表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
断罪の日 ~咎~  作者: 葵 嵐雪
第三章 玉虫
13/39

第三章 その四

 学の手によって、今まさに振り下ろされようとしていた御神刀を目にした沙希は考えるよりも早く身体を動かしていた。沙希は一気に学の懐に飛び込むと、そのまま両手を伸ばした。もちろん、沙希に白刃取りのような事は出来はしない。なにしろ沙希が得意としているのは護身用格闘技であり、剣術ではないのだから。だから剣術に類する白刃取りなんて沙希に出来るはずが無かった。

 だが沙希は静音から強制的にいろいろな事を学ぶ事が多かった。それが自然と身に付くまで静音は沙希に徹底的に叩き込んだらしく。それがこんな所で役に立つとは沙希自身も思ってもいなかった事だろう。

 沙希が伸ばした両手が掴んだ物はもちろん御神刀の刀身などではない。先も言ったとおりに沙希はそんな芸当は出来ないのだ。なら何を掴んだかというと……それは学の手であった。正確には刀の柄と学の手、つまり学が刀を握っている場所を沙希は掴んだのだ。

 そんな沙希の行動が功をそうしたのか。御神刀は沙希の身体に触れる寸前、沙希の肩にあと少しで届く所で止まっていた。そう、これこそが沙希が静音から教わった白刃取りでは無いが、刀に対する対処法である。

 刃物はその刀身が長ければ長いほど、懐に入ってしまえば自由に振るえないものである。だから沙希のように懐に入って相手の手を捕らえてしまえば、その時点で相手は刀を振るう事が出来ず。なおかつ白刃取りのように刀を押さえ込まれて、動きを封じられたのと同じなのである。

 そんな沙希の行動にさすがの玉虫も驚きの表情を見せたものの、すぐにまた笑みを浮かべて沙希に向かって話しかけてくるのだった。

「おしいや、おしいや、あと少しでわらわの傀儡が増えるところだったのに。まことにおしいやな」

 そんな玉虫の言葉を聞いて沙希はやっと玉虫がここまでの準備をしていた理由にやっと気が付いた。

 確かに玉虫にとって鈴音達が柱の存在に気付いて、破壊しようとするとは思いもよらなかった事だ。だからこそ吉田の時には確認の為に姿を現して、吉田を追跡したのだ。けど、沙希の場合は違った。

 二本目の柱が折られたとなると、これは確実に柱の存在意義に気付いて、意図的に破壊しているのだと玉虫は悟った。だからこそ、玉虫は鈴音達の内情を知りたいと学という手駒を用意してから沙希の前に姿を表したのだ。

 つまり最初から玉虫の狙いは沙希を殺す事ではなく、沙希に憑依するために刀傷を負わせる事だった。だが、沙希の身体には浅くではあるが傷が存在していた。それでも玉虫が沙希に憑依出来ないという事は、玉虫が憑依するには致命傷にも似た傷を付けないと憑依出来ないのだろう。だからこそ玉虫は沙希を本気で殺すつもりで襲い掛かってきたのだ。

 その事実に気付いた沙希は玉虫に向かって悪意に満ちた、意地悪な笑みを向けるのだった。

「残念だったわね。私だって、そう簡単にあんたなんかに支配されないんだからね。それに……私に憑依したいって事は、そっちもこっちの内情を知りたいみたいね。どうやら知らない事があるのはお互い様みたいね」

 そんな事を言い出した沙希の言葉が玉虫から笑みを消した。どうやら沙希の言った事は的を射ていたようだ。

 確かに鈴音達にも玉虫に関してまだ知らない謎が残っている。だが玉虫から見れば、柱を見抜いて破壊を続けている鈴音達を放っておける訳が無い。だからこそ玉虫は鈴音達の内情を知ろうとしていたのだ。

 つまりお互いに腹の中を探ろうとしていたのだ。玉虫はその事を隠す事で余裕を見せて、沙希を追い詰めていたのだが、沙希にそこまで悟られるとさすがに玉虫は余裕を見せるだけの余地が無くなったのだろう。

 それでも玉虫はあえて笑みを浮かべて沙希に話しかけるのだった。

「なかなか、そう、なかなかやのう。体術だけでも見事だというのに、そこまで見抜くとはやのう。そこまで文武に秀でているとは思ってもみなかった事やのう。いやいや、なかなかやのう」

