第七章 その二
「ッ!」
「……七海っ!」
玉虫には何が起こったのか、まったく分からなかっただろう。それでも玉虫は冷静に七海を見ると七海は左手を押さえ込むように膝を地面に付けており、今まで左手に持っていた拳銃がどこにも無いという事だ。
鈴音に向けていた拳銃はどこに行ったのか、なぜ七海が膝を付いているのか玉虫には考えている余裕が無かった。なにしろ、鈴音にはこうなる事が分っていたみたいで、七海が膝を付いて左手の痛みに堪えている間に、鈴音が駆け出して一気に七海と玉虫に向かって来てるからだ。このままでは距離を詰められて、玉虫は霊刀の餌食となってしまうだろう。
だがそうなる前に玉虫は七海に力を注いで左手の痛みを消し去るのと同時に七海を立たせて右手の御神刀を両手で持って、向かって来る鈴音に七海を立たせるのと同時に御神刀を振るわせた。鳴り響く金属音。どうやら間一髪、玉虫の方が間に合ったようであり、鈴音の霊刀は玉虫に届く前に七海が持っている霊刀によって阻まれてしまった。
それでも不意を付かれた事には変わりは無い。鈴音が踏み込んできた速さと、何かで七海の左手に与えた激痛でぶつかり合っていた二つの刀だが、いとも簡単に鈴音の霊刀は七海の御神刀を横に弾き飛ばしてしまった。
玉虫の力で一時的に痛みを封じ込めているとはいえ、やはり左手には思いっきり力を入れることが出来ないようだ。そんな七海に目を向けず、鈴音は一気に七海の後ろに居る玉虫に向かって霊刀を突き出す。
そんな鈴音の攻撃を予想していたのだろう。玉虫は身体を横にずらすと突き出されてきた霊刀を避けてみせる。だが鈴音の攻撃はそこでは終わらなかった。鈴音はすぐに刃を返すと、そのまま横に居る玉虫を目掛けて薙いで来たのだ。さすがにそこまで追撃されると玉虫も後退せずにはいられなかった。だが玉虫の顔から余裕が消えた訳ではない、それどころか、まるでそこまで突っ込んできた鈴音に対して勝算があるかのように余裕を顔に出す。
そして玉虫は七海に更に力を送ると、七海は御神刀を両手でしっかりと持って、密着している鈴音に向かって横から薙ごうとしている。さすがに密着しているだけに、深手を負わせる事は出来ないだろうが、玉虫の力が宿った御神刀だ、刀身が少しでも斬れれば深い傷を負わせる事が出来るだろう。
そんな状態だというのに鈴音は七海から一歩も退こうとはしなかった。それどころか玉虫の攻撃を警戒しているようだ。まるで七海の攻撃を無視するかのように。そして七海は鈴音の胴を薙ごうと御神刀を振り出す。
だが、またしても何かの力によって振り出そうとしていた御神刀は弾かれ、反作用により振り出す事が出来なかった。鈴音はその間に七海の横を回り込み、そのまま奥に居る玉虫に向かって斬りかかる。
けれども玉虫も何が起こっているが分からないが、この程度で動揺するほど容易な相手ではない。玉虫は向かってくる鈴音に対して片手を差し出すと力を弾き出す。その力は衝撃波となって鈴音に襲い掛かり、さすがの鈴音も踏ん張る事が出来ずに、そのまま後ろに吹き飛ばされてしまった。それでも鈴音は空中でバランスを何とか保ち、足から着地する事が出来た。
けれども、鈴音が離れた事により玉虫に少しだけ考える時間を与えてしまったようだ。そして玉虫は、その短い時間で全てを察するのだった。
なるほどのう、そういう事やえか。どこから撃っているからは分からないやのう、だが確実にわらわ達を狙っている狙撃者が居るという訳やのう。七海の銃を落としたのも、先程の御神刀を止めたのも、狙撃者が放った狙撃によるものという事やえ。
どうやら玉虫は狙撃者が居る事に気付いたようだ。それは鈴音が仕込んでいた作戦であり、今でも吉田がどこかで鈴音達の戦いをスコープ越しに見ながら、いつでもフォロー出来るように狙撃体勢を取っている。だからこそ、七海は鈴音を殺すための拳銃を吉田の狙撃によって撃ち落されたり、鈴音を攻撃しようと振り出した御神刀に狙撃されて動きを止められたりと、吉田のフォローによって、だいぶ鈴音は助けられているようだ。
これこそが鈴音が考えた作戦の第一段階である。
さすがの玉虫も見えない狙撃者の存在までは予想が付かなかったようだ。だから鈴音を弾き飛ばした後、七海の手によって追撃をさせる事だけは止める事にした。今の状態で戦闘を続けても見えない狙撃者、吉田の存在がどうしても邪魔になってくる。
けれども、吉田の行動こそが鈴音の真意を玉虫に教えるものだった。なにしろ最初の一撃は不意を付いての狙撃である。その一発で七海を殺す事が出来たはずだ。それなのに吉田は七海ではなく、七海が持っている拳銃を撃ち落した。だからこそ玉虫は鈴音の真意を悟る事が出来たのだ。
つまり……鈴音には七海を殺すつもりは無い。もし、七海を殺して一気に決めようとしているのなら、先程の一撃で七海を射殺してしまえば済む事だ。それなのに吉田は七海の拳銃を撃ち落とし、七海の攻撃を阻害するだけに留めている。これは吉田に七海を殺す意思が無い、つまり鈴音は七海を殺さず、水夏霞の時と同様に玉虫だけを倒そうとしていると言っているようなものだ。
