ワンエピソード・完結
いきなり、脳が痒くなった……前頭葉の真ん中にある溝の辺りが、強烈に痒くなった。
「痒い! 頭の中が痒い! 掻きたい!」
頭皮ならいくらでも掻くことはできる、でも頭蓋骨の内側の痒みは……掻くことはできない。
「どうして、こんなに脳の溝が痒いんだ! 掻けないから、余計イライラするぅ!」
我慢できなくなったオレは、自暴自棄になって痒み止めの塗り薬を飲んだ。
口の中全体がスーとする、痺れるような感覚マズい。
「げぇ……気分が悪くなった……でも頭の中の痒みも少しは……ダメだ! ぜんぜん効かない! 側頭葉の溝まで痒くなってきた!」
オレは壁に何度も頭をぶつける。
「うぎゃあぁぁ! 掻きたい! 頭の中を掻きむしりたい!」
頭から血が流れたが、なかなか頭蓋骨は割れなかった。
(もっと、勢いよく強く頭をぶつけないと……高い場所から……あの場所しかない、痒い! 脳が痒い!)
オレは痒みから逃れるために、建物の非常階段踊り場に向かった。
幸いオレの部屋は二階以上の高所にある。
落下防止の柵を乗り越えたオレは、そのまま建物下のアスファルトに頭から落下した。
落ちる時は一瞬だったが、まるで夢でも見ているような時間感覚だった。
頭蓋骨がアスファルトに激突して割れて、血が吹き出す。
オレは最後の力をふり絞って、割れた頭蓋骨の中に指を押し込むと。
血溜まりになった脳の溝に指を入れて、掻きたかった痒みの部位を脳が壊れるくらい、思いっきり掻きむしった。
「あぁ……やっと掻けた、痛っ気持ちいい……あぁ……でも、側頭葉の溝には指が届かない……割り方を失敗した」
側頭葉の溝も掻きたかったオレは、頭蓋骨の隙間に指を押し込む。
(指が届かない……あぁぁ、脳が痒い)
頭からピユッピユッと吹き出す、血の噴水の中でオレは息絶えた。
『脳が痒い』~おわり~
同じネタで、胃袋の裏側が痒い……と、いうのも考えました。




