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ダンジョン・マスター・アドバイザー(ファンタジー)

「これで、これでやっとあいつに一泡吹かせることが出来るぞ」


 玉座に腰掛けて、ブツブツとつぶやいている少女が居た。

 何を隠そう彼女がこのダンジョン「魔王の城」のダンジョンマスターである。

 銀色の長い髪と透き通るような青い大きな目が、暗い城の中妖しい雰囲気を醸し出している。


「魔王の城」はよくあるような不毛の地の、突き出た崖の先端に立つ巨大な城である。

 周りには生物の生存を拒絶するかの如く先の尖った岩が生えている。


「今度こそ貴様を倒すぞ。ダンよ」

 彼女はまるで勝ち誇るようにその男の名を呼ぶ。

 その時、ゴゴゴと地響きが起きる。「魔王の城」全体が大きく揺れている。


「今度はどんな方法で攻略してくるのじゃ?」

 先ほどの自信とは裏腹に不安そうな顔をする少女。

 揺れはどんどんと大きくなっていく。

 そしてそれが限界に達した時世界が「落下」した。


「えっ!?」

 少女は訳もわからぬまま、城と共に落ちていく。

 窓の外が見えると、そこには先程まで繋がっていた崖が見えた。


 そう、少女と城は地面ごと崖の下へと落下しているのだ。


「なんで!?」

 慌てるも地に足のついていない少女には為す術もなくそのまま落ちていった。

 そして城が潰れる音と共にファンファーレが聞こえてくる。


 ////////////////////////////////////////

「魔王の城」が攻略されました!

「ダンジョンシミュレータ」を終了します。

 ////////////////////////////////////////


 そして世界が光に包まれた。















「はい、今日の反省会を始めま~す」

 若い青年の声が白い部屋の中に響く。

 その男は、とある世界の「日本」という国の高校ならどこにでもいそうな中肉中背な姿形をしている。

 顔は悪くない、むしろ少し格好良いと感じる人も多いだろう。


「また顔も見る前に死んでしまったのじゃ!」

 そして白い部屋の中に響くもう1つの声。

 それは先ほど城と落ちた少女だった。


 現在この部屋にはこの二人しかおらず、それどころか机1つと椅子2つしか存在していない。

 窓どころか扉すら無い、白い四角い立方体にぽつんとそれらがあった。


「はいはい、アリアさん。なんであんな立地に城なんか建てたんですかねぇ」

 煽るように言う青年。


「それは・・・、だって城の下に地面があったら掘られるのじゃ!」

 それに対して吠えるように言うアリアと呼ばれた少女。


「けどあんな所に城立てたら、手前の崖崩されて今回みたいに終わるよ?」

「そんなことする奴はお前だけじゃ!」

「けど、それを現実でされたら死ぬんだぞ?」

「うぅ・・・」

「俺はアリアに死んでほしくない」


 そう言われて顔を赤くする少女。


「だって俺は・・・」









「アリアのアドバイザーだからな」

 キメ顔をする青年。

 そして落胆する少女。

 これはもう何度繰り返されたかわからない光景だった。









 彼女と彼の関係を説明しよう。


 彼女はアリアという、世界「ジアース」のダンジョン・マスターの一人である。

 その世界のダンジョン・マスターとは、世界を創ったと言われる神々からダンジョンを生成する力を預かりし者達である。

 彼らはその力でダンジョンを作り、愚か者共をそこに招き寄せる。

 そして始末することにより世界にマナを循環させているのである。

 しかしダンジョンは攻略されると、その還元されるマナの一部を攻略したものに奪われてしまう。

 一時期このせいで、世界のマナに偏りが出来て災害が多発してしまった。

 そこで神々が対策を施した。

 それが「ダンジョン・マスター・アドバイザー」である。


 異世界より「ダンジョンの攻略法」について詳しい人物を召喚することによりダンジョン・マスターへと助言をさせることにした。

 そこで白羽の矢が当たったのが青年である。


 彼は、かの有名な世界の「日本」という国で普通に生きていた青年だった。

 しかしある日ゲームを起動すると、突然世界が光って、気が付くとこの白い部屋に居たのである。


 そこで神と名乗る男と紆余曲折あり、結果青年は「ダン・ブレイク」という名と「ダンジョン・マスター・アドバイザー」というスキルを押し付けられ目の前の少女のアドバイザーとなったのである。


