契約の代償(ファンタジー)
「○%△□!!>><&”#%$!!」
俺の目の前で何かが叫んでいる。
そして俺に触ろうと近寄っている気配がする。
反射的に「近寄るな!」と意識すると目の前に壁っぽい光が出来た。
「・#!?”%#$&!>>!?」
何かは壁っぽいものを叩いているようだ。
俺は混乱した頭で現状を把握しようとした。
目の前に壁と、何かがいる。
何かは何かである。見えないがなんとなく黒っぽい霧のようである。
そして場所はどこかの石造りの部屋だ。窓もなく机とその上に本、そして乱雑に散らばったバラバラの紙(というより何かの皮?ぶ厚い)が散らばっており、それぞれに見たこともない図形や文字が書かれている。
俺については思い出せる。日本のそこら辺にいる社会人だ。
そろそろ結婚しないとな~と思いながら街を歩いていたはず。
そして家に帰る道すがら、今まで意識もしたことの無い道を見つけた。
ふらふら~っと歩いて行った後の記憶がない。
そしてこの状況、誘拐でもされたのだろうか?
「あの、さっきからどこかで話している人。ここはどこですか?」
声は聞こえるが何を言っているかわからない。どこの言語だろう。
「”#$”? 『%#$”’$』」
目の前の霧の下が光った。そしたらその霧が人の形になった。
「貴様!この壁を解け!!」
透明な青い人型が喋ってる、そして言葉もわかる。
とりあえず、壁は俺が作ったんじゃないと思うんだが。
「あの、ここはどこですか?」
分からないことは置いておいて、現状把握しよう。
「そんなことはどうでもいい!壁を解け!」
話を聞いてもらえない。いや聞いていないのは俺も同じか。
相手の質問に答えよう。
「いや、解けって言われても俺が作ったんじゃないと思うし。それに解けたらなんか危なそうな雰囲気なんですけど」
「む。貴様が張っているのでは無いだと?どう見ても貴様の魔法だろう」
どうやら俺が冷静になったので、相手も冷静になってきたようで、口調は落ち着いてきていた。
しかし頭は落ち着いて居ないようだ。魔法とか言ってる。
「いや、魔法ってあんた。そんな物存在するわけが・・・、ってそういえばあんたは何だ?CGか何かか?」
なんか嫌な予感がひしひしとするが、とりあえず一番ありえそうで、実際この状況では一番あり得なさそうな推測を訪ねてみた。
「CG?何を言っているか分からんが我は我なり。貴様の肉体を使ってこの世界に顕現するのだ」
なるほど、全く分からん。いや、わかりたくない。
「何を言ってるのか分かりたくないが、肉体を使うって俺はどうなるんだ」
「そんなもの知るか。魂となってどこかに行くのではないか?」
「そうか、断る。俺を元の場所に帰してくれ」
「この我の頼みを断るだと。貴様わかっているのか?」
「いや、突然こんな所に置かれて目の前にいる人知ってるわけ無いじゃん。ていうか人?」
「仕方ない、聞いて驚け。我こそは『%%%%』。この世界の神の1柱なり」
名前がノイズがかかったように聞き取れない。そして自分を神とか言っちゃう痛い人だった。
「え、神?流石にないわー」
「貴様死にたいらしいな。『#$%”&』」
何か唱えたら雷みたいなのが飛んできた。けど壁に当たって散らされた。
「この壁破れない神()。まぁこの壁何かわからないんだけど」
「貴様ぁぁ!!」
そろそろ俺の頭でも状況が理解出来てきた。というか今ので分からされた。
どうもここは俺の知っている世界ではないらしい。
「で、その自称神()は俺を召喚でここに呼んで肉体を奪って地上に行きたかったと」
「そうだ、だから体をよこせ」
「却下。で、その理由が天界()が暇だったからと」
「そうだ、だから体をよこせ」
「却下だって言ってるだろ。しかし肉体といっても合致するものがほとんど存在しないから、異界の俺を召喚したと」
「そうだ、だから体をよこせ」
だめだこの神()。話を聞いてると、どうも大層な理由も無いらしい。
「体はやらん。ところでこの壁なんなの?めっちゃ硬いみたいだけど。それとも神()の力が弱い?」
