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好き勝手に言っているニュースを見ながら呆然とするしかないあたしのもとに手紙が届いた。
差し出し日も切手もない。差し出し人もわからない。どこにでもあるような見慣れたシンプルな茶色の封筒には何も書かれていなかった。
仮にポストに入っていてもあの状態のあたしが手紙に気付くはずがない。
その手紙があたしの手元に届いたのは隣の部屋の仲よくさせてもらっている若い夫婦が届けてくれたからだ。
一度は呼び鈴を無視したものの、何度も鳴る呼び鈴に私はやっと動いた。
その際に、膝の痛みをはっきりと自覚した。
ハーフパンツなんて、穿くんじゃなかった、と今更な後悔が押し寄せた。
その傷に気づかれないようにハーフパンツを腰ではくと玄関を開けた。
昨日の夜になるのだろうか。
夕方に近い時間帯にマンションの近くをウロウロしていた男がいた、らしい。薄暗くて顔は見えなかった、と言っていた。
その男が私に手紙を渡して欲しい、と頼んだそうだ。
最初は怪しいから断っていた。最近は物騒だし、もしかしたらストーカーじゃないかって……。
なのになんでここにあるんだろう、と首をかしげる。この話にはまだ続きがあるようで、私は黙って聞いていた。今は、一人でいるのがなんとなくこわかったからだ。
「渡せないな」
「お願いします」
その繰り返しだったらしい。でも。
「四年前から1人にしてしまった……。会いたいけど、会うわけにはいかない……」
そう言って頭を地面に着くんじゃないかってくらいに下げたらしく、さすがにとまどったらしい。
しまいには土下座をしようとしたらしく、やめてくれ! といってそれを阻止したようだ。
彼はあまりに必死に頼むから断れなかった、と語った。
それに、あたしが1人なのを知っていたから、と言った。あたしは1人だと思われないように男物の服を洗濯して干したりするから、ストーカーじゃないと思ったらしい。
「ごめんな、もしあれだ、気持ち悪かったら捨ててもいいと思うけど……」
眉を下げて笑うその人にあたしは意気消沈したままうっすらと笑みを浮かべた。
「ありがとうございます」
「元気、ないけど、どうした?」
お兄ちゃんのことなんて、言えるわけがなかった。だから、あたしは首を左右に振った。
なんでもないです、と口にしながら。
「ちょっと疲れているだけです。心配かけてすみません。ありがとうございます」
「なら、いいんだ」