飛んで火にいる夏の虫 その行く先に何を見る
予定通りに更新できず大変申し訳ありませんでした。みていてくれた方々ごめんなさい。話の区切り上、今回は短めです。それでは本編をお楽しみください!
その日は雲一つない快晴だった。
地上を照らしていた太陽が姿を隠し、夜空に輝く月が入れ替わりに鎮座した頃に俺は荷仕度を終えた。
友人と約束を交わした日から二日、その当日になっても我が家の居候でもある一匹の猫は姿を見せなかった
別に俺はさとりの事なんて心配していない
仮にもあいつは永い年月を生きてきた覚り妖怪なのだ。
そうそうトラブルになんか遭わないだろうし、何らかの理由であいつの正体を知る人間がいたとしてもわざわざ手を出すような真似はしないだろう
…まぁパッと見はただの猫だから捨て猫と間違われて連れていかれる可能性はあるかもしれんが。
そんな思索に耽っていたところで長いこと家の居間にいる歴戦の振り子時計がもう21時である事を知らせてきた
…そろそろ行くとしよう
鞄を手に、玄関へと向かい扉を開ける。
俺は駐輪場に停めてある愛車に跨がり、颯爽と夜の道を駆けていった────・・・
───午後22時10分 旧市街───
和弥「…おっ、来たか。」
浅倉「よぅ大将、久しぶりだな」
西澤「軽く遅刻だねー。罰として帰りにジュースでも奢んなさい」
梨本「………」
孝幸「悪い、ちょっと遅れたな」
左から和弥、A組の浅倉圭吾に西澤優花、その後ろで病院の方向を眺めているのがたしか…D組の梨本恵理だったか。
俺は浅倉と西澤ともそれなりに交友があり、今までも何度か一緒に遊びに出掛けた事がある(まぁ半ば強制的に連れ出されるのが)
…しかし気になるのは梨本だ
彼女は俺含め他の3人とも特に関わりがなく、聞いた話では特定の友人以外とは全く喋らないと聞いている
孝幸「…なあ和弥、梨本はなんでついてきたんだ?」ヒソヒソ
和弥「ん?さあな。俺が浅倉たちにこの話をした時にやけに食いついてきたくらいだし…実はものすごいオカルト好きとかそんなんじゃないか?」ヒソヒソ
西澤「そういえばたまーにおかしな事言ってるって噂らしいよ」ヒソヒソ
浅倉「あー、誰かが言ってたなそんなこと。確か…」ヒソヒソ
梨本「………まだ行かないの?」
『!!!!!!!!!!!!』
和弥「そ…そうだな、そろそろ行こうぜ、皆」
西澤「う、うん、待たせちゃってごめんね、梨本さん」
梨本「大丈夫」
浅倉「くそ…海パン履いてきてよかったぜ」
孝幸「…………」
さすがにビビった。さっきまで離れたところにいたのにいつの間に俺たちの背後にいるんもんだから思わず軽く飛び退いてしまった。
…いやそれよりも浅倉、なんだ海パンって。
漏らしたのか。
和弥「おい、孝幸!早くしねーと置いてくぞー。」
西澤「まあ、孝幸くんならもし一人になっても大丈夫だよ。…浅倉と違って」
梨本「…クスッ」
浅倉「おまえは一言多いんだよ!梨本も笑ってんじゃねえよ!」
———そんな会話を後ろから眺めながら相変わらず騒がしい友人たちについて目的の廃病院に向かって歩を進めていく。
出来れば何事もなく一夏の思い出として残る平均な体験で終わる事を願いながら………