玉虫もそれに気付いたからこそ、吉田の存在を邪魔だと思っても脅威だとは思わなかった。なにしろ鈴音達には七海を殺す意思が無いのだから。それなら七海を使って玉虫は一気に攻勢に出れる。玉虫はそう判断すると再び攻撃を仕掛けるのだった。
一方の鈴音も玉虫の出方を窺っていた。既に吉田は二発も発砲している、だから玉虫が吉田の存在に気付いていると鈴音は読んでいるのだろう。だから、これからは吉田の存在を頭に置きながら七海に攻撃を仕掛けてくる事は分かりきっている。だからこそ鈴音は玉虫の出方を窺ったのだ。それは玉虫がどんな手段を講じてくるかを見極める為ではない、作戦を次の段階に進めるために時間が必要だったからだ。
そんな鈴音の意図に気付かないままに、玉虫は七海と共に駆け出して一気に鈴音に迫ってきた。
来るっ! 迫ってきた玉虫の動きを見て、次に七海が起こす行動をはっきりと読んだ鈴音はその場で思いっきり飛び上がる。そして次の瞬間には一陣の風が鈴音の下を通り過ぎていくのを鈴音はしっかりと感じ取る事が出来た。
そう、玉虫は走りながらも、七海に御神刀を一瞬で鞘に収めて、一瞬で抜き去ったのだ。横一線、沙希との戦いにも見せた技を玉虫はここで使ってきたのだ。もちろん、玉虫がここで横一線を使ってきたのにもしっかりとした理由がある。
なにしろ鈴音が横一線を読んで避けると思ったからこそ、玉虫は横一線を放ったのだ。次の攻撃を確実に入れるために。
未だに空中に居る鈴音に一気に迫る七海。そのスピードは尋常ではない、確かにこのスピードでは長距離からの射撃は難しいだろう。だからこそ玉虫は横一線で鈴音を空中で動きを止めながら、吉田に狙撃出来ないほどの動きで鈴音に迫ったのだ。
さすがは玉虫と言ったところだろう、これには鈴音が苦い顔になる。玉虫の力は水夏霞との戦いで大体想像していたつもりだが、まさか七海だと、ここまでの動きを見せるとは鈴音にも予想外だった。けれども想像だけは出来ていたみたいで、鈴音は空中ながらも下から七海が振り上げてきた御神刀に対して、なんとか霊刀をぶつけて御神刀の一撃を止めながら着地しようとする。
けれども、ここでも玉虫は、その強大な力を見せてきた。今、御神刀と霊刀は上と下でぶつかりあっている状態だ。七海は更に力を込めるように御神刀を握り締めると、そのまま一気に上に向かって振り上げたのだ。これによって鈴音は再び空中に押し戻される事になる。
これには鈴音も驚きを隠せなかった。なにしろ鈴音は下にある御神刀に霊刀をぶつけたのだ。だから御神刀には霊刀の衝撃だけではなく、鈴音の体重と地球の重力が掛かり、かなりの衝撃を与え、七海の御神刀に掛かる負荷もそうなものになったはずだ。それなのに七海はそれを力任せに御神刀を振り上げて、霊刀ごと鈴音を再び上に押し戻したのだ。
それだけ七海には玉虫の力が作用しているのだろうが、先程の鈴音と玉虫の言葉により、七海の心は崩壊しかけて暴走している。だから七海の心は嵐のように荒れ狂っている事だろう。それは感情の爆発よりも大きな力を引き出す。そんな心で戦っているからこそ、七海はあのような荒技すらも簡単にやってのけたのだ。
「ぐっ!」
さすがにこの状態に戻されると鈴音も苦しげな声を上げる。なにしろ、短時間で一気に上下の激しい動きを受けたのだ。身体にもそれなりの負担が掛かるというものだろう。だが鈴音はそんな身体よりも、次の事を考えて備えなければならなかった。
鈴音の身体が再び空中に押し戻された事により、下に居る七海は絶好の位置で落ちてくる鈴音に対して攻撃する事が出来る。
そんな七海が御神刀を縦に構える。どうやら落ちてくる鈴音を刺突の一撃で串刺しにするつもりなのだろう。さすがの鈴音も空中で動きが自由に取れない状態だ。そんな状態で真下から来る刺突を避ける事は不可能と言っても良いだろう。なにしろ刺突だからこそ、霊刀で防ぐというのは困難である。刺突だと攻撃の面積が狭すぎる、更に力が切っ先の一端に集るために威力も申し分ないだろう。そんな刺突を今の鈴音が防げる訳が無かった。
それでも鈴音は霊刀を自分の前に出すと、自分の背骨に合わせるかのように縦に構える。これで七海が繰り出してくる刺突を防げるとは思えないが、鈴音には信じるしかないのだろう。だからこそ、七海の刺突を避けた後に、すぐに攻撃に転じられる体勢を取るのだった。
そして落下してくる鈴音がいよいよ七海の間合いに入る。その途端に七海は目にも止まらない動きで御神刀を鈴音に向かって突き出す。さすがに、これで終わりだと玉虫は思った事だろう。だが、これぐらいで殺されるほど鈴音達は甘い相手では無かった。
なにしろ七海が鈴音の身体をしっかりと捉えて、確実に当たるように突き出した御神刀だが、その御神刀は鈴音の身体に当たる事無く、鈴音の真横を一気に通り過ぎて行った。
その事に玉虫は苦い顔をしながらも、すぐに七海を自分の元へ戻すように退かせる。その間にも鈴音の霊刀が七海を斬ろうとばかりに七海に迫るが、玉虫の判断が早かったようで、七海に傷を付ける事無く、退く事に成功していた。