「…………」

 玉虫の言葉に沙希は言葉を返さなかった。正確には言葉を返すだけの余裕が沙希にはなかったのだ。それは先程から学が信じられない力で沙希を押さえ込みに掛かったからだ。なにしろ沙希は学の懐に飛び込んで下から手を伸ばして学の手を抑えているのである。

 一見すると沙希が完全に学の動きを封じているようにも見えるが、学が上から沙希を斬り付けるのではなく。そのまま押し倒すように力を掛けてきたのだから、沙希の腕に掛かる負担はより一層大きくなった。どうやら玉虫は完全に沙希を押し倒してから、沙希に刀傷を付けようとしているようだ。それが分っているだけに沙希にしても気が抜けない状況と言えるだろう。

 なにしろ玉虫に刀傷を付けられたら最後だ。最悪の場合は自分の手で鈴音を殺してしまう事があるどころか、玉虫に憑依されれば鈴音の推理を玉虫に露呈するのと同じだ。つまり鈴音達の情報を余す事無く玉虫に提供するのと同じ事になってしまう。

 なにしろ沙希に憑依して沙希に成りすまして会話すれば、誰も疑う事無く、自分自身の感想や意見を遠慮なく喋ってくるだろう。鈴音に関してもそれは言える。なにしろ鈴音が沙希を一番信頼しているのだから、鈴音は沙希に聞かれれば自分の意見や推理を余す事無く喋るだろう。そんな事になれば鈴音達の情報は玉虫に筒抜けになり、鈴音達の計画が潰されてもおかしくは無い。

 だからそれを避けるためにも沙希は何としても、この場を乗り切らなくてはいけなかった。

 けれども上から押さえ込んでくる学の力はとてつもなく、とても人間の力ではなく猛獣を押さえ込んでいる気分にさせられる沙希だった。それほどまでに玉虫の力が学に作用しているのだろう。

 そんな状態で沙希は何とか学だけでも、何とかしようと思考を巡らすのだった。

 こんな、力って、ドーピング以上に卑怯じゃない。さすがにこの力に力で対抗するには無理よね。それに私だってか弱い女の子なんだからね。そんな私がこんな力に対抗出来る訳が無いじゃない。

 鈴音が聞いたら絶対に笑いそうな事を思う沙希。確かに沙希は女性だが、決してか弱くは無い。なにしろ護身用の格闘技を身に付けているのだから、そこら辺居る男なら沙希に触れる前に気絶させられるほどの腕を持っているのだ。そんな沙希でも、さすがに玉虫の力が作用している学の力には到底対抗出来るものではなかった。だからこそ沙希は静音の事を思い出す。

 それは静音が面白半分で沙希を秘密の訓練場(静音が勝手にそう言っているだけで、ただの空き地である)そこで静音の相手をさせられた時の事だ。なにしろ静音は木刀で容赦無く、沙希に向かって木刀を振るってくるのである。沙希もそんな静音の攻撃を避けるだけで精一杯だった。

 そして休憩中にやっと静音は対抗策を教えてくれた。その事を思い出した沙希は苦々しい顔になりながらも決意せざる得なかった。

 相手は玉虫の力を得ている学さんか……しかも木刀じゃなくて真剣だからね。静音さんが教えてくれた事が出来るか分からないけど……今はやるしかないか。まったく、静音さんも物騒な事を教えてくれた物よね。けど……こうやって役立てる時が来るなんて、なんでもやっておく物ね。まあ、静音さんには通じなかったけど、ここは静音さんを信じてやるしかないっ!

 そう決意すると沙希はすぐに行動を起こした。

 沙希は学の右腕に抱き付くように一気に距離を縮めると、そのまま自ら倒れた。もちろん、そんな事をすれば今まで押さえ込もうとしていた学の身体は支えを失った事により一気に地面に向かって倒れるのだが、それは沙希も同じである。

 だが違う点が一つだけあった。沙希は抱き付いた学の右腕を軸に身体を回転させたのである。つまり学の身体に沿って回転したために、学が倒れた時には沙希は学の上を取る事が出来たのだ。だが、それだけではない。学は沙希に右腕を完全に絡め取られていたために、倒れた時には沙希に関節技を掛けられる体勢になってしまった。