「この空間では我は神の力を使えるのだぞ!弱いはずがない!貴様の力だろ!」
「いやそんな力あったら俺地球最強だわ」
『それは、私の力ですよ。そこの駄目神』
どこかから声が聞こえてきた。と共に俺の横にすごい美人が突然現れた。
「最近私達の管理する世界から誘拐が多発しているので、結界を貼っていたら思ったよりも大物()が釣れましたね」
この美人にさえ貶される自称神。可哀想ではないな。
「貴様は誰だ!?」
「下級神に貴様呼ばわりされる筋合いはありません。彼の世界から助けに参りました」
どうやらこの美人さんは味方らしい。今の俺には女神のような方だ。
「女神のようではなく、女神ですよ。地球の」
どうやら心を読まれているようだ。あまり変なことは考えないでおこう。
「しかし困りましたね。世界の壁が閉じてしまってあなたの体ごと地球に戻すことは出来ないようです」
「え、じゃあ俺どうなんの?」
「魂として地球に戻って1から人生をやり直すか、この世界で生き続けるかですね・・・」
「地球に帰ったら赤ちゃんからかよ・・・」
「大丈夫です。その時は記憶もなくなるので恥ずかしがることもありません」
「それって俺にとっては死んでるのと一緒じゃん!?この世界に残る場合は?」
「すいません。その場合この世界は管轄外なので、物語のような所謂チートのような物を授けることは出来ません」
「あ、いや女神様が謝ることではないですよ。この自称神(笑)が悪いんです」
こんな美人に頭を下げられたら、心臓に悪い。
「しかし、神同士ではなんとかなるので、そこの下級神?との契約という形で何かは出来ます」
その自称神(?)は今女神様の力で簀巻き状態で蠢いている。
「その場合はどんなことが出来るの?」
「そうですね・・・、流石にこんなのでも神なので、あなたに完全に有利な契約は結べなさそうですね」
そういって何かウィンドウのような物を表示する女神様。
「例えば、もっとも両者にとって都合のいい契約はこんな感じですね」
そのウィンドウにはこう書いてあった。
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契約
①あなたは代償を払うたびに、神から何か神の如き能力を授かることが出来る。
②神は、あなたを害することは出来ない。
③神は、あなたにこの世界を案内しなければならない。
④神は、③を終えた後は①②を害さない限り自由となる。
代償・あなたは自身の存在のうち何かを、神に捧げる。
////////////////////////////////
「まず、①からですね。代償を払ってこの世界で便利なチートを得ることが出来ます。その中身は捧げるものに依存すると思いますよ」
どうやらこの自称神が肉体を欲しがっていたので、それを契約の縛りにしたらしい。
おれはチート、こいつは肉体の一部を得てwin-winな関係のようだ。
「次に②ですね。体をある程度手に入れたら、殺して能力を取り返すなんて事をされたら、契約の意味がありません。契約後一切の攻撃行為とあなたを裏切るような行動を取れません」
これはwin-winというより強者と弱者でも契約を結べるように考えられた項目らしい。
本来は契約内容についてのみだが、神と人の契約のため逆に強い縛りが付けられたらしい。
「最後に③④ですが、この下級神()が暇だと言っていたので、無償奉仕をさせてあげます。分からないことを聞いたら大概は教えてくれると思いますよ。
そして最後の項目④は契約の上では③に対する下級神に対する褒賞なのですが、実はあなたのためです。③を解除しないといつまで立ってもこの駄目神が付いて来ますからね」
どうやら有利には出来ないと言いつつも、かなり俺に有利な契約を結んでくれるらしい。
俺はその契約なら良いと思い、OKを出した。
「ではすいませんが、この駄目神が地上に顕現出来る程度の肉体を、代償に払って頂きたいです。そうしないと③が達成出来ないので契約が結べません」
「ふ~む。例えば腕を渡すと俺の腕はどうなるの?」
