再結成 ― 真理の影を追って ―
生徒会室を出た三人の背中を見送りながら、
冬華はふと音楽室の方に目を向けた。
ガラス越しに見える真理の背中。
椅子に座ったまま、いつもより小さく、かすかに揺れて見える。
(……何か、いつもと違う)
眉の歪み。呼吸の乱れ。声の微かな震え。
――長年一緒にいた冬華の目には、確かにそれが“異変”として映った。
でも、決定的な理由はわからない。
それを口にした瞬間、彼女を傷つけてしまう気がして、言葉が喉で止まった。
(もし気づいたことを話したら……真理が壊れちゃうかも)
そんな思いを押し殺したそのとき。
「冬華」
振り返ると、廊下の奥に雷が立っていた。
その瞳は、静かだけど確かな光を宿している。
「……真理のこと、気になってるんだろ?」
冬華は小さくうなずいた。
「……うん。変なの。どうしていいかわからなくて」
「変、か」
雷は顎に手を当て、ライブのときの真理の姿を思い出す。
「話しかけても気づかない。
笑ってるけど、目の奥が遠い。
――あれは、“聞こえてない”ときの顔だ」
冬華の胸がぎゅっと痛む。
「でも……怖くて聞けないの。
聞いたら、真理が壊れちゃいそうで」
雷は目を細めて、優しく言う。
「わかってる。俺も同じ気持ちだ。
だから――もう一度、俺たちに任せてくれ」
その言葉に、冬華の胸の奥で何かが揺れた。
「……伴隆くん、お願いしてもいい?」
「もちろん」
「真理を……助けてあげて」
冬華の声は小さいけれど、真っ直ぐだった。
その瞬間、迷いは少しだけ溶けていく。
――そして、彼女もまた、戦う側に立つことを選んだ。
こうして、冬華を加えた4人の“調査班”が動き出す。
ライト落下事件を皮切りに、軽音部を包む連鎖の謎。
そして、真理の胸に潜む“もうひとつの秘密”。
すべては、この日の夕暮れから始まった――。