 しかもそれだけではない。沙希は学の右腕に抱き付いた時にしっかりと右手と御神刀を捕らえていた為に、自然と左手は御神刀から離れて学が倒れた時には御神刀を右手一つで掴んでいる形になる。

 更に沙希は追い討ちを掛けるために学の首に足を掛けて、完全に学に関節技を決めて動きを取れない状態にしてしまった。

 後は学が御神刀を離すまで間接を痛めつけるだけだ。そう、これで沙希は完全に学の動きを封じるのと同時に関節技での攻撃を仕掛ける事が出来たのだ。

 沙希も伊達に格闘技を習っていた訳ではない。しかも護身用だからこそ、こうした関節技も殴る蹴るのような拳打と同じぐらい得意としていたのだ。そんな沙希だからこそ静音は刀を相手にこうした打開策がある事を徹底的に沙希の身体に叩き込んだのだ。

 そんな沙希が、学を押し倒した事により近づいた玉虫に向かって顔を向けると、沙希は笑みを浮かべて玉虫に向かって話しかけた。

「これで形勢逆転ね」

 そんな沙希の言葉に玉虫は笑みは浮かべないものの、無表情なままで沙希との会話を続ける。

「どうやら、そうみたいやのう。だがやのう、忘れておるのではないか、わらわの存在をのう」

 つまり先程のように玉虫は何かしらの力を使おうとしているのだろう。そんな玉虫に向かって沙希は笑みを浮かべ続けながら会話を続ける。

「そんな事をしちゃっていいの。この体勢でさっきみたいな事をやれば、完全に学さんの腕は折れるわよ。それどころか御神刀にまで類を及ぼすかもしれないわね」

「……なるほどやのう。そう言われればそうやのう。なら……力づくで何とかしようとするとしようやのう」

 玉虫がそんな言葉を発すると学は常人とは思えない力で沙希から逃れようとするが、沙希は完全に逆間接を決めているために、腕を振り解くことが出来ない。それならと玉虫はそのまま学を立たせて、沙希を持ち上げて木にでもぶつけようとしたのだろう。玉虫は学を立たせようとするが、学は立つどころかドンドンと力が衰えて行くのを玉虫は感じていた。

「主は何をしておるんじゃっ!」

 やっと沙希がしている事に気付いた玉虫は驚きの表情で驚愕の声を上げる。そんな玉虫に沙希は勝利の笑みを浮かべると、はっきりと勝因を指し示して見せた。

「どうやら私が攻撃しているのは腕だけだと思っているみたいね。でも、私はしっかりと別の場所を攻撃しているのよ……足でねっ!」

 沙希がはっきりと断言すると玉虫はやっと沙希の足に注目した。沙希の足は片方はしっかりと地面を踏み締め、片方は学の首を押さえ込んでいる。いや、正確には学の首、そこのある一点を押さえ付けているのである。それを見た玉虫は思わず苦い顔をし、それを見た沙希は思わず意地悪な笑みを浮かべる。

「やっと分かったみたいね。私の狙いは腕を押さえ込む事じゃない。首の頚動脈を締め付ける事にあったのよ」

「…………」

 そんな沙希の言葉を聞いた玉虫は人とは思えない表情で沙希を睨み付ける。どうやら今回は完全に沙希に一本取られたようだ。

 そもそも沙希自身も腕を押さえ込んだところで勝てるとは思っていない。静音もそれを見越して、この技を沙希に叩き込んだのである。つまり腕に間接を決めている見せかけて、本命は首の頚動脈を絞めることに狙うという技を。

 首にある頚動脈は脳に血液を送る重要な血管である。これが何らかの要因で詰まったりすると脳梗塞を引き起こす原因となり、絞めたりすると脳へ血液が送られなくなり、窒息死に至る重要な血管である。

 だが頚動脈は首の左右に一つずつ存在しており、沙希はその一つの頚動脈を足で押さえ込んでいるのである。もちろん、そんな事をすれば脳に送られる血液が不足して貧血を起こし、そして失神、最後には死亡に至る。そもそも窒息の一因として頚動脈の圧迫による脳への血流不足での死亡という事もあるのだ。

 一般的に首を絞めての絞殺は気道を塞がれた事による窒息ではなく、頚動脈を絞められての窒息死というのが一般的に多いのである。それだけ頚動脈は重要な血管といえるだろう。

