらない


ぎりぎりの収益だったのが一気に優良企業へ


開発部は感謝されまくり


営業からは優先的に取引してくれるので受注アップの嬉しい悲鳴


2週間程度、お祭り騒ぎだった


しかしひと段落すると問題があることに皆が気がついた


アイデアを出した人間が全く評価されていない


それどころがアイデア料や利益すら受け取ってない


不味いんじゃね?


いそいで公募の応募者に連絡


そしたらその上司の部長から『不要』との返事がきた


なぜ?


皆が思った


『今回のことで何もしていないので受け取る資格がない』


それが理由


あと「『モフモフ君』すでに受け取ってます」とのこと


<<<おいそれでいいのか?>>>


皆が思った


どうやら良いらしい


それでは気が済まないということで好物のイチゴ大福を送ることにした


メーカーからは試供品が送られる


それが先ほど若手が持って出発した


この恩は忘れない


何かあったら開発部が力になる


そう心に決めた瞬間だった

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