音の消えた教室 ―呪いと再始動―
放課後の音楽室。
アンプの低い唸りが、沈黙を縫うように響いていた。
まだどこかぎこちない空気の中、部員たちの視線は前だけを向いている。
「翔太が戻ってくるまで、私たちが止まるわけにはいかない!」
部長・赤紙燃が、まっすぐ声を張った。
「デビューの話、絶対に掴む!」
真理は小さく頷く。
その瞳には、迷いも痛みも――それでも消えない光があった。
ピアノの前に座る律臣が、ぎこちなく笑う。
「真理……無理すんなよ? 俺、できるだけ支えるから」
「ありがとう、律臣くん。大丈夫、歌えるから」
微笑んだその唇は、震えていた。
胸の奥の綻びを、誰にも見せずに隠したまま。
――彼女の声は、再び音を取り戻すはずだった。
だが、その“音”が再び消える瞬間が、すぐそこまで迫っていた。
◆ 崩れたリズム ◆
練習の終盤。
サビに入った真理の歌声が、夕陽の光に包まれる。
まるで、その声が世界を照らしているようだった。
だが――
ガコンッ!!
金属が弾けるような音とともに、天井のライトが支柱ごと外れた。
火花が散り、床に影が落ちる。
「危ない!!」
律臣が叫び、真理を突き飛ばす。
ドンッ――!
重たい衝撃音。
律臣の肩が床に叩きつけられ、鈍い音が室内に響いた。
「律臣くんっ!!」
真理が駆け寄る。
音楽室の空気が一瞬にして凍りついた。
「保健室! 誰か!」
燃が叫ぶ。
ライトを退けた後に映ったのは、
不自然に折れ曲がった律臣の足。
真理の指先が震え、冷たくなっていく。
「……なんで……また……」
――翔太の倒れ、そして律臣の事故。
「軽音部には呪いがある」
そんな噂が、瞬く間に校内に広がっていった。
◆ 決意の三人 ◆
シャケが、静かに息を吸った。
「……これで決まりだな。‘呪い’の真相を暴く」
雷の瞳が、真っ直ぐに光を帯びる。
登夢もまた、無言のまま頷いた。
その瞬間――
三人の視線が交わる。
そこには、ただの部活動ではない“戦い”の覚悟が宿っていた。
――鳳学園軽音部事件、真相篇の幕が上がる。