 沙希はその頚動脈を締め付ける事により、学を徐々に貧血状態にしていき、最終的には失神を起こさせて気絶させるつもりなのだ。さすがに気絶した人間を無理に動かす事は玉虫にも出来ないだろうと判断したからこそ、沙希はそのような手段に出たのだ。

 そして派手に見せた腕の関節技も首を締め付けている事を気付かせないためであった。

 まんまと沙希にはめられた玉虫は苦々しい顔をしながら学から離れると、不思議な事に御神刀も学の手から消えて玉虫の前に姿を移動させていた。どうやら鈴音の推測どおりに御神刀にはテレポートのような能力もあるみたいだ。

 それから沙希は完全に学を失神させると、学を解放して玉虫と向き合った。

「さあ、これで先程の宣言どおりにあなたの手駒である一つを潰してあげたわよ。さあ、どうする?」

 はっきりと勝利を確信した沙希は余裕を出してそんな事を口にするが、実際にそこまでの余裕がある訳ではない。なにしろ玉虫がここで素直に引き下がるとは沙希も思ってはいない。だからこの場から逃げたいと思っているのは沙希の方なのだ。けれども、それを玉虫に悟らせまいと沙希はあえて余裕を見せたのだ。つまりは強がって見せているに過ぎない。

 そんな沙希の強がりに気付かないままに玉虫は苦い顔を見せるが、すぐに思いっきり笑って見せた。そんな玉虫に沙希はまだ何かを隠しているのではないのかと周囲を警戒するが、玉虫は笑うのを止めると沙希に独特の赤い瞳を向けるのだった。

「見事、そう、今は見事と言っておいてやのうや。それに……わらわ達も主とだけ遊んでいる時間は無いようやのう。すでに四本もの柱が破壊されておるからやのう。だからここは見逃してやるとしようやのう」

「言ってくれるじゃない。状況は私達が完全に有利なのよ」

 玉虫の言葉に沙希はあえて強がった言葉を口にする。沙希の心境としては見逃してもらえるのなら一刻も早く、この場から逃げ出したいだろう。だが玉虫が自ら見逃してやると、上から言ってくるには何かしらの意味があると感じ取った沙希だからこそ、あえて強がった言葉を玉虫に向けて放ったのだ。

 そんな言葉を受けて玉虫は不気味な笑みを浮かべながら答える。

「確かにその通りやのう」

 玉虫は沙希の言葉を否定しなかった。そう、否定せずに玉虫は不気味な笑みを絶やす事無く沙希に向けて言葉を投げ掛けてくるのである。沙希にしてみれば、それは悪寒以上に不気味な物を感じていた。

 沙希も静音や鈴音の事が無ければ今すぐにでも逃げ出したい気持ちだろう。けれども静音との約束と鈴音の存在が沙希に勇気をくれて、今はこうして強がりでも玉虫と言葉を交わすだけの勇気をもたらしてくれているのだった。

 そんな沙希に向かって玉虫は話を続ける。

「だがやのう、いくら推測が当たっていたとしても。それが実行不可能な事だとしたら、どうするつもりやのう。明晰な主なら分っておるであろう、わらわが言いたい事を」

「つまり私達には最終的にあなたを止める事は出来ないと言いたいわけね」

「ふっふっふっ、そのとおりやのう。さすが、さすが。だからわらわはせめて邪魔する事に専念するとしてやのう。わざわざ柱が破壊されるのを傍観しておるわけには行かんからやのう。だから邪魔して遊ぶとするやのう」

「そう、ならそうすればいいわ。けどね……その余裕こそが命取りになるのよ。その事を良く覚えておく事ねっ!」

 最後にはっきりと声を上げる沙希。声を上げることで自分自身にも気合を入れ直し、玉虫を威嚇する効果を発揮しようとしたのだろう。確かに声を張った事で沙希の心は少しだけ強くなり、余裕が生まれたが、玉虫は依然として不気味な笑みを浮かべたままで、沙希の言葉は威嚇にもならなかったようだ。

