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BRackHeart  作者: 慧波 芽実
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小説家になろう!様での初めての連載作品になります。よろしくお願いします。

 


朝、カレンダーに目を向けて、そうか、と溜息をついた。


寝ぼけていたであろう頭はさえわたった。


今日はお墓参りに行かなくちゃ……。

あとはケーキを買って、お祝いしよう。誕生日だねって。


今日の行動計画を軽く頭の中で考えながら鍋に水を入れてコンロに火をかけた。

マグカップに飲みなれたインスタントをスプーンで適量いれる。いつもなら自分の好みの濃さにするけれど今日は少し多めに入れた。自分の好みにする気分じゃない……。


少し強めのコーヒーの香りが私の周りを漂った。


鍋の中の水が沸騰した音が聞こえて、マグカップを持ったままコンロに近寄る。

ついでにトースターにパンを入れて、今日の朝食はこんなもんでしょう、とひとりうなずいてみた。

静かな室内でパンを食べ終わるとなんとなくむなしくなり、沈んだ気持ちになった。


何気なくテレビをつけてカチャカチャとチャンネルをまわす。

コーヒーを片手にリモコンを握った。


――何か面白いもの、ないかな。あたしがテレビをつけたのはそんな軽い気持ちだけだった。




「四年前……」

「今日の天気は……」

「父親……」

「続いての……」

「さが……」



え……。そんなまさか……。

思いあたりのあるワードが並び、血の毛が引いていく。苦いはずのコーヒーの味もよくわからなくなった。


こんなこと思っちゃいけないのだけども……自分の予想が当たっていませんように、と強く願いながら目を強く一度ギュッとつむった。




そしてビクビクしながら震える指先でひとつの局にあわせた。

「速報」と書かれた赤のプレートに目が行く。アナウンサーの無機質な声が耳に響いた。



「繰り返します。只今はいりましたニュースです。四年前、父親を殺害して指名手配されていた容疑者、相良恭一《さがらきょういち》氏が自首してきました」





一瞬、画面の向こうのその人の意志の強い目が映った。


ガシャン……。



持っていたお気に入りのコップが落ちて音をたてて割れた。

四年前に、初めて買ったコップだ。半分ほどのこっていたコーヒーがこぼれて床にひろがった。



嘘……。パシャパシャとフラッシュをたかれながら写真を撮られて顔を俯かせているその人の映る画面に夢を見ているような感覚で近寄った。


スリッパの上からコップの破片を踏んで更に割れる音がした。



「お兄ちゃん……」



画面に触れてつぶやいた。紛れもない、お兄ちゃんだった。どんなにかわっても、あたしがお兄ちゃんを見違えるはずが、ない。




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