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断罪の日 ~咎~  作者: 葵 嵐雪
最終章 別れ
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最終章 その三

「お二人とも、今回は本当にありがとうございました」

 朝食を済ませた鈴音達が、まず向かった所は平坂神社だった。最初は水夏霞の家を訪ねたのだが、留守だったので境内まで上がってみると、そこには、いつものように箒を手にして掃除をしている水夏霞の姿があった。そんな水夏霞に挨拶を交わした鈴音達と水夏霞。そして、水夏霞はお礼を述べるのだった。

 そんな水夏霞に対して鈴音達は少し照れながらも話を続ける。

「別に、私達はそんな大した事はしてないよ」

「そうそう、だから、そんなに敬服しないでください」

 そんな言葉を口にする鈴音達。確かに鈴音達は玉虫を倒すという偉業を成し遂げたが、やっぱり面と向かえてお礼を言われると照れるものがあったようだ。そんな鈴音達に水夏霞は、少しだけ悲しそうな表情を浮かべると思った事を口にするのだった。

「でも、お二人のおかげで……両親の敵が討てました。そんな事に意味は無いのかもしれませんけど、私は玉虫の傀儡として自分の手で両親を殺しました。だからこそ、余計に玉虫を倒してくれた事を嬉しく思います。これでお父さんやお母さんが戻ってくるワケではないですけど、私は……私を許せると思います。両親を殺した自分を受け入れる事が出来ると思います。それは玉虫を憎むという感情が無くなったからかもしれません。だから、やっぱり、お二人にはお礼が尽きませんね」

 そんな事を言って来た水夏霞。そんな水夏霞に鈴音は少しだけ安心した表情を浮かべるのだった。確かに、ここで玉虫と戦った時の水夏霞は自分が両親を殺した事に嘆き、その原因となった玉虫を憎んでいたのかもしれない。

 でも、鈴音達が全ての物事に決着を付けたために、水夏霞も自分の心を整理する事が出来たのだろう。だからこそ、水夏霞は両親を殺した自分を許す事が出来た。全てに決着が付いた今、誰も憎まなくて良いと割り切る事が出来た。

 確かに水夏霞の心は晴れてはいないし、いつものように元気は無いだろうけど、水夏霞は少しずつでも、玉虫の傀儡として両親を殺した事を受け入れ、いつかは心に整理を付けて、元気を取り戻してくれる兆しを鈴音はしっかりと水夏霞の顔から見て取れたから安心できたのだ。

 そんな鈴音が微笑みを浮かべながら水夏霞に近づくと右手の小指を差し出してきた。

「今日、私達は村を発ちます。でも、必ず、また来ますから。その時には元気な水夏霞さんの姿を見せてください。いつもと同じ水夏霞さんの姿を見せてください。だから、これは、その約束です」

 そんな言葉を発した後に満面の笑みを浮かべる鈴音。そんな鈴音の笑顔に安心したかのように水夏霞も微笑むと右手の小指を鈴音の小指に絡ませる。それから、はっきりと鈴音達に告げるのだった。

「はいっ! まだ時間は必要かもしれませんけど。次に鈴音さん達に会う時には、以前のように元気な私で鈴音さん達を迎えたいと思います。だから、しっかりと約束しますね」

「うん」

 水夏霞の言葉に一言だけで済ます鈴音は分っていたのだろう。もう、言葉を交わしても意味はないと、これから意味を成してくるのは未来への希望だけである。その希望を水夏霞に持たせ、約束する事で水夏霞は少しずつでも立ち上がれる。そのための約束である。だからこそ、鈴音は余計な言葉は口にしなかった。

 そんな二人の絡めた指に手を乗せてくる沙希。やはり、ここまで鈴音と一緒に来たからには、沙希も、この約束に加わらないと納得が行かないのだろう。だからこそ、沙希も約束するかのように手を乗せると、三人の女性はお互いに笑みを浮かべ、笑い合うのだった。



「えっと、わざわざ済みません」

「なに、構わんさ。今では、この屋敷もボロボロだからな。それに使用人の多くも逝ってしまった。ならば儂が自ら案内するのが一番だろ」

 鈴音達が次に向かったのは羽入家だった。さすがに今回の件で一番被害が大きかった場所だけに、広大な屋敷はボロボロになっており、まともに使える部屋は、あまり残っていないようだった。それに屋敷には未だに血痕や銃弾の跡が少しは残っている。それだけで、羽入家の血筋に対して使用人達が抵抗したのが、良く分かるという物だ。

 そんな屋敷だ。正気を取り戻した羽入家の血筋達は自分達の行動が信じられないかのように部屋に閉じこもっているようだ。それでも、上手く逃げ出した使用人が戻って来ているのだろう。今では屋敷の復旧作業が行われている音が鈴音達の耳にも届いた。

 そんな羽入家に来た鈴音達を出迎えたのは、羽入家当主、羽入源三郎、その人だった。さすがに一週間では正気に戻った羽入家の血筋達も混乱や自分が犯した罪に対して錯乱しているのだろう。だから誰一人として部屋から出る者は居なかった。だからこそ、源三郎が自ら先頭に立ち、戻って来た使用人達に指示を出している。そんな源三郎に鈴音達が着たと伝わると、源三郎は自ら案内役をするために鈴音達を出迎えたのだ。