そして鈴音はというと、着地するとすぐに七海と玉虫から距離を取った。それからやっと一安心したかのように一息付くのだった。そんな鈴音が先程の事を振り返る。
わ~、さすがにさっきのは危なかったよ~。あそこまで俊敏な動きをされると、さすがに私だけだと、どうしようもないよ~。それにあんな馬鹿力を出してくるなんて聞いてないよ~。けど、さすが吉田さん、的確に御神刀に当ててくれたおかげで助かったよ~。そんな事を思う鈴音。
そう、先程七海が繰り出した刺突は外したのではない、外されたのだ、吉田が放った銃弾によって。なにしろ七海は逸早く、上から落ちてくる鈴音に対して刺突を繰り出す構えを取っていた。七海としては素早く構える事で的確に貫くはずだったのだが、今回はそれが完全に裏目に出たのだ。
七海は素早く刺突を繰り出す構えをした。それは逆に言えば、それだけ構えている時間が長いという事だ。つまり遠距離から鈴音をフォローするために狙撃体勢を取っている吉田にしてみれば、御神刀に狙いを付けるのは簡単だったのだ。後は七海が突き出す瞬間を狙って引き金を引けば、放たれた銃弾は御神刀に当たり、御神刀の軌道がずれて鈴音には当たらないという訳だ。
更に言えば、七海が玉虫の力によって刀を扱う腕が飛躍的に上がっていた事も、今回は鈴音達にとって良い方向に出ていた。なにしろ今の七海は達人並みの腕前で刀を振るってくるのである。それは刺突であっても同じ、まったくぶれる事が無くて確実に狙った場所を貫いてきた。つまり、一度狙いを付けたら、まったくぶれる事無くに突いて来るという事が鈴音達に有利な目となって出たのだ。
いくら短い距離とはいえ、刀を狙った場所を確実に貫くというのは大変な達人技である。それだけ狙った場所を刺突で突き刺すというのは難しいのだ。けれども逆に言えば、狙った場所にしか刀が行かないという事だ。
だから吉田は最初、御神刀の切っ先に照準を合わせていた。後は七海が動き出したのと同時に引き金を引けば、自然と御神刀に当たるというわけだ。なにしろ、まったくぶれる事無く御神刀は突き進むのだから。
もし、七海が達人技までの腕を持っていなければ、確実に狙いはそれて、御神刀は狙った部分とは違う、鈴音の身体を貫いていた事だろう。そうなれば吉田の銃弾も逸れて、御神刀に当たる事無く、御神刀の軌道を大きく逸らす事は出来なかっただろう。
けれども今の七海は玉虫の力によって達人並みに刀を振るってくる。その達人並みの腕だからこそ、狙ったら外さないという技術が狙撃を成功させる要因となったのだ。けれども一歩間違えれば鈴音は確実に突き殺されていたのである。鈴音としても冷や汗物であった。
それでも上手く凌いだ事により、鈴音は窮地を脱して今では七海達と向き合っている。そして玉虫も、まさか鈴音達がここまでやるとは思ってはいなかったのだろう。玉虫にしては珍しく悔しさを顔に出している。まさか、あの攻撃まで凌がれるとは玉虫も思ってもいなかった事だろう。
けれども、鈴音達に攻撃を凌がせた最大の要因が自分の力による物だとは玉虫も気付いてはいなかった。そして、肝心な吉田も何とか当てられた事に一安心していたのだった。確かに吉田には当てる自信はあった。もちろん、それは七海が突き出そうとしていた御神刀がぶれる事無く、一直線に刺突を繰り出す事が大前提になっている。だから吉田としては七海がぶれずに突いてくれる事を祈りながら狙撃したのだ。だから吉田も鈴音と同じぐらい一安心していた。
それでも戦況は一進一退。未だにどちらにも転んでいない状態と言えるだろう。そんな戦況の中で鈴音と玉虫は次の手を考える。鈴音は吉田にフォローさせやすいように、玉虫は吉田にフォロー出来ないような手を考えないと決める事が出来ない。どちらにしても吉田の存在が今の戦況では鍵を握っていた。
そしてお互いに警戒しながら拮抗状態に入って少し経つと、玉虫は口元に笑みを浮かべて、手を前に差し出した。その先には鈴音も七海も居ない、その先にあったのは……御神刀である。そんな行動をとってきた玉虫に対して警戒する鈴音と吉田。どうやら玉虫には吉田のフォローを無効化させる手段を思い付いたようだ。
それから御神刀はというと……まるで熱を持ったかのように蒸気を上げ始め、御神刀に膨大な熱が込められるのだった。それを見ていた吉田は玉虫の狙いが何なのかをすぐに察する事が出来た。なにしろ吉田はライフルのスコープ越しに鈴音達の戦いを見ているのである。それに御神刀に狙いを定めれば、玉虫の狙いを読めるのは確実だった。
そんな吉田が状況を見ながら思う。
どうやら……これで作戦の第一段階は終了みたいですね。それにしても……第一段階でも、かなり危なっかしいのに、これから更に危なくなるんですからね。本当に気をつけてくださいよ、鈴音さん。さて、これからは私も気合を入れて行かないとですからね。なにしろ、これからは先程のように簡単な狙撃では済みませんからね。しっかりと気を引き締めて行きますかっ!