 そんな玉虫が御神刀と共にゆっくりと森の中に移動するのと同時に、その姿を御神刀もろとも薄くして行きながら沙希に最後の言葉を掛けるのだった。

「ならば来るが良い。わらわと依り代がおる最終的な決戦場にやのう。その時が来るか分からんやのうが、待っておるぞ。まあ、精々頑張るがよいでやのう」

 その言葉を最後に玉虫と御神刀は完全に姿を消して沙希の目の前から去っていった。沙希はそんな玉虫を見送るとやっと一安心したように大きく息を吐いた。そして玉虫が残していった言葉について考えるのだった。

 玉虫ははっきりと言ったわね、私達の邪魔をして遊ぶって……それは私達が最終的に柱を全て破壊出来ないと確信しているから出た言葉よね。そう考えれば玉虫がそう言った意味の裏付けが出来る。つまり玉虫は私達が十本の柱を全て破壊出来ないと踏んでいる。そこにはやっぱり……鈴音が言ってた表柱と裏柱が関係してくるはず。玉虫は裏柱である御神刀を私達が破壊出来ないと分っているから、あんな言葉を残したのね。

 そんな結論を出す沙希。それを逆に考えれば玉虫は裏柱である御神刀を鈴音達は柱であると見抜いてないという見解を示しているのと同じだ。だからこそ玉虫はあそこまでの余裕を見せてきたのだ。

 確かに鈴音も裏柱。つまりは御神刀をどうやって破壊するかは示してはいない。ただ御神刀が柱の一本だという推理を立てたに過ぎない。けれども玉虫が見せた余裕から見ても、鈴音の推理が当たっている可能性が大きかった。

 それは先程の光景を見ていれば充分に分かる。玉虫は大事に御神刀と一緒に姿を消したのだ。もし、御神刀に何の意味も無ければ、この場に残して行っても不思議ではない。それなのに玉虫は御神刀を大事そうに一緒になって姿を消したのだ。

 つまり玉虫と御神刀はセットになっていると考えて良いだろう。そうなると玉虫が言っていた最終的な決戦場で玉虫を相手に御神刀を折らないといけなくなる。玉虫は鈴音達がそこまで辿り着けないと思っているから、未だに余裕を見せているのだろう。けれども玉虫の余裕もあながち外れではないのも確かだった。

 なにしろ鈴音は御神刀をどうやって折るかは示していないし、実際に玉虫の力が弱まっているのかも疑問だ。なにしろ先程の戦闘で沙希は嫌になるほど玉虫の力を見せ付けられたのだから。それなのに玉虫には、まだ隠し球がある。そんな状況に沙希は玉虫の恐ろしさを感じたのと同時に絶対に止めないといけないという覚悟を沸きあがらせるのだった。



 なんにしても玉虫が見逃してくれたおかげで沙希は無事に難を乗り切った訳だが、玉虫の言葉から察するに別の誰かに向かったのには間違いないだろう。なにしろ玉虫にしてみれば柱が破壊される事は決して愉快な事ではないのだから。むしろ不愉快を通り越して怒りを示しても不思議では無いだろう。それなのに沙希にあそこまで余裕を見せたという事は玉虫は最終的に用意している物に絶対的な信頼を寄せている証だろう。なんにしても沙希は自分の無事を皆に知らせるのと同時に警告を知らせる必要がある事を思い出して無線機を手にする。

 けれども沙希は無線機を手にしたものの電源を入れる事にちゅうちょした。それはやはり鈴音に何て言えば良いのか分からないからだ。

 それは先程の玉虫とのやり取りで沙希は静音の末路を知った。もう三人で帰る事が出来ない事を知ったのだ。その事をどうやって鈴音に伝えるか、またはこのまま黙っていた方が良いのか、迷っていたのだ。そんな迷いが沙希の頭を駆け巡る。

 さっきの玉虫が言ってた言葉が確かだとすると……やっぱり静音さんは……もう殺されている事になる。玉虫の言葉が本当なら、玉虫は仮初の復活をする度に生贄と依り代を必要としているのよね。だったら今回の事で生贄となった人物は……失踪とされている静音さんと静馬さん。そうなると依り代は? ……あ~、ダメだ。私には思い浮かばない……ううん、もしかしたら……受け入れられないのかもしれない……残酷すぎる現実に。