 そして源三郎の案内で、鈴音達は初めての部屋に案内された。その部屋は今までの部屋と違って広くは無いが、軽く二十畳はあるだろう。さすがは羽入家、これでも狭い部屋と言えるほどのようだ。そんな部屋に案内された鈴音と沙希。源三郎は自ら、二人に座布団を敷くと、二人は恐縮しながらも座布団に座る。更に源三郎は使用人にお茶を淹れさせるさせると、二人の目の前と源三郎の前にお茶が出され、やっと話が出来る状態になった。そして、開口一番は源三郎であった。

「さて、今回の一件、鈴音さんには随分とお世話になった。いや、鈴音さんのおかげで一件に決着を付ける事が出来た。まずは、その礼から言わせてもらう。村を救ってくれて、ありがとう。そして……すまなかった」

 座りながらも一歩下がり、二人に土下座する源三郎。そんな源三郎に対して鈴音は慌てて、頭を上げて欲しいと言い、沙希は源三郎がここまでするとは思わなかったので呆然としていた。そんな鈴音の言葉を聞いて、源三郎も座り直すと、改めて話を続けてきた。

「玉虫の事なら、羽入家の血筋は誰でも知っている事だった。なにしろ、こんな田舎だ。誰だって村を出たいと一度は思い、村を出る事を決行するだろう。だが、その度に羽入家の血筋は玉虫の呪いによって畏怖と恐怖を叩き込まれ、村に戻って来た。全ては……玉虫の兵になるために。儂もその一人だ。だが、誰一人として、その事に対して何かをしようとはしなかった。畏怖と恐怖に怯え、口を閉ざすだけだった。儂だって……そうだ。だが、誰かが玉虫の呪いに対して抵抗しようとしていたのなら、こんな事にはならなかっただろう、それは儂も同じだ。だから……すまなかった、今まで玉虫の呪いに対して何もしなかった事を詫びたい」

 そんな源三郎の言葉を聞いて鈴音は思った。

 やっぱり、そういうカラクリだったんだね。だから、七海ちゃんが羽入家を脱出した時にも、源三郎さんは七海ちゃんを探そうとはしなかった。全ては……羽入家の呪いが七海ちゃんを戻すと分っていたからか~。でも、しょうがないよね。私達だって、あの異変が無ければ、玉虫が完全に復活する事が無ければ、玉虫の存在に気付く事は出来なかったんだから。でも、そうなると……源三郎さんは村長さんから何かを聞いてたはずだよね。だからこそ、千坂さんは私に状況を打破する鍵を持っていると告げたんだよね、源三郎さんの伝言として。そうなると……やっぱり二人の間に何かあったのかな?

 そんな疑問を思い浮かべる鈴音。そんな鈴音に気付いたのだろう、源三郎は何でも聞きなさいとばかりに首を縦に振ると、鈴音は思った疑問を口にする。

「えっと、源三郎さんは村長さんから聞いて全てを知ってたんじゃないですか? だからこそ、千坂さんを私の元へ向かわせて、その千坂さんに伝言を託した。全ての鍵は……私が持っていると、そうですよね?」

 そんな問い掛けをしてみる鈴音。そんな鈴音の質問に対して、源三郎は思いっきり溜息を付くと、傍にあった肘置きを取り寄せると肘を置く。それから鈴音の質問に答えてきた。

「あぁ、その通りだ。平坂神社の神主は既に死んでいた、その時は緒方も儂に相談するしかなかったのだろう。いや、緒方は最初から七海が絡んでいた事を知っていた。だからこそ、緒方は儂に全てを話したのだが……儂は緒方の言葉に耳を傾けなかった。いや、正確には緒方の言葉は的を射ており、それは儂の中にある玉虫に対する恐怖を呼び起こすものだったからだ。だから、儂は緒方の話を聞いても信じなかった。だが、心のどこかでは玉虫に抵抗したいという気持ちもあったのだろう。だからこそ、儂は鈴音さんに協力する事を決めたんだ」

「って! 最初っから私達を巻き込むつもりだったのっ!」

 源三郎の言葉に驚きながらも抗議の声を上げる沙希。それはそうだろう、源三郎の言い方では全てを知っておきながら、それを鈴音に押し付けているように聞こえても仕方ない。むしろ、沙希には、そう聞こえたのだろう。だからこそ、抗議の声を上げたのだ。

 そんな沙希の言葉を聞いて、源三郎は沙希の瞳を数秒だけ見詰めると頭を垂れた。

「その通りだ、すまなかった」

「って!」

「沙希」

 まだ抗議の声を上げようとした沙希を制する鈴音。どうやら鈴音には分っているようだ。ここで源三郎に抗議の声を上げても仕方ないという事が。なにしろ……全ては鈴音達の手で決着が付いたからだ。だからこそ、源三郎は今になって謝罪するのだろう。玉虫の存在があるからには下手な事が出来ないからだ。だからこそ、静音を探す協力という名を口実に鈴音達を、今回の一件に巻き込み。そして鈴音に全てを託したのだ。