どうやら鈴音が立てた作戦には次があるようだ。けれども、吉田が思ったとおりに作戦の第一段階でも、かなり危なっかしい場面があった。だから吉田が心配するのも最もだが、それ以上に鈴音は気を引き締めて玉虫達と対峙していた。
そんな鈴音が御神刀を見ながら思う。
うわ~、御神刀が凄い事になってるよ~。これは第一段階終了かな? そうなると次の段階に行かないとだね。沙希、頼んだよ~、本当に頼りにしてるんだからね~。そんな事を思いながらも玉虫に隙を見せる事無く、鈴音は堂々と玉虫達と対峙していた。
そして玉虫が行っていた行動が終わったのだろう。玉虫は前に出していた手を引っ込めると、七海が手にしている御神刀がいかにも熱を持っているかのように、周囲の空気を歪ませる。それだけ熱の影響で陽炎を出しているのだろう。こうなると御神刀の周囲だけでなく、御神刀そのものも歪んで見えてくる。それを見て鈴音もやっと玉虫がやろうとしている事を察したようだ。
なるほど~、そう来たか~。陽炎で御神刀を覆う事で御神刀に狙撃が出来ないようにしたんだね~。やっぱり御神刀を狙撃できないようにしてきたか~。それにしても、そこまでは読んでいたけど……思っていた以上に厄介な事になってきたな~。あれだと狙撃を封じるだけじゃなくて、下手に触れれば私も火傷を負うよ。そんな事を思う鈴音。
どうやら玉虫が御神刀を狙撃出来ないように、何かしらの手段を講じてくるとは鈴音も読んでいたようだ。だが、まさかここまでするとは予測が付かなかったようだ。
なにしろ玉虫は御神刀に思いっきり熱を溜め込んでいる。さすがに御神刀が解けるほどの熱ではないが、人肌なら触れるだけで大火傷を負いそうな程の熱を持っていそうだ。それだけに、御神刀が繰り出してくる一撃は今まで以上に危険で避け辛い物になっている。
なにしろ鈴音の目から見ても御神刀が歪んでいて、しっかりとした形で見えないからだ。そうなると御神刀のしっかりとした位置が分からなくなる。それだけに今まで以上に早く動かないと御神刀の刃に斬られる前に熱で火傷を負ってしまう。
だが、御神刀に熱を込めたと行っても御神刀が解けるほどの、または強度が下がるほどの熱は込めてはいないだろう。もし、そんな事をすれば御神刀が折れてしまう事があるからだ。だから玉虫は御神刀の強度を下げる事無く、陽炎を作り出すだけの熱を込めただけだと鈴音は推測を立てる。
実際に鈴音の推測どおりだろう。なにしろ御神刀は玉虫にとっても重要な物。それをいくら鈴音達を倒すためとは言え、そこまでの熱は込められないし、下手をしたら御神刀が折れてしまうような失態は犯さないだろう。だからこそ、鈴音の推測は正しいと言えるだろう。
けれども熱を持った事で厄介な事になったのは間違いではない。だから鈴音は霊刀を構えながらも、熱を持った御神刀を警戒しながら、作戦を次の段階に進めるまでの時間稼ぎをしなければいけなかった。
だが今の玉虫が会話や挑発に乗ってくるとは思えない。なにしろ七海の心が暴走しているとはいえ、時間が経てば七海の心も少しずつではあるが平常心を取り戻してくるはずだ。だから玉虫は七海が平常心を取り戻す前に決着を付けに来ると鈴音は推測を立てている。
そして鈴音の推測が当たったのか分からないが、今までの拮抗状態を破って七海が熱を持った御神刀を手に鈴音に向かって突っ込んできた。そんな七海に対して鈴音もあえて突っ込む事にした。自ら距離を縮める事により、玉虫にさまざまな手段を使わせないようにしたのだろう。
距離が空いてれば空いてるほど、玉虫はその力を使って優位な展開に持って行くだろう。先程のように。だが鈴音からも突っ込んで行き、お互いに距離を縮めれば、玉虫が何かをする前に二つの刀はそれぞれの間合いに入る。つまり玉虫が何かをする猶予を与えずに済むのだ。だからこそ鈴音はあえて突っ込んで行ったのだ。
そして同時に振り出す鈴音の霊刀と七海の御神刀。同じタイミングで振り出したからだろう、二つの刀は二人の目の前でぶつかり合い、辺りに強烈な金属音を響き渡らせる。玉虫の力により七海の腕力にも力が込められているからだろう、御神刀に霊刀をぶつけた鈴音の手にも思いっきり衝撃が走った。
鈴音も七海の腕力が上がっており、振り出してくる斬撃が強力な一撃なのは予想していたようだ。だが、ここで鈴音にとって予想外な事が起こっていた。