「その時は、腕に関連した異能が、仮の腕として入れ替わるでしょう。あれです、日本でいう『○の錬○術士』の『オ○トメ○ル』のような義手が現れると思います」
「なるほど、体の部位の場合は入れ替わって『神の腕』的なものになるのか。
じゃ、例えば肉体を伴わないもの、記憶とかなら?」
「記憶はあまりオススメしませんが・・・、その場合はそれが無くなって新しく何かしらの異能が付くと思います。記憶の場合はそうですね・・・、失った量に応じてこの世界の知識や、完全記憶能力のようなものを得ますね」
ふむ・・・、なるほど。これはあの夢が叶うかもしれない。というか叶えよう。
「じゃ、今から俺が考えた条件で契約お願い出来ますか。」
「どんな条件でしょうか」
「俺、男を捧げたいと思います」
「は?」
「いや、地球の知識では、体には男性ホルモンと女性ホルモンが存在してるらしいので。その内の男性ホルモン全部と、いい感じに男性的な特徴を渡すと俺女の子になれませんか。実は地球での夢だったんです」
何を隠そう。俺の夢は男をやめることだ。
別に男が好きなわけではない。女の子が好きなノーマルだ。
いや、女の子になって女の子を好きになりたいのはノーマルではないか。
とにかく女になって、女の子とイチャイチャしたいんだ。
「また、なかなかに濃い夢ですね。しかし出来なくはないですね。一応知ってると思いますが、男性ホルモンがなくなると男性的な性欲も無くなるので、男を好きになるか、ホルモンバランスが崩れて不能になるかもしれませんよ」
「それでもいい、俺は夢に生きるんだ」
「わかりました。なかなか潔い(?)志ですね。ではとりあえず最初の契約はこんな感じでしょうか」
そういって女神様は、またウィンドウを表示する。
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代償
男性ホルモン
男性的特徴
ヒゲ
すね毛
・
・
・
(しばらく続いている)
年齢15歳
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おう、大体言った通りだが年齢とは?
「年齢は年齢ですね。あなたは今28歳なので、見た目が13歳程度まで若返ります。逆に顕現するあの駄目神は15歳程の見た目になるはずです」
「なるほど、渡さなかったら28歳の女だったのか。それは婚期逃してそうだな」
それは大事だ、この代償でいいだろう。しかし得られる力が分からん。
「力については、今回はかなり不確定な要素を含むので・・・、やってみないと分からないですね」
「まぁ、ものは試しだ。やってみよう」
「えらく自分のことなのにアッサリしていますね。では今回は私が契約しますが、次回からは自分でしてもらうので覚えてください。まぁ、あの駄目神に言えば大体の事はやってくれますが」
そう言って、呪文のような何かを唱えた女神様。
俺の体と自称神()の体が光に包まれて、俺はすごい美少女に、あいつはほどほどの美青年になっていた。
俺の見た目は日本人の女の子を極限まで可愛くしたらこうなるのかな?、という感じの黒髪ロングの黒目の女の子だ。
そしてあいつは、金髪碧眼のハンサムである。くやしい。けど簀巻きのままだ。
「おや、ついた能力はなかなかのものですね」
女神がそういってウィンドウを見せてきた。
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男性ホルモン → 肉体をすごく強化
男性的特徴 → 見た目をすんごく強化
年齢 → 成長速度を少し遅める
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なるほど、分かりにくい表現だが体が力に溢れている気がする。
とても強化とは、かなりのものらしい。
「成長速度は実際に生きてみないと分からないものなのか?」
「そうですね、今の状態だと10年生きると8年分育つくらいでしょうか」
「まぁ、微妙な感じだな」