 それが分っているからこそ、鈴音は沙希の言葉を制する事で黙らせたのだ。そんな鈴音が微笑みながら源三郎に質問する。

「私達が、この来界村に来る切っ掛けは一本の電話でした。相手は何も名乗らず、姉さんの事を知りたければ来界村に来いという無いようでした。あの電話は……源三郎さんだったんですね」

 そう、鈴音達が来界村に向かおうとした切っ掛け。それは静音の失踪に不満を感じただけではない。その電話があったからこそ、鈴音は来界村に向かう決意をし、そんな鈴音の行動を聞いた沙希が急遽、すぐに身支度を整えて鈴音に家に向かったのだ。そして、二人は、この来界村に来る事になった。

 沙希としては電話の事は聞いていたが、鈴音は前々から少しずつ、電話をしてきたのが源三郎だと気付いていたようだ。だから鈴音達が来界村に来る切っ掛けを作った人物、それが源三郎だという事を。だからこそ、そんな問い掛けをしたのだ。そんな鈴音の問い掛けに源三郎は簡単に答える。

「あぁ、その通りだ」

 そっか、なら……全ての辻褄が合うね。そんな事を考えた鈴音が源三郎との会話を続ける。

「なら、私達に全面的に協力すると言ったのも、保険なんですか? 村長さんの言葉は信じられないものの、心の片隅では、その事を念頭において、もしもの時に動かせる駒が必要だった。姉さんなら適役かもしれませんけど、既に姉さんは失踪とされていた。だからこそ、姉さんに代わって私を呼び寄せた。村長さんが言っていた……もしも……が起こった時の為に」

「いや、儂とて、そこまで考えた行動では無い。緒方が言って来た事が静音さんの失踪に関係あると睨んだこそ、鈴音さんを呼び寄せた。だが、全ては静音さんを探し出すため、それには変わりない。だが、全面的に協力すると言った半分の理由は、その通りだ。緒方が言っていた玉虫の復活。それが起こった時に、全てを託せる人が必要だった。そこで、万が一を考えて鈴音さんに白羽の矢を立てたんだ。あの静音さんの器量を受け継いでいるのなら、鈴音さんにも充分に村の未来を託せる人物かどうかを見極めるために、鈴音さんには来界村に来てもらう必要があったからだ」

「つまり、村長さんが言っていた、もしも、が起こった時に、村の未来を託せる人物か、どうかを見たかったわけですね。そして、私が姉さんと同じ器量を持っていたなら、もしも、が起こっても対処できる。そう考えたんですね」

「その通りだ。そして……その、もしも、が起こってしまった。だが、七海が絡んでいるとは思いも寄らなかった。だから鈴音さん達には村の事だけではなく、七海まで救ってもらったお礼を言わなければいけないと思っていた。だが、今の羽入家は壊滅状態、今回の事態もどうするか、ある方面と話し合わなければいけなかったからな。今日は、こうして尋ねてきてくれてたすかったよ。だから、改めて礼を言おう、村の事、七海の事、ありがとう、そして、すまなかった」

 そんな事を言って深々と頭を下げる源三郎。そんな源三郎を鈴音は黙って見詰めた。鈴音には分っていたのだろう。一度、土下座したからには、今度は長くは頭を下げないと。そして鈴音が思ったとおりに、源三郎は数秒後には頭を上げて、再び鈴音達と向かい合った。そんな源三郎に向かって、鈴音は先程出てきた事について尋ねる。

「七海ちゃんが玉虫に協力している事までは知らなかったんですか?」

「いや、知っていた。だが、信じなかった。緒方はしっかりと七海が玉虫の協力者だと言ったのだが、儂はその言葉を信じなかった。いや、信じたくはなかったのだろう。七海がそんな事をするはずがないと、そんな想いがあったからかもしれん」

 そんな源三郎の言葉を聞いて、鈴音は改めて源三郎が際どい立場に立っていた事を悟った。

 村長の言葉には確信に近い物があった。だが、源三郎は、それを認めるワケにはいかなかったのだ。もし、その事が露見すれば羽入家の血筋、つまり、一緒に暮らしている親戚達にも伝わってしまう。そうなれば、玉虫の呪い、その記憶を蘇らせるだけで、羽入家の血筋達は再び恐怖を味わう事になるだろう。それは源三郎さえ同じだ。

 源三郎も一度は玉虫の呪いによって、玉虫の畏怖と恐怖を知っている。そして、その恐ろしさ故に、誰もが口を閉ざし、玉虫の呪いは羽入家の血筋にとっては決して口にしてはいけない、暗黙のルールとなってしまったのだ。そのルールを破れば、羽入家の血筋達は再び恐怖し、羽入家の機能が失われる事になる。つまり、平坂神社に続いて、羽入家も潰れる事になってしまう。そうなれば、村は更なる混沌が訪れる事になるだろう。ただでさえ、首狩り殺人が横行している中でだ。

