表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
BRackHeart  作者: 慧波 芽実
3/7

3



好き勝手に言っているニュースを見ながら呆然とするしかないあたしのもとに手紙が届いた。


差し出し日も切手もない。差し出し人もわからない。どこにでもあるような見慣れたシンプルな茶色の封筒には何も書かれていなかった。



仮にポストに入っていてもあの状態のあたしが手紙に気付くはずがない。


その手紙があたしの手元に届いたのは隣の部屋の仲よくさせてもらっている若い夫婦が届けてくれたからだ。


一度は呼び鈴を無視したものの、何度も鳴る呼び鈴に私はやっと動いた。

その際に、膝の痛みをはっきりと自覚した。

ハーフパンツなんて、穿くんじゃなかった、と今更な後悔が押し寄せた。

その傷に気づかれないようにハーフパンツを腰ではくと玄関を開けた。






昨日の夜になるのだろうか。

夕方に近い時間帯にマンションの近くをウロウロしていた男がいた、らしい。薄暗くて顔は見えなかった、と言っていた。

その男が私に手紙を渡して欲しい、と頼んだそうだ。

最初は怪しいから断っていた。最近は物騒だし、もしかしたらストーカーじゃないかって……。



なのになんでここにあるんだろう、と首をかしげる。この話にはまだ続きがあるようで、私は黙って聞いていた。今は、一人でいるのがなんとなくこわかったからだ。



「渡せないな」

「お願いします」



その繰り返しだったらしい。でも。



「四年前から1人にしてしまった……。会いたいけど、会うわけにはいかない……」



そう言って頭を地面に着くんじゃないかってくらいに下げたらしく、さすがにとまどったらしい。

しまいには土下座をしようとしたらしく、やめてくれ! といってそれを阻止したようだ。


彼はあまりに必死に頼むから断れなかった、と語った。


それに、あたしが1人なのを知っていたから、と言った。あたしは1人だと思われないように男物の服を洗濯して干したりするから、ストーカーじゃないと思ったらしい。



「ごめんな、もしあれだ、気持ち悪かったら捨ててもいいと思うけど……」



眉を下げて笑うその人にあたしは意気消沈したままうっすらと笑みを浮かべた。



「ありがとうございます」

「元気、ないけど、どうした?」



お兄ちゃんのことなんて、言えるわけがなかった。だから、あたしは首を左右に振った。

なんでもないです、と口にしながら。



「ちょっと疲れているだけです。心配かけてすみません。ありがとうございます」

「なら、いいんだ」



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
cont_access.php?citi_cont_id=580126041&s
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