ッ! さすがにこれは無理だよっ! 鈴音はそう判断するとすぐに自ら退いて、七海から距離を取ろうとした。さすがに熱がこもった御神刀だけに刃をまじあわせるだけで強烈な熱が鈴音を襲ったのだ。さすがに、その熱に耐えかねた鈴音は退くしかなかったのだ。それだけ御神刀は斬撃だけ無く、熱による効果も出ているようだ。
そして玉虫も鈴音が退いた好機を見逃すはずがなかった。すぐに七海に追撃を掛けさせる。今の御神刀なら刃で切り裂かなくとも、刀身が触れるだけでも鈴音に大きなダメージを与える事が出来るだろう。
そのうえ陽炎の効果によって御神刀の刀身が鈴音には揺らいで見えているからこそ、鈴音にとっては御神刀を避ける事すら難しい事になっていた。なにしろ刀身がはっきりと見えないのだ。だから、この辺に刀身があると予測と陽炎の揺らぎによる空気の変化を計算に入れながら御神刀の攻撃を避けるのが精一杯だった。だから鈴音は反撃もままならずに、なるべく御神刀に近づかないように攻撃を避けるしかない。
そうなってくると鈴音には反撃をする余裕が無くなっていた。なにしろ今の鈴音にとっては御神刀の攻撃を避けるだけで精一杯なのだ、とてもではないが反撃どころか、御神刀の攻撃を受け止める事すら難しい。仮に受け止めたとしても、御神刀が発する熱には鈴音も耐える事は出来ない。そうなると鈴音は御神刀を弾くしかないのだが、今の状態では御神刀に霊刀を当てる事も難しい状況になっていた。
そんな状況の中で鈴音が沙希に文句を言いながらも、ある作戦を立てていた。
う~、沙希ったら遅いよ~。こうなったら、絶対に攻撃できない状況を作って、無理にでも七海ちゃんから離れるしかないかな~。鈴音はそう判断を下すと、すぐに実行に掛かった。
鈴音は熱を放っている御神刀を避けながらも、ある方向を目指して進む事にした。もちろん、七海からは目が離せない。もし、一瞬でも七海から目を離してしまったら、鈴音は確実に斬り殺されるだろう。だから七海から目を離す事無く、鈴音はそれがある方向に向かって後退するのだった。もちろん、玉虫に気付かれないように。
だから鈴音は時々、霊刀を繰り出して御神刀を何とか弾いて見せた。その行為だけを見れば最後の足掻きに見えるからだ。実際に玉虫は鈴音が無駄な抵抗をしているとしか思ってはいなかった。なにしろ鈴音は御神刀を避ける事だけでも精一杯なのに、そこに無理して霊刀で御神刀を弾いているのだ。玉虫がそのように思っても不思議ではなかった。
そして玉虫に気付かれる事無く、鈴音はそれを背にすると、七海が御神刀を振り出してきたのと同時にそれを盾にするかのように身を隠すのだった。それから七海が持っている御神刀はというと……鈴音が思ったとおりにそれを傷つける事無く、七海は動きを止めるしかなかった。
七海の動きを止めて鈴音の身を守った物。それこそが表柱であるオブジェであった。さすがに玉虫も自らの手で表柱を傷つける訳にはいかない。だからこそ鈴音は表柱を盾にする事を思いついたのだ。
そしてワザと無理に反撃する事で、玉虫に無駄な抵抗と思わせながら、表柱に向かって行く鈴音を追い詰めていると思わせたのだ。確かに表柱は他の柱とは違って、かなり大きいし、円周距離もかなりある。だから鈴音が表柱を盾にするという発想は玉虫には出来なかったのだろう。それ以上に、表柱の大きさから鈴音を表柱に追い詰めたという考えが大きかったからだ。
そんな鈴音の思惑にまんまと乗せられた玉虫だが、鈴音は玉虫に悔しがっている時間を与えなかった。表柱のすぐ傍まで振り出されていた御神刀、さすがにそれ以上は斬り進めないから七海は動きを無理にでも止めて、御神刀を表柱に近づける事はしなかった。つまり、この一瞬だけは七海の動きが完全に止まっていたのだ。
もちろん、鈴音も七海の動きが止まると推測を立てて、表柱を盾にしたのだ。だから次の行動に移るのも素早かった。鈴音は七海の動きが止まるのを確認すると、すぐに表柱の影から飛び出すと、そのまま七海の懐に飛び込んで、勢いに任せて体当たりをする。
さすがに不意をつかれての体当たりである、七海はおろか玉虫でさえも反応が遅れてしまった。それでも吹き飛ばされた七海を受け止めるように玉虫は七海の後ろで支えると、七海は鈴音に弾き飛ばされながらも、倒れる事無く、足を地面に付けるのだった。
これで再び二人の間に距離が開いた事には変わりない。鈴音としては、これからの事を考えていた。