 だが、その首狩り殺人こそ、玉虫が元凶であり、七海が協力している。そんな話を村長からされた源三郎は迷いはあったものの、その話を真に受ける事は出来なかった。ただでさえ、非現実的なのに、羽入家には玉虫の呪いがあった。だからこそ、源三郎は口を閉ざしながらも、賭けに出るしかなかったのだ。その賭け駒こそが鈴音達だった。だからこそ、源三郎は鈴音達に全面的に協力すると言ったのだ。静音の失踪を理由にして、裏では、もしも、に備えてだ。

 だからこそ、源三郎は異変が起きるのと同時に千坂を鈴音の元へ向かわせたのだ。鈴音なら、もしも、の元凶を暴き、村の異変と羽入家を救ってくれると信じたからだ。だからこそ、源三郎は鈴音には全ての鍵が揃っていう伝言を千坂に託したのだ。それでも、源三郎にとっては七海の行為は驚き以外の何ものでもなかったようだ。

 まさか、七海があそこまで羽入家を憎んでいるとは源三郎も知らなかった事だ。たぶん、七海なら、そのうち玉虫の呪いを受け入れ、自分と同じく羽入家の後を継いでくれると信じていたからだろう。だが、村長の言葉が真実であり、千坂からも七海に関する事が口にされても、源三郎は驚かないどころか、七海の思いを全て見破ったのだ。その結果として……千坂を死なせる事になってしまったが、源三郎は後悔はしていないだろう。全ては千坂の意思であり、七海を助けるために唯一の出来る事だったのだから。

 結果としては千坂の死を利用して、鈴音が七海を助ける事になったが、やっぱり、源三郎にもやりきれない気持ちがあったのだろう。鈴音と源三郎は大きく息を吐くと、鈴音は源三郎に尋ねた。

「それで……七海ちゃんはどうしてます?」

 やっぱり鈴音としては七海の事が気がかりだったのだろう。だからこそ、その事を尋ねた。そして尋ねられた源三郎は鈴音に向かって口元に笑みを浮かべると、はっきりと口にする。

「今は他の連中と一緒に部屋に閉じこもっている。だが、七海の事だ。鈴音さんが助けた七海だからこそ、時間は掛かるだろうが、きっと立ち上がってくるだろう。だから、その事に関しては儂は心配しておらん。七海は……そこまで弱くは無い、きっと、自分の足で立ち上がってくるだろう」

「そう……ですか」

 源三郎には、何かしらの確信があるかのように言うが、鈴音には、そこまで七海について心配が無いとは思えなかった。

 鈴音は確かに七海を倒し、七海に罪を認めさせる事で七海を救ったと言っても良いだろう。けど、そんな七海の下には千坂を含めた沢山の殺してきた人達が居る。七海はそんな人達に縛り付けられながら、これから生きて行かないといけない。だから鈴音が心配するのは当たり前、というか、鈴音に言わせれば心配するなという方が無理だろう。

 だが、源三郎がここまで宣言したのだから、その通りかもしれないと、心の半分は、そうだと思っている鈴音だった。だからこそ、辛気臭い話を終えるために、鈴音はお茶を半分ほどすすると話題を切り替えてきた。

「源三郎さん、今日伺ったのは、私達が今日中に村を発つからです」

「そうか、迷惑ばかり掛けてすまなかった。儂には何も出来んが、どうか、七海を、そして羽入家を許してやってくれ」

「私は七海ちゃんも羽入家の人達も恨んでませんよ。それに、私は源三郎さんに、お願いしにきたんですから」

「儂にか? そうか、村を救ってくれた鈴音さんの頼みだ、断る事は出来んな、儂に出来る事なら何でもしよう。それが儂なりのお礼だ」

「ありがとうございます」

 まだ、内容も言っていないのにお礼を先に述べる鈴音。そんな鈴音がこんな事を言い出してきた。

「慰霊碑を……建てて欲しいんです。今回の事件で死んで行った人達、遥か昔に玉虫に殺された人達。そして……姉さんの遺体が無いからには姉さんをお墓に入れる事も出来ない。だから、せめて、お墓代わりに慰霊碑を建てて欲しいんです。出来る事なら平坂洞を塞ぐように」

「黄泉比良坂を塞いだ大石のようにか?」

「なんで、その事を?」

 源三郎の言葉に驚きを示す鈴音。平坂洞の坂は黄泉比良坂に見立てて、あそこは平坂洞という名前が付けられた。それは鈴音達も死んだ静音から、最後に聞いた事だ。それが源三郎まで知っているという事に驚く鈴音だった。そんな鈴音を見て、源三郎は笑いながら経緯を話す。

「かっかっかっ、簡単な事だよ。静音さんは村の歴史について調べておったからな。儂も興味本位で、少しだけ付き合っただけだよ。だが、そういう事なら喜んで引き受けよう。静音さんだけでなく、玉虫の犠牲となった者の全てが安らかに眠れるように、平坂洞の前に慰霊碑を建てさせてもらおう」

「そういう事でしたか。それでは、慰霊碑の事はお任せしますね。これで……私も姉さんを弔ってあげられます」

 少しだけ寂しそうな表情を浮かべて、そんな言葉を口にする鈴音。

 それからは源三郎と少しばかり雑談をすると、今日はあまり時間が無いので、羽入家を出ようと部屋から出ようとすると、源三郎は案内しようとしたが、鈴音はそれを断った。その代わりに、沙希が部屋から出ると鈴音も出て、部屋の障子を閉める前に顔だけを出してくると源三郎に尋ねた。