「それでは、これでいいですか?」
「待ってくれ、どうせならもっと見た目を弄りたい」
そして弄る内容を決めて、契約を自分でしてみた。
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代償 結果
髪と毛の色素(適量) → 銀髪・銀毛になった。
肌の色素 → 肌が白くなった。
右目 → 右目が碧眼になった。+能力
左目の色素 → 左目が光に強くなった。
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なにをしているんだとツッコミを食らいそうだが、これで俺は銀髪オッドアイ(赤碧)の美少女になったのだ。
もし相手がこの見た目なら間違いなく襲うレベルである。俺はロリコンじゃない、可愛い女の子が好きなんだ。
右目の能力はかなりすごい。
平常時は危険を視界に写してくれるだけだが、
全力稼働時は、視界の処理を目でやってくれ、様々な視覚的補助と、さらに思考速度を加速出来るらしい。
視界の処理を思考に回すらしいのだ。
どれだけの時間稼働出来るかは分からないが、とにかく便利ではある。
そして色素だが、本来光に弱くなるはずが逆に強くなった。それと少し温度変化にも強くなったらしい。
目の色素を抜くと、血液によって赤目になった。狙い通りである。
ついでに言っておくと、これによって自称神()の見た目に今の所変化はない。
どうやら自分で必要なものは選べるらしい。いらないものはストックしているのだ。
「それでは、これで契約第1回は終わりますね。今後は頑張ってこの世界を生きてください」
「はい、ここまで良くして頂いてありがとうございました」
「いえ、いいのです。あなた達はみな、私たちの子供のようなものなのですから」
そう言って女神様は消えていった。
なんていい人、もとい神様なんだろうと思い、明日からはあの神様に祈ろうと思った。
そして名前を聞くのを忘れていた。神様に名前ってあるのだろうか。
「さて、そこの自称神()。そろそろ起きて旅に出るぞ」
「ん~~!!」(猿轡)
「ああ、忘れてたわ」
俺は拘束を解いた。どうやら女神様の拘束はこいつ以外には簡単に解けたらしい。
「くそ!勝手に契約結びやがってあの神!」
「いや、勝手に召喚したおまいう」
「なんだt!?イタタタタ!?」
どうやら俺に害そうとするとすごく痛いらしい。
「それじゃ、ここから出ますか。案内よろしく」
「くそ、仕方ない。お前が死ぬまでは面倒見てやる」
そう言いながら、魔法か何かで転移をした。
見渡すかぎりの平原。その真中に立っていた。
「なんでこんなスタート地点なんだよ」
「そりゃ、人がいそうな所に突然転移なんてしてみろ。身分確認後、拘束だぞ」
「まぁ、そりゃそうか。けどなんでこんな平原?」
「あの部屋から地上世界に繋がる場所で、一番まともだったからだ」
「そうなのか、それじゃ金になりそうな物集めながら一番近い町に行くか」
そう言って、自称神に案内させる俺。いや、私。
ここから先、異世界転生ものに付き物のイベントが目白押しかもしれない。
そんな未来に期待をしながら冒険を始めよう。
物語の始まりはやっぱりこのセリフだろう。
「私達の冒険はまだまだこれからだ」
<設定>
そのまま本文の内容で大体の設定は網羅していると思う。
<今後の流れ>
テンプレ・チート冒険もので、女の子ハーレムでも作るんじゃないかな。(まだ何も決めてない)
体を代償にどんどん強くなっていく主人公。そして強くなると同時に神に近付いていき、自分という存在の疑問で悶々とする主人公。そんな感じ。
主人公・・・どこにでもいる男。28歳くらいが二人で年齢分けるのにちょうどいい。よって仮採用。
自称神・・・暇だったので地上に降りよう→体無いじゃん→うわ、この世界に俺に合う体無いじゃん→異世界でもこいつしか居ないじゃん→よし呼ぼう→本編
女神様・・・地球を支える神の1柱。名前は「$$$$」。結構上位の神様らしい。けど結構腰が低い。日本の担当だからだろうか。