う~ん、もうそろそろだと思うんだけど。だったら、こちらから動かないで沙希を待つ方が良いよね~。そんな事を思った鈴音は霊刀を七海に向けながらも、表柱を背にして動こうとはしなかった。もちろん、七海や玉虫に対して隙を見せる事もしなかった。だからこそ、七海も玉虫も下手に動く事が出来なかったのだ。
さすがに表柱を盾にする事で攻撃をさせないという鈴音の策略にまんまとハマッた玉虫だが、玉虫としても、このまま鈴音に時間を与える気はなかった。それどころか、鈴音と七海が離れた事により、玉虫にとっては自分の力を介入させる事が出来るようになったと思っているようだ。
つまり鈴音が表柱を盾にして、これからの攻撃を凌ごうとしても無駄だという事を玉虫は理解していたからこそ、鈴音が動かなくても余裕だけは消えなかった。そして鈴音も今の状況が自分にとって有利だとは思っていなかった。
鈴音が取った行動はあくまでも時間稼ぎであり、七海と玉虫を牽制するための行動だからだ。だからこそ、鈴音は自ら動く事無く、七海と玉虫の動向を窺っている。
そんな時だった。玉虫の手が微かに動くと鈴音はすぐに辺りを警戒する。なにしろ鈴音は警戒を解いてはいない。だから玉虫の手が動いた後に七海の手から御神刀が消えるのをしっかりと目にしていた。
消えた御神刀をさがす鈴音。けれども御神刀の位置はすぐに分かった。だからこそ鈴音はそちらに目を向ける事無く、すぐに横に転がるように、その場から急いで移動した。そして鈴音が動いたすぐ後に御神刀が鈴音の居た地点へと落ちてきたのである。
玉虫は御神刀を鈴音の真上に瞬間移動させたようだ。けれども今の御神刀はかなりの熱を放っている。だから鈴音も真上から感じた熱で御神刀が真上にある事を察した。そして、それを確認している時間も無いと感じた鈴音は考えるよりも早く身体を動かしたのだ。
それは以前にも玉虫が使った手だったからこそ、鈴音はすぐに何が起こったのかが察しが付いた。けれども、その後の展開は鈴音の予想をはるかに超えていた。
なにしろ御神刀は七海の手から離れている。それなのに七海は鈴音に向かって一気に距離を詰めて来ているからだ。そんな七海を見て、鈴音はすぐに最悪な予想を立てる。
御神刀には玉虫の力で瞬間的に移動できる能力があるはずだよね~、そうなると、今は手元にない御神刀でも玉虫の力を使えば、すぐに七海ちゃんの元に。そんな予測を立てる鈴音、そして事態は鈴音が予想した通りに展開する。
確かに鈴音に迫っている七海の手には御神刀は握られていないが、次の瞬間には七海の右手に御神刀が現れて七海は御神刀をしっかりと握り締める。確かに鈴音が推測した通りに、御神刀は玉虫の力で瞬間的に移動できるようだ。けれども、その移動先も御神刀が祀られている本殿と玉虫の傀儡、そして羽入家の血筋と限られているだろう。
更に七海は羽入家の中でも特別、だから瞬間的に七海が御神刀を手にしても不思議ではなかった。それぐらいの事は玉虫にとっては簡単な事なのだろう。だが鈴音にとっては厄介な事、このうえなかった。なにしろ、何とか先程の攻撃を避けたばかりで鈴音は未だに片膝を地面につけている状態で、未だに立ち上がっていない。そんな状態の鈴音に七海が斬りかかって来るのだ、鈴音にとっては最悪な展開とも言えるだろう。
だが、そんな最悪な展開を打破するために鈴音が用意していた手段が姿を見せた。
突如として、それは爆音を上げながら、鈴音と七海の間に割って入るように七海に向かって突っ込んできたのだ。あまりにも唐突な事で玉虫は七海にそれを斬り裂くように動かすのだが、何かをジャンプ台にして飛び込んできたのだろう。それは七海の頭上近くから七海に落下し来る。七海はそれを御神刀で真っ二つに斬り裂いたのだ。
だが、それこそが大きな間違いだった。玉虫もそれに気付いたのは斬り裂いた後だった。その時は誰かが鈴音の手を引いて、その場から離れるように駆け出し、斬り裂かれたそれは御神刀の熱によって引火、残っていたガソリンが爆発するのだった。
突然起きた爆発に鈴音も顔を覆うように衝撃に耐える。それは鈴音の手を取り横に居る人物も同じだった。けれども爆発と言っても小規模な物で、すぐに舞い上がった炎は消え去り、衝撃も一瞬だけで今は残骸が燃えており、多少の黒煙を上げている。
鈴音はそんな状況の中で隣に居る人物に向かって笑顔で文句を言う。
「う~、沙希~、遅すぎるよ~」
そんな言葉を口にする鈴音、それに対してヘルメットを取った沙希はいつもの調子で鈴音に言葉を返すのだった。