「源三郎さん、もしかして……姉さんに惚れたんじゃないんですか?」

 そんな鈴音の問い掛けに源三郎は大きく笑ってから答えてきた。

「かっかっかっ! あと五十も若ければ、桐生の小僧なんかに取られなかったのにな」

「あははっ、やっぱり~、それじゃあ、後の事はよろしくお願いしますね」

「うむ、静音さんは丁重に弔ってもらうとしよう。だから鈴音さん、また村に来なさい」

「はい、姉さんの命日やお盆には村にきさせてもらいますね」

「あぁ、いつでも歓迎するぞ。もっとも、儂が生きていればだがな」

 そして源三郎は再び大きな声で笑い出し、鈴音は満面の笑みで源三郎の顔を見ると、すぐに引っ込んで廊下に出ると、待っていた沙希に合流して羽入家を後にするのだった。



「さてと、これで全部かな?」

「うん、姉さんの分もあるから、結構な大荷物になっちゃったね」

「まあ、それは仕方ないでしょ。いつまでも、ここに置いていくワケにはいかないでしょ」

「う~、分ってるよ。だから少し持ってよ~」

「はいはい」

 とばかりに鈴音達は村を出る準備を終えると、自分達の荷物のほかに静音の荷物も一緒になって桐生家の玄関へと向かうのだった。そして、再び靴を履くと振り返って、ここでお別れにする事にした琴菜と向き合う。

「それでは、姉さん共々、お世話になりました」

「また、村に来る事もありますから、その時は、また、よろしくお願いしますね」

「えぇ、いつでも歓迎しますよ」

 そんな別れの挨拶をする鈴音達と琴菜。そこには美咲の姿はなかった。鈴音も琴菜も無理に美咲と別れを告げる必要が無いと考えたのだろう。だからこそ、二人の見送りはここまで済ませる事にしたのだ。それに……静音の慰霊碑が村にある限りは、鈴音には静音の為にここに来る必要がある。だからこそ、三人は笑って別れを告げるのだった。また会える事が分っているから。

 だから鈴音も美咲にははっきりと別れを告げなかった。ただ、部屋の外から、別れの挨拶を一方的にしただけだ、だから美咲とは正式に別れの挨拶を告げてないのと同じだった。けれども鈴音は心配していないようだ。鈴音達にはしっかりと分っていたからだ、また会える事を。また会えれば、今度は沢山の話が出来る事を。だから今は、そっとしておこうと鈴音は美咲には直接会わずに言葉だけで済ませたのだ。

 そんな鈴音が笑みを浮かべながら琴菜に告げる。

「じゃあ、行きますね。次に来るのはお盆になるかもしれませんけど、来る時には電話を入れますね」

「はい、待ってますよ……美咲と一緒に」

「さて、鈴音。名残惜しいけど、そろそろ行きますか」

「うん、そうだね」

「鈴音さん、沙希さん、お気をつけて、そして……ありがとうございました」

 そんな言葉を聞いて、鈴音は軽く手を上げて別れを告げると、先に出た沙希の後を追うのだった。

 そして鈴音達は、一番最初に村に来た道からバス停を目指して、歩いて行く。最初はへばっていた鈴音も、今ではすっかり山道に慣れたのだろう。大荷物を持ちながらも、弱音を吐く事無く歩き続ける。そして……二人はバス停へと到着した。

「もうそろそろバスが来るみたいね」

「うん、時間ぴったし」

 先にバスの発車時間を確認していたのだろう。二人がバス停に到着した頃には、数分後にバスが到着する予定になっていた。それから鈴音は大荷物を、バス停のベンチに下ろすと、村の方へ向かって歩き出し、沙希も鈴音の横に並んで、バス停がある高台から村を見渡す。

「なんか……いろいろとあり過ぎて、未だに夢だったじゃないかと思うぐらいだわ」

「確かにね~。でも、姉さんの死は確かなものだし、姉さんと最後の別れをしたのも現実、私はそう思っていたい。あれまで夢だと思うのは……悲しすぎるよ」

「……そうね、私達は最後の最後で静音さんと別れる事が出来た。それだけでも上々でしょ」

「そうだね……」

 村を見渡しながら、そんな話をしているとバスが到着して、まず出口が開くと、バスに乗ってきた人が全て降りる。もっとも、数人しか乗っていないので、すぐに出口がしまり、入口が開いた。

 それから鈴音達は再び大荷物をバスの中に運び込むと、鈴音は窓を大きく上げて、初夏の風を取り入れる。バスの中に入った事でやっと一安心出来たのだろう。隣では沙希がぐったりとしていた。そしてバスの入口が閉まると、その場でUターンして、先程来た道に向かって、ゆっくりと走り出した、その時だった。突如として鈴音が叫ぶ。

「美咲ちゃんっ!」

 思いも寄らなかった言葉に沙希も慌てて身を起こすと、鈴音の後ろから外の確認すると、そこには確かに美咲の姿があった。そんな美咲が走り出したバスから顔を出している鈴音に向かって叫ぶ。