 それからの毎日は激動の日々とも言えるし、暇な日々だったとも言えるだろう。

 このアリアという少女はどうも、ダンジョン作成のずぶの素人だったのだ。

 毎日少女にダンジョンを作らせては、それの欠点を指摘(物理)する日々を送るのだった。








「それじゃ、今日は時間もまだあるしもう1度チャレンジしてみるか」

「今度こそ防衛しきってみせるのじゃ!」

「はいはい、せめて戦闘に入ることが出来るようになってから吠えてね~」

「うるさいのじゃ!」


「それじゃ始めるか、スキル『ダンジョンシミュレーター』」

 再び世界が光に包まれる。









 しばらくして光が薄れると、目の前にやはり城が現れた。

「なんで城にこだわるかねぇ」

 辺りはなんの変哲もない草原で城は少し小高くなった丘の上にあった。


「それじゃ、検査といきますか。スキル『ステータスメイカー』」

 ダンの視界にポップアップが生まれる。

 そこには、ダンの名前、職業、そして能力値とスキル欄が表示されていた。


「今回の城は流石に物理的に破壊出来ないかなぁ」

 そう言いながらダンは自身のステータスをいじっていく。


 ダンのスキル「ダンジョン・マスター・アドバイザー」の中には更にいくつかのスキルがある。

 その内の1つは「ダンジョンシミュレーター」、仮想世界を作り出しダンジョンを作成することが出来るスキルだ。

 毎回、アリアにダンジョンを作らせているのはこのスキルの世界である。

 このスキルはほぼ現実と同じ世界を局所的に創りあげるが、唯一つ「中で死んでも大丈夫」という違いがある。

 この世界が解除される条件はダンジョン・マスターかアドバイザーの死のみである。


 そしてもう1つがこの「ステータスメイカー」。

 これは「ダンジョンシミュレーター」の世界の中でのみ、自分のステータスを好きに決定することが出来るという能力である。

 調整によってはこの世界でのみ神を滅ぼす力をも得ることが出来るが、ダンは大体平均的な大人と同じだけの身体能力を設定した。

 但し、そのスキル欄が異常であった。

 各属性魔法から始まり、特殊魔法(転移、創造など)、罠作成、隠密など思いつく限りすべて入れたんじゃないかと思うほどのスキルで埋まっていたのである。


「さて、まずは耐久性のテストだ」

 どこからともなくダンの手にダイナマイトが現れる。

 それを城の壁に向かって投げつけると魔法で岩を作り、その影に隠れた。


 ドカンという爆音と煙が立ち込めるが、煙から出てきたのは無傷の城の壁だけである。

「ふむ、壁からの侵入は無理かな」

 ダンはそう呟きながら地面を魔法で掘り始める。


 しばらく掘って城の側へと横道を掘って行くとそこには固い壁があった。

「流石に地下だけは念入りに対策してるか」

 ダンは悪態をつきながら、しかし懐かしそうに笑っていた。








 それは、初めて「ダンジョンシミュレーター」でアリアと戦った時のことだ。

 アリアは今回と全く同じように平原に城を作成した。

 その時探知系のスキルを使ったダンは、アリアが城の1階にいるのに気付いたのだ。

 それからダンは城の地下を掘り、玉座の下まで密かに移動した。

 そこでダンは作った。かの有名な「硫酸の溜まった落とし穴」を。

 その上念入りに、人が落ちたら上から落石が転がるように細工をして、玉座に座っていたアリアを地面ごと落とし穴に落としたのだ。

 それからは、ただただアリアの悲鳴を死ぬまで聞くだけだった。

 むしろダンの方が苦しそうな顔をしたくらいだ。

 因みに、その事件から3日程はアリアは口を聞いてくれなかった。

 以来、アリアは地面からの攻撃だけは非常に警戒するのである。

 警戒しすぎて前回のように嵌められることも多々あったが。








 次にダンは城の周りを土の土手で囲っていった。

 それが1周囲い終わったら次に大量の水を中に流し込み始めた。

 しかし数時間流しても、浸水するどころか水たまりの1つも出来ない。

「水攻めも対策済みと」

 ダンは何でも無いようにつぶやく。



 それからやっとダンは城の門の前に立った。

「まぁダンジョン外からの攻略はこれぐらいにしておくか」

 他にも色々試すことはあったが、大体が以前に使ったことがある搦め手なので対策されているだろう。

 そう信頼出来る位には、ダンとアリアはこの戦いを続けているのである。

 そしてダンは扉を開いて中に入って行く。


 中は城の内装ではなく、よくある迷宮のような構造のダンジョンだった。

「なんで城にこだわるかねぇ」

 もう1度つぶやくダン。その手にはやはりダイナマイト。


「そーい」

 壁にホオリ投げて、再び作成した岩の裏へと隠れる。


 爆音とともに何かが崩れる音がした。

 煙が開けると穴が開いた壁から隣の通路が見えた。

「大減点だな。なんでこんな薄くて脆い壁を用意するかね」

 そしてダンはダイナマイトで壁を抜きながら、マナの気配が濃い方へとまっすぐ進んでいった。