「しかたないでしょ、鈴音が指定した位置が遠かったし、突っ込む場所を探すのも大変だったんだから。そこまで考えなかった鈴音が悪いのよ」
そんな言葉を口にする沙希に対して鈴音は拗ねたように唸るだけだった。
そう、沙希こそが鈴音が待っていた者だ。吉田の狙撃が通じないからには、後は沙希による接近戦に頼るしかない。鈴音はそう考えたからこそ、沙希には後から来るように指示を出しており、乱入する時はなるべく玉虫の虚を突けるように言っておいたのだ。
そのため、沙希は鈴音と玉虫の戦いに介入するタイミングを計るのと同時に突っ込む場所を探さなければいけなかった。それでも、鈴音が沙希に出していた指示が的確だったのだろう。これ以上無いタイミングで沙希は突っ込んできてくれた。
沙希は鈴音の合図。これは吉田も同じであり、鈴音が霊刀を天に向けるのを確認すると、あえてエンジンを切って、バイクを押しながら表柱に向かった。それから沙希はすぐに鈴音達の戦いに介入する事は無く、バイクで介入できる場所を探していたのだ。
だが上手く介入できる場所が見付からなかった沙希は、広場の近くに大きな岩とオブジェを作る時に使っていたのかは分からないが、長い板を見つけると、それらを使って簡易なジャンプ台を作ったのだ。
後はそこから鈴音を見守りながらも、自分が介入するタイミングを見計らうと、沙希はバイクのエンジンを思いっきり回して、そしてジャンプ台から一気に飛び出すと、七海に向かってバイクをぶつけに行ったのだ。
けれども、その程度の事で七海や玉虫がどうにかなるとは思っていなかった沙希は、バイクが七海に到達する前に、飛び出したバイクから飛び降りると、すぐに鈴音の元へ駆け寄って、鈴音の手を取って、その場から離れたのだ。
沙希としては七海がバイクを避けると思っていただろうが、まさかバイクを真っ二つに斬り裂くとまでは思ってはいなかったようだ。けれどもおかげで鈴音と共に七海から距離を取る事に成功したし、こうして無事に鈴音と合流するための時間を稼ぐ事が出来た。想定外の幸運と言えるだろう。
そんな事があり、沙希は鈴音と合流したのだ。そして鈴音は未だに繋いでいる沙希の手をしっかりと握り締めながら、隣にいる沙希に向かって話しかける。
「やっと合流できたね。なんだか……長い間会っていないような気がするよ」
そんな鈴音の言葉を聞いて沙希も鈴音の手をしっかりと握り締めながら応える。
「まあ、いろいろとあったからね。私も鈴音も、でも、終わりは近いんでしょ。なら、もう少し頑張らないとよね」
「うん、そうだね。でも……こうして沙希が近くに居てくれるだけで……凄く心強いよ」
「そりゃあ、私だからね」
そんな言葉で笑い出す鈴音と沙希。確かに分かれて行動してから、そんなに時間は経ってはいないだろう。それでも二人にとってはいろいろな事がありすぎた。だからだろう、お互いに久しぶりに会ったような気がしたのは。だからこそ、お互いに健在だという事を確かめるように、そんな言葉と笑顔を交わしたのだった。
けれども二人が再会を喜び合うだけの時間は無かった。なにしろ突然の突風が荒れ狂い、残骸と化したバイクもろとも炎を吹き飛ばしたからだ。吹き飛ばされたバイクの残骸は鈴音達の上を通り越して、遠くの畑へと落ちる。
そんな突風が止むと、二人は突風が吹いた方向へと目を向ける。そこには御神刀を振り抜いた七海の姿があった。どうやら玉虫は沙希が介入した事を察したのだろう。だからこそ、これからの戦いが激戦になると予想した。ならばと邪魔になるバイクの残骸を吹き飛ばすのと同時に二人を牽制するために未だに暴走して鋭い目付きをしている七海を睨ませる。
そんな七海を見ながらも沙希は鈴音の手を話すと、自らの両手をほぐしながら鈴音に話し掛ける。
「さて、私も到着した事だし、鈴音、いよいよ第二段階ね」
そんな言葉を聞いて鈴音も霊刀を七海に向かって構えながら答える。
「うん、ここからは沙希の役目が大きいから、沙希、お願いね」
鈴音の言葉を聞いて沙希は笑みを浮かべて話を続けてくる。
「もちろんよ、これで、あの小生意気な七海ちゃんを堂々と思いっきり殴れるんだから、私としては大歓迎よ」
そんな沙希の言葉を聞いて鈴音は苦笑いしながら思う。
まあ、沙希が七海ちゃんの事を嫌ってた、いや、気が合わなかったのかな? まあ、どちらにしても悪い印象しかないにしても、沙希~、やる気を出し過ぎだよ。だから沙希~、やり過ぎないでよ~。そんな事を思う鈴音だが、決して口に出す事は無かった。