「鈴音お姉ちゃんっ! 鈴音お姉ちゃんっ! 鈴音お姉ちゃんっ!」

 今にも泣きそうな顔でバスを必死に追い掛けながら美咲が叫ぶ、そんな美咲に向かって鈴音も満面の笑みを浮かべながら叫ぶ。

「大丈夫だよっ! また来るから、その時にじっくりと話そうよっ!」

「うんっ! 分かったっ! 約束だよっ!」

「うんっ! 約束っ!」

 そんな言葉を最後に美咲が思いっきり転ぶ。バスを見て、思いっきり走っていただけに、足元には、まったく気にしなかったようだ。そんな美咲が転びながらも頭を上げてバスを見送ると、そこには満面の笑みで手を振る鈴音の姿あり、そんな鈴音の姿を見た美咲も涙を拭う事無く、笑みを浮かべるのだった。

 そして美咲の姿が見えなくなると席に戻った鈴音に沙希が尋ねる。

「これで……良かったのかな?」

「さあ?」

「さあってね」

 あまりにもあっさりとした言葉に沙希は呆れた顔をするが、鈴音は微笑みながら、はっきりと沙希に告げた。

「今、美咲ちゃんが抱えている問題は誰かに教えてもらうものじゃない。自分で答えを出さないといけないものなんだよ。でも……大丈夫。美咲ちゃんなら……絶対に自分に合った答えが出せると信じてるから」

「……そうね」

 今度は沙希があっさりと答えた。沙希にも鈴音が言いたい事が充分に分かったからだろう。だからこそ、これ以上の言葉は必要が無かった。

 そう、これは美咲の問題であり、美咲がこれからの人生で見つけださないといけない物なのだから。それでも、美咲は向かい合った。自分自身の罪と、だからこそ美咲は自分を責めて、未だに道は開けてはいない。けれども、美咲はまだ幼い。だからこそ、これからの人生で得る物は多いだろう。その中から、美咲がきっと答えが出せると鈴音と沙希は信じているからだ。



「う~ん、さすがに、今度は時間が掛かるみたいね」

「いいよ~、今は日陰でゆっくりしてようよ。まだ電車が来るまで、かなり時間があるんでしょ?」

「まあ、それもそうね。けど、先に切符だけは買っておくから、鈴音はその辺で休んでて」

「は~い」

 と返事をしたものの、一人分だけでも大荷物なのに、二人分の荷物を抱えて日陰のベンチに移動するまでは重労働だ。それでも、なんとか一回で運んだ鈴音がベンチに座り込むと、そのままぐったりと頭を後ろに垂らしていると、鈴音を呼びかける声が聞こえてきた。

「いやはや、鈴音さん、お待ちしてましたよ」

 そんな声に鈴音が頭を戻すと、鈴音の目には吉田の姿が映った。

「って、吉田さん、どうしたんですか?」

「いえいえ、今日、お二人が帰ると聞きましてね。その見送りですよ。おや、沙希さん、こんにちは」

「こんにちは、って、吉田さんまで見送りですか?」

 先程の会話が少しだけ聞こえていたのだろう。切符を仕舞い込んだ沙希が、そんな事を言い出し、沙希が鈴音の隣に座ると、吉田にも、どうぞ、とばかりにスペースを空けるのだった。だから吉田も遠慮無く、ベンチに座って鈴音と沙希の方へと顔を向けて話し始めた。

「それに、お二人とも事後処理が気になってると思いましてね。それについても話しておこうと思って、駅前で待ってたわけですよ」

「事後処理……ですか」

 いまいちピンと来ていないのだろう、鈴音はオウム返し言葉を返すが、そんな鈴音とは正反対に沙希は是非聞かせて欲しいと瞳で訴える。そんな二人を見ながら吉田は話を続ける。

「さすがに報告書に悪霊とか呪いとか書けませんからね。そんな事を書いたら、私が精神科に入院させられますよ。ですが、実際に人が死んでいるのは事実です。そこで、羽入家から何人かの逮捕者を出す事が決定しました」

「って! なんで羽入家から?」

 吉田の言葉を聞いて、やっと事態を理解した鈴音が抗議の声を上げるが、吉田は、そんな鈴音を落ち着かせながら話を進める。

「まあ、警察内部で今回の事件を全て知っているのは、私と金井君だけでしょうね。他の人は知らないが、多数の死者が出たのは確かです。そこで羽入家と平坂署の上層部が話し合って、羽入家の内部抗争という形で事態を終わりにしよう、という事になったんです。まあ、実際に被害が大きかったのは羽入家ですからね。源三郎さんも、時期を見て逮捕される予定になってます。まあ、源三郎さんは責任者としての逮捕ですから、充分に情状酌量の余地がありますから実刑判決にならずに、執行猶予中に罰金を払って終わりって形になるでしょうね」

 ……えっと、どういう事? やはり、この手の話になると鈴音の頭では追い付いていけないのだろう、鈴音は首を傾げるばかりだ。そんな鈴音の代わりに沙希が口を開く。

「つまり、今回の事件は羽入家の内部抗争が発端で、それが村中に広まって、多数の死者を出した。だから、羽入家から数名の実刑者を出す事で、今回の事件を終わりにしよう。そういう事ですか?」

