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物語が動く……予定です。
そう言って去る背中に私は一礼してその手紙を見た。
いったい誰から、だろうか。
四年も前のことを知っているのは、事実を知っているのはたった1人だけ。
でも、その人は……。
私がここにいることを知らない。
普段なら捨てるかもしれない。
でも、ありえないことがおきるかもしれないと少し期待していた。
それは、どうしてだろうか。なんで柄にもなく期待なんてしているのだろうか。
そんなの、わからなかった。
ただ、何となくハサミを出して上をチョキチョキと切った。
そして中から紙を出した。
思わず目を見開いた。間違えのはずはない……。この字はー……。
取り出した白い紙には、忘れるわけのない懐かしい字が踊っていた……。
私は一度手紙を抱きしめるとその文面に目を落とした。未だに付けっぱなしのニュースや、なっている携帯を無視した。というよりも、気にするだけの心の余裕が私にはなかったのだ。
「ひかりへ」
その文字から柔らかい声まで聞こえてきそうだった。
その声が聞こえてくるんじゃないか、とあたりを見渡した。
聞こえるわけはないのに。それをわかっているのに。もう、四年前から聞いていない声……。
どうか、私のそばにいてください……。何も望まないから、そばに……。それは何度願っても、叶わない……。私は再び手紙に目を落とした。
「ひかりと兄弟になってから6年が過ぎた。僕はー……」
僕はひかりのいい兄だったろうか。正直あまり自信はない。
あの日、ひなたさんとひかりが家族になった日。ひかりは覚えているだろうか。
僕は覚えている。今まで、ずっと、あの日からのひかりとの思い出だけが僕の力だった。多分、これからも……。きっとそれは変わることなんてなくて、一生、僕の力になる。
初めてひかりが僕に笑いかけてくれた時に正直に話すと僕はひかりに見惚れたんだ。
ひなたさんはいいお母さんだったし、ひかりはいい妹だった。
もし、ひなたさんの事がなかったら……。そんなこと今更なはなしなのに、僕はどうしても考えてしまうんだ。もし、ひなたさんが生きていたら、親父はああならなかったのかも知れない。
そうだったら僕たちはまだ笑っていたのかもしれない。
まだ一緒にいれたのかもしれない。
一緒に年を重ねて一緒に思い出作って。
いっぱい喧嘩や仲直りして、もっと同じときを重ねられたのかもしれない。
それだけが悔しい。
どうして、と今も思う。
でも、これだけは言える。僕はひかりやひなたさんに会わなければ良かったとは思わない。思ったことは一度もない。
思い出すと、ひかりと会ってから僕の世界は変わったんだ……。
ひかり、ありがとう。
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