なにしろ今の沙希はいろいろとあり過ぎて士気が思いっきり上がっている。ここで余計な事を言って沙希の士気を下げるのは自分で自分の首を絞めるようなものだと鈴音は考えたからだ。それでも鈴音は最低限の事は沙希に伝えるのだった。
「沙希~、やり過ぎないでよ~。沙希がやり過ぎると、後で私が大変なんだからね~」
「分ってるわよ。でも、七海ちゃんは玉虫の力でかなり力を得てるんだから。私が思いっきりやるぐらいが丁度良いと思わない」
「まあ、そうかもしれないけど……分かった、沙希に任せるよ」
「そうそう、私に任せておけば良いのよ。鈴音、絶対に鈴音の作戦を成功させてあげるのは私なんだから」
そんな沙希の言葉を聞いて鈴音は瞳を閉じると口元に笑みを浮かべて話を続ける。
「沙希、今の沙希は何時にも増して頼りになるよ」
「何言っているのよ鈴音、私はいつでも鈴音の頼りになってるわよ。その分、鈴音がだらしないだけでしょ」
「だらしないは余計だよ~」
沙希の言葉に不満げな声で否定するが、鈴音は瞳を開けると七海を真っ直ぐに見据えて、隣に沙希の温もりを感じながら言葉を口にする。
「沙希、沙希が隣に居てよかったと思うよ。姉さんが居なくなった時も、そして今も沙希が隣に居る。沙希と一緒に居られる事が……こんなにも安心できるって、今分かったよ。だから沙希、これからもよろしくね。そして……最後まで戦い抜こう」
そんな鈴音の言葉を聞いて沙希は拳を構えながら言葉を返した。
「鈴音、最初は静音さんとの約束があったからこそ、私は鈴音と行動を共にした。けど……今は違う。今は自分の意思で、鈴音と一緒に居る事を決めた。だから鈴音、この戦いは絶対に勝つわよ。そして……最後まで一緒に行くんだから」
「うん、そうだね、沙希」
鈴音の言葉を最後に二人の会話は終えた。それでも二人の顔にはいつの間にか笑みが浮かんでいた。それだけ二人の絆は特別なのだろう。だからこそ一緒に居られる、一緒に戦う事が出来る、一緒に……最後まで行ける。そう、信じているからこそ二人の顔には自然と笑みが浮かんだのだろう。
それは特別な絆、切っ掛けは些細な事でも、今では特別で大切な絆となっている。それほどまでに二人が絆を育てたからだ。だからこそ、二人とも強大な力を持つ玉虫と未だに暴走状態にある七海を前にしても負ける気がしなかった。それほどまでに二人はお互いの事を信頼している、二人で居れば最後まで行けると信じているからだ。
そんな二人を前にして、玉虫も余裕が無くなったのだろう。今ではすっかり熱が抜けて、いつもの御神刀になっている。事態がここまで来ては、先程のような小細工は無用だと玉虫も感じたようだ。なにしろ鈴音と沙希は、今の状況でも笑みを浮かべている。それだけで玉虫は二人を脅威と感じも不思議ではない。だからこそ、玉虫は全ての力を込めて二人を殺すために七海に更なる力を与えるのだった。
それこそが……鈴音の作戦に含まれているとは気付かずに……。
さてさて、いよいよ鈴音達の反撃が始まりそうなところで終わりましたね~。それにしても……今回は会話文がほとんど無かったからな~。だから密度的にはかなり増し増しだと思います。
そしてやっと出てきた沙希っ! これで鈴音と沙希が揃いましたね~。さあ、ここから鈴音達がどんな行動に出るのかっ! そして鈴音が考えた作戦とは、さあ、続きが気になる人は次へGOっ!
とまあ、そんな感じで次回予告をしてみました。まあ、次回の事にはほとんど触れては無いんだけどね~。けど、まあ、次回をわくわくさせる、そんな予告……になってれば良いなと思って、思いつきだけでやってみました~。
まあ、成否は問わない事にしましょう。それにしても……吉田さん、今までは影が薄かったのに、ここに来て意外な特技を披露し、更に意外なほどに活躍してましたね~。
ふっふっふっ、これで吉田さんの凄さが分かった事でしょう。実はあの人は凄い人なんですよ。だが忘れるな、吉田さんは……後三回も変身を残しているんだぞっ!!!
……すいません、冗談です。ただ、やってみたかっただけです。
さてさて、そんな訳で、次もあるので、今回はこの辺で締めようと思います。
ではでは、ここまで読んでくださりありがとうございました。そして、これからもよろしくお願いします。更に評価感想もお待ちしております。
以上、ネットのサバゲーでスナイパーをやると一発も当たらない葵夢幻でした。