「まあ、そういう事ですね。悪霊やら怨念やら、そんな言葉が出てこないだけに、充分に説得力がありますし、羽入家の規模から、内部抗争が起こってもおかしくは無い。そう考えても不思議ではないでしょう。誰も……悪霊や呪いの仕業と言われるよりかは、虚実でも現実味があるだけに後腐れなく、処理が出来るというものです。もちろん、鈴音さん達の名前は表に出せませんから、そこは安心して良いですよ」

「まあ、私達が悪霊と戦って勝ったから、村に平和が戻ったと言っても、誰も信じないでしょうかね。だから、広めるのは虚実で、真実を知るのは少数で良いという事ですね」

「その通りですね」

 そんな言葉で会話をまとめる吉田と沙希。さすがに二人とも、今回の事で真実を公に出来ない事は充分に承知していた。確かに玉虫は存在していたかもしれないけど、今となっては証明のしようが無いし、証明する意味が無い。だったら、最もらしい理由付けて、事件を終わりにする事が吉田の役目だと、吉田自身もそう考えてたし、沙希も吉田なら、そうしてくれると思っていたようだ。

 まあ、それだけ今回の事は現実から、かけ離れてて、現実的な理由が無いと事件の処理が出来ないのだろう。だからこそ、源三郎は、そんな提案を出して平坂署の上層部も、それで納得したのだろう。いや、むしろ源三郎の事だから自ら、そんな話をする事で真実を隠して平坂署の上層部も源三郎の言葉に納得したのかもしれない。

 それなら、なんともまあ、不甲斐無い、上層部だとも思えるが、田舎の一警察署が出来る事と言えば、この程度だろう。まあ、悪霊やら怨念やら、そんな言葉が出てこないだけでも充分だろうと吉田と沙希は考える事にしたようだ。

 ここで大事なのは真実を見つけ出す事じゃない。いかに現実味がある話で虚実を作り上げる事だ。誰だってそうだろう、悪霊が殺人を犯したというよりは、人が人を殺したという話の方を信じるのは。だからこそ、羽入家の提案を上層部は真に受けたのかもしれない。そこまでして、今回の真実を知る必要は無いのだ。なにしろ……全ては夢だと思えるほどの非現実的な事が起こったのだから。

 それから、吉田とも少し雑談をすると、沙希が電車の時間を告げ来た。どうやら、そろそろ電車が到着するみたいだ。そのため、鈴音達は再び大荷物持って歩き出す。さすがに大変そうだと思ったのだろう。吉田も駅のホームまで荷物運びを手伝ってくれた。

 そして電車が到着すると、鈴音達は乗り込み、窓から顔を出して、ここまで見送ってくれた吉田に別れを告げる。

「それじゃあ、吉田さん、いろいろとありがとうございました」

「いえいえ、礼を言うのは私の方ですよ。鈴音さん達の活躍で今回の事件は終わったんですから。最も、今回の事件が表沙汰になったとしても、それは虚実なので、鈴音さん達の活躍を広める事は出来ませんから」

「あははっ、そんな事しなくて良いですよ」

 そんな話をしているとホームから電車の発車する合図が聞こえてくる。その合図を聞いて吉田は一歩下がると、鈴音達に敬礼して、真顔で言うのだった。

「それでは、今回のご協力、ありがとうございました。お二人とも、お気を付けてお帰りください」

「はい、分かりました~」

「吉田さん、ありがとうございました」

 鈴音も吉田の真似をして敬礼で返すが、沙希は微笑みながらお礼を言うだけだった。その間にも電車のドアが閉まりゆっくりとホームから離れて行く。そして二人は吉田の姿が見えなくなるまで手を振る鈴音だった。



「……鈴音」

 電車が発車してから幾つかの駅をすぎると、沙希は頭を垂れながら鈴音に話しかけた。そんな沙希を見詰める鈴音。席は向かい合いの席なので、目の前にいる沙希が良く分かる。そんな沙希が申し訳なさそうにいうのだった。

「……ごめん……あれだけ約束したのに、私……約束を守れなかったよ。絶対に三人で帰ろうねって約束したのに……私は……」

 そんな事を言い出してきた沙希に鈴音は微笑みながらいうのだった。

「大丈夫だよ、私達は約束を果たした」

 思いも掛けなかった言葉に沙希は顔を上げると、沙希の目には優しく微笑む鈴音の姿が写ったのだった。そんな鈴音が自分の胸に手を当てて、しっかりと沙希に答える。

「姉さんは……ずっとここに居る。思い出という形で……ずっと一緒に居る事が出来る。それに……姉さんが言ってたよ。私が一人になっても、沙希が居る、他にも沢山の人達が私の傍で私を支えてくれる。そんな縁の螺旋を作れって。だから、今は寂しいけど、姉さんと最後に会えた事で……私は……姉さんを見送る事が出来た。姉さんから、最後の贈り物を受け取る事が出来た。それだけで、充分に私は姉さんを感じる事が出来る。だから……これからは一人でも歩いていける」

