第3話 異世界で 友達100人 出来るかな
異世界、そんな期待で胸躍る世界。
貴族、優雅で可憐な物語の華。
転生、平凡から一変、波乱万丈な物語が始まる。
そんな言葉たちが現実になったとしたらどうだろうか。
創作物の中だからこそ良いのであって現実になった瞬間、幻想は現実に転化してしまうのである。
故に偉い人はこう言いました、
『二次元こそ至高』
♂♀
クレイランド王国にあるプロトリッター伯爵領にある小さな村のはずれにある大きな湖、その湖の片隅に建つ屋敷が俺が住んでいる所だ。
この屋敷の住人は俺と俺の母親のユールフィア・プロトリッターと掃除洗濯炊事とこの家の家事を全て一人でこなしている使用人であるリーナの3人だけ。
一応貴族のはずの俺と母親がなぜこんな田舎も田舎に引きこもって住んでいるのか、
その理由は
知らない
逆に考えて5歳児が知っている方が驚きである。
元一般人で今尚庶民感覚が抜けない俺にはわからない貴族だからこそのあれこれがあるのかもしれない。
ちなみに今までの人生で俺はこの屋敷から離れた事も無ければこの屋敷に住む二人以外の人間にはあった事がない。
先日の事は別にして、人間だから問題はない。
むしろ問題しかない。
父親の顔も見た事がない時点でお察しである。
筋金入りの箱入り。
又の名を引きこもり予備軍ともいう。
そんな引きこもり生活を満喫している俺の生活はと言えば、朝起きて、ご飯食べて、遊んで、お昼食べて、勉強して、昼寝して、遊んで、ご飯食べて寝る、の無限ループ。
ニート垂涎の生活習慣じゃないか!
だがそんな激甘な生活にも欠点があった。
それは尽く極限なまでに究極的に、
暇だった。
遊ぶといってもゲームも無ければインターネットもない遊具も無ければ人もいない、運動しようと外に出てもあるのは大自然に囲まれた空き地と森と湖のみ、人が居る様な所に行くには森の中をそれなりの時間歩くしかない。
こんな状況でどう遊べと。
まさか異世界に来てぼっちの呪にかかるとは思わなかった。
孤立じゃなくて孤独、これ重要。
外に行ったとしても一人では遊ぶこともなく、やることといえばもっぱらトレーニングくらい。
と言っても筋トレとか本格的なものじゃなく、それこそこの世界に来た時ハイハイすらできない赤ん坊の頃から続けている体を動かす準備運動、一種の習慣みたいなものだ。
それと最近体力作りに始めた湖の周辺を走るだけ。
俺は異世界だと知って、もしかしたら何かしらの物語のような冒険が始まるのではないか、不思議な体験が待っているのではないかと儚い期待を抱いていたのだが幻想はまやかしであり本物ではない俺の妄想は儚くも打ち砕かれた、現実はただただ無情である。
切実に友達が欲しいです。
だがそんな悲しい思いをするのも、今日迄だ、俺は新たに一人目の友達を手に入れた。
それは、
『ヒャッハー!待ってましたよレイヴィン』
「湖の乙女」ことエレインである!
もう人間じゃなくていいやという諦めの境地、というわけではなく運動しようと外に出たら湖から勝手に出現したわけである。
二度と会いたくないわけではないが、できれば会いたくなかった。
主に俺の精神安定のために。
「うん、エレイン久しぶり」
久しぶりというのは、心の整理と現実逃避の為2.3日自室に引きこもっていたからだ。
部屋から出てきたのは、心の整理ができたのとリーナに本気で病気の心配をされたからである。
「ねぇ、エレイン待っていたとか言うけど何かする事でもあったの?」
心の整理がついたおかげでエレインとごくごく普通に話ができる、それこそ普通の友達のような感覚だった。
うん、狂ってる自覚はある。
『当然じゃないですか、共に二人の世界についてのOHANASIをしようじゃないですか、今回は本当に軽い奴を持ってきましたよ』
おい!お酒を出すのは止めろ!
どうやらエレインは二人でOHANASIがしたいらしい。
OHANASIというのはお互いの世界についての様々な事柄を相手に語ってあげる事らしい。
具体的にはエレインは俺にこの世界の歴史を語り、俺は前の世界での歴史だの神話だのサブカルチャーだの元普通の学生なので浅く広くを語っていたらしい。
それなら俺もかまわない、俺自身この5年で前世のことを懐かしく思えることが度々あるのでそれを誰かに話すのもいい事かもしれなと思ったからだ。
「わかったけど、酒類は無しだ。成人するまでは禁酒するって決めたから」
この世界では15で成人でお酒も一応その歳かららしいが前の世界ほどその辺りの規制が厳しい訳ではなく一部は子供の時からでも普通に飲むらしい。
酒場の息子とか葡萄畑を持った貴族とかドワーフとか、いるのかよドワーフ。
……お酒はね、人生を狂わせるんだよ
皆んなは気をつけてね。
『それではまず私の方から話しますね。それじゃあこの世界ではですねぇーーー』
お酒には軽くトラウマができるくらいの苦手意識を持った、二度と口にしないと言うほどではないが成人するまでは口にしないと心に決めたほどである。
お酒は本当に人生を人の思いもよらぬ方へと狂わせる
まあそれでも、お酒が結んだこの貴重で素晴らしい出会いは大切にしようと思った。