 途中、ダンジョンのモンスターと接触しそうになったりしたが、その都度壁を作ったり、壁に穴を開けたりして回避したダンは大きな豪華な扉の前に辿り着いた。

「さて、モンスターの思考アルゴリズムも弱いから減点だがボスはどうだろうな」


 ダンは久しぶりの戦闘に少し緊張をしていた。

 なにせここ最近のダンは搦め手に力を入れており、基本ダンジョンの外から攻略するか中に入っても隠密行動からの毒殺などでボスを倒していた。

 しかし目の前の部屋はどうしても入る時に存在がバレるだろう。

 つまり戦闘は避けられないのである。

 緊張した手で扉を少し開けるダン。

 そこに居たのは・・・。











「よく来た勇者よ。ここまで来た褒美に私直々に戦ってやろう」









 ドヤ顔のアリアだった。




 ダンは無言でスタスタとアリアの元へと歩いて行く。

 その顔は、無表情を体現していた。


「え、なんでそんな顔で歩いてくるの?」

 その反応に急にオドオドし始めたアリアが尋ねてくる。

 それでも無言で近づくダン。

「えっ?えっ?」

 キョドるアリア。

 そしてダンはアリアの前に仁王立ちした。


 そしてダンはその重い口を開いた。











「ダンジョン・マスターが戦闘すんじゃねぇえええええええええええええ!」

 グーパンと共に。


 アリアの顔面に入ったパンチはアリアを吹き飛ばす。

 そしてファンファーレが鳴り響く。




 ////////////////////////////////////////

「魔王の城」が攻略されました!

「ダンジョンシミュレータ」を終了します。

 ////////////////////////////////////////







 白い部屋に戻ってきた二人。

 そして再び青年は言う。

「はい、今日2回目の反省会をしま~す。今度はお叱りも含みま~す」

 目の前にはイジケたアリア。

「だって魔王の役やってみたかったのじゃ」

 それを睨むダン。

「だってって、あのな~」

 そして呆れたように続ける。



「この世界のダンジョン・マスター、大人のグーパンで死ぬくらい貧弱なんだから無理だろ絶対」



 そう。この世界のダンジョン・マスターは非常に非力なのである。

 それはもう、ゴブリン相手にだって勝てそうにない位に。


 それには神曰く理由があるらしい。

 ダンジョン生成能力が大きすぎて魂のほとんどを専有し、他に力を割り振れないのだ。

 それでも長き時を過ごしたダンジョン・マスターには、その魂を高尚なものに成長させて力を得ているものもいる。

 そのような存在は人間たちに魔王と言われているらしい。

 実にテンプレ的な呼び方である。


 しかし、このアリアはまだひよっこもひよっこ。

 実は地上にダンジョンを作ったことも無いのである。

 研修中の新人なのである。


「何度でも言うぞ、俺はアリアには死んでほしくないんだ」

 その言葉は怒っているようにも聞こえる。

 しかし同時に優しさも篭っていた。


「ごめんね、ダン・・・」

 それが分かるのか素直に謝るアリア。


「まぁ分かってくれたなら良い。魔王なんてのは、もっと年取ってからなればいいんだよ」

 表情をやっといつもの穏やかなものに戻すダン。


「さて、じゃ今日は2回もダンジョン作ったご褒美に何か料理作るか。何食べたい?」

「私、ハンバーグ食べたい!!」

「キャラ作り崩れてるぞ、そこなエセのじゃロリ」

「うっ、そ・・・そうじゃな今日はハンバーグな気分なんだぞよ」

「言葉が変になってるぞアリア」

 笑いながらそれでも白い空間に材料を召喚していくダン。


 アリアは早く立派なダンジョン・マスターになりたい、まだまだ小さな子どもだ。

 しかしそんな危なっかしく背伸びするアリアを存外気に入っているダンである。








 ハンバーグを作りながらまた明日はどんな事を教えようかと、ダンは頬を緩めるのであった。




<設定概要>

ダンジョン・マスター ・・・ダンジョン作って人招いて倒す人たち。すごく貧弱。

アドバイザー     ・・・それに知識、技術を教える人達。基本的に異世界人。みんな「ダンジョン・マスター・アドバイザー」のスキル持ち

「ダンジョン・マスター・アドバイザー」

           ・・・なんかすごいスキル。本編の以外でもいくらか派生スキルがあるかも。無いかも。

世界「ジアース」   ・・・よくあるファンタジー世界なのかもしれない。

アリア        ・・・銀髪ロリ。至高である。エセのじゃ。大人ぶってるが驚いたりすると素の幼女になる。可愛い。

ダン・ブレイク    ・・・日本名は考えてない。実際書くときはもっと名前を考えて上げよう。日本的、ダンジョン攻略法(物理)を所得している。


<作るとしたらこんな流れ?>

本編のような練習期間

実践を目指した特訓期間

実践と勇者編的な

そして伝説へ


以上覚え書き終わり

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