「鈴音……」

「それに……」

 そう言って鈴音が取り出したのは、静音のブレスレットだった。鈴音はそれを抱きしめるかのように胸に抱くと、はっきりと沙希に告げるのだった。

「こうすれば……いつでも姉さんに会えるような気がする。ずっと……見守ってくれてるって分かる。だから……約束は果たしたよ。こうする事で……私は姉さんを感じる事が出来る。それで充分だよ。それに……」

「それに?」

「……私達が村で成した事は……約束よりも重い事だったから、それを成し遂げてよかったと思ってる。だから、また……村に来たいと思うし、行ける事が嬉しいと思えるよ」

「……そうね」

 それ以上は何も言わない事にした沙希。たぶん、沙希にも分っているのだろう。大事なのは約束を果たす事じゃない。約束を守ろうとする意思と努力だと。

 そして……鈴音が村で成した事は、とてつもなく大きかった。だからこそ、鈴音は微笑んでいられるのだ。成すべき事を成す、それがどんなに大きい事か。そして……それをやりきった鈴音はどれだけ救われたかは分からない。だから、決して不幸だとは感じていなかった。

 鈴音は自分の人生で大事を成したのだ。それは、決して表には出ないだろうけど。関わった人達の心にはしっかりと残る。だから良いのだ、大事なのは何をしたのかを示す事ではない。何かを成したという事なのだから。

 そして鈴音はその意思を貫き通した。だからこそ、今の鈴音は真っ直ぐ前を見る事が出来る、一人でも歩き続ける事が出来る。そう、全ては成すべき事を成したから、歩き続けられる。静音が居なくなった今でも、一人で歩き続けられる。それが出来るだけでも、充分に約束は果たされたと言えるだろう。

 静音が居なくても、鈴音は最後の最後に静音から大切なものをもらった。それは形には残らないが、鈴音の心にはしっかりと残っていた。だから良いのだ。鈴音の中にそれがある限り、鈴音はずっと静音と一緒なのだから。だから、この場に静音が居なくても、鈴音はしっかりと静音を感じる事が出来る。だからこそ、三人で帰るという約束は果たされたのと同じだ。

 沙希も、その事に気付いたのだろう。だから、それ以上は約束に関する事は口にしなかった。そして鈴音達を乗せた列車は走り続ける。鈴音達が、それぞれの道を歩き続けるように。

 そんな電車の中で鈴音はある事を決めていた。それは、自分が進むべき道を見つけたと言えるだろう。だからこそ、鈴音は来界村での出来事を大切にしたいと思った。今までは静音の為に、静音に恩返しをするために生きてきた。けど、平坂洞で鈴音は静音と最後の別れをする事で、静音の為に生きる生き方を変える事が出来た、今度は自分の為に生きる道を見つけたのだ。それを見つけただけでも、鈴音には来界村に来た意味が充分にあるだろう。だからこそ、鈴音は車窓から流れる景色を見ながら思う。


 ―さよなら、姉さん。そして……いっぱい、ありがとう―


 そんな想いを村に残して、鈴音達を乗せた電車は走り続けるのだった。






 さ~て、これで断罪の日~咎~ の最終章は終わりですっ!!

 う~ん、本当なら、ちょっとした後日談も入れようかと思ったんですけどね。縁の始まりが電車の中からでしたからね~。咎の終わりも電車の中にしようって事で、こんな形になりました~。

 そんな訳で、やっと全章が終わった断罪の日~咎~ですが、残すはエピローグだけとなります。まあ、それも一緒に上げているので、それは、それで読んでくださいな。

 まあ、何にしても……ちょっと詰め込みすぎたな(汗)と思わなくもないんですが、今回はちょっと走りすぎって感じがしますね。まあ、それも仕方ないというか、直すべき点といいましょうか。まあ、これも今後の課題って事で。

 そんな訳で、やっと最終章が終わったのですが……長かった、本当に長かった。いやね、当初の予定だと、もっと早めに終わるはずだったんだけどね。去年の後半から、いろいろとあり過ぎて、すっかりペースダウン。やっとペースを取り戻してきたら終わりって感じですぜ、旦那。

 まあ、終わった事は良いとしても、ちょっといろいろと課題を残す展開になったかな~と私自身は思っているわけですよ。

 なんというか、私としては、最後の方が感動的な展開にしたかったんですけどね~。まあ、なんというか……これが今の限界かな……てへっ、という感じになってしまいました。まあ、本当に自分が納得できるように書けているのなら、私はとっくにプロになってるでしょうね~。う~ん、私もまだまだ勉強不足だと感じましたね~。

 でもでも、最終章で泣ける人が居たのなら、それはそれで、大成功だと思うんですよ。そんな訳で、最終章は感動したという人は是非とも感想をくださいな。もちろん、泣いたって人もお願いします。

 ……まあ、そんな人がいるかどうか分からないけどね(汗)

 さてさて、やっと終わりを迎えた最終章ですから、今回はあまり遊ばずに、そろそろ締めましょうか。

 ではでは、ここまで読んでくださりありがとうございました。そして、これからもよろしくお願いします。更に、評価感想もお待ちしております。

 以上、最後はお約束だったかな? とも思ってる葵夢幻でした。

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