 そんな事を考えながら沙希は無線機を手にバイクに寄りかかりながら、未だに赤錆のような雲が広がっている空を仰いだ。そんな空を見ながら沙希は思いを馳せる。

 やっぱり……私って卑怯だね。一番残酷な事は分っているのに……また……逃げようとしている。向かい合う勇気が無いから、鈴音のように過酷な現実を直視できないから。私は……鈴音に頼ろうとしている。やっぱり……私って卑怯だ。

 それは沙希の過去であり、静音に癒してもらった傷でもあった。だからこそ沙希は静音との約束を守るために、親友である鈴音の為にここまでやってきたのだ。それなのに、ここまで来て一番残酷な事実を鈴音に告げる事にちゅうちょしている。いや、むしろ鈴音なら自分で気が付いてくれる事を願っている自分に沙希は自分自身が何も変わってなく、昔のままだと思い知らされる。それでも沙希は静音から貰った言葉を思い出して、昔の傷を癒すのだった。

 静音さん……静音さんは私を許してくれた。絶対に逃れようの無い罪を背負った私に癒しの言葉を掛けてくれた。そう、こんな風に『沙希、その人はもう居ない。だから謝罪したくても沙希はその人に謝罪も許してもらう事も出来ない。だから沙希のやっている事は無駄じゃないわよ。それでも沙希が自分を許せないのなら、ずるいと思うかもしれないけど鈴音にその事をやって上げて。そうすれば……いつか自分自身を許す事が出来るから。だから……沙希にはもう、自分自身を傷つける刃なんて必要ないでしょ』……その言葉に……私はどれだけ救われたか分かりません。でも……静音さん……私はまた同じような事をしてる。だから……私はどうすれば良いんですか?

 そんな問い掛けを空に向ける沙希。当然のように沙希の心が問い掛けた物に答える者などは居ない。ただ赤錆のような雲が広がっているだけだ。そんな空を見上げながら沙希は更に静音の事を思い出していた。

『ねえ沙希、沙希がまた自分の罪で苦しむような事があれば、その時は鈴音に押し付けちゃっても良いわよ。その代わりに鈴音を傷つけた分だけ、沙希も傷ついてね。同じ傷を負う事で同じ痛みが分かり、人は始めて理解が出来ると思うのよ。沙希なら分かるでしょ、罪の痛さが、自分自身を傷つける痛みが、そして痛みを共有してくれる存在の尊さが』

 そんな静音の言葉を思い出すと沙希は顔を下に向けて俯く。

 ……そっか、私には鈴音が居る、鈴音が居たんだ。だから私は鈴音を思いっきり傷つけるかもしれない。だからこそ……私も同じぐらいに傷つかないといけないんだ。鈴音の痛みが分かるぐらい傷ついて、傷ついて、そこまで傷ついてやっと鈴音と痛みを共感できるんだ。……なら、私も覚悟を決めるかな。鈴音と……自分自身を傷つける覚悟を……。

 そう考えを決めた沙希は改めて顔を上げた。沙希の顔からはすっかり迷いが消えていた。どうやら沙希には何かしらの覚悟を決めたようだ。だからこそ、沙希はもう迷わずに進む事が出来ると確信したのだろう。

 沙希はおもむろに無線機の電源を入れると送信するためのボタンを押した。

「え~、こちら沙希。なんとか玉虫を追い返すことに成功しました。これから次の柱に向かいます」

 そんな言葉を無線機に向かって全員に送ると真っ先に鈴音からの応答があった。

『よかったっ! 沙希、無事だったんだね』

 安心したような鈴音の声に沙希は静かに微笑むといつもの調子で返答する。

「当たり前でしょ、私だってそう簡単にはやられないわよ。どこかの誰かと違ってね」

『う~、それって私の事を言ってるの~?』

「他に誰が居るっていうの」

『沙希にいじめられた~っ!』

「いきなり卑屈になるなっ!」

 そんないつもどおりのやり取りに沙希は思わず笑いそうになってしまった。そして笑いそうな心の裏側では別の事を思っていた。今はこれで良い、来るべき時が来れば……鈴音は自分から悟るはずだから。だから……私からは……。どうやら沙希は静音の事を鈴音には告げない事に決めたようだ。

 それは一見すると卑怯かもしれない。自分自身を守っているだけの自己防衛に過ぎないのかもしれない。けれども沙希の覚悟はその先にあった。それは鈴音が真実を知った時に、その時に全てを受け入れられるように、鈴音と同じ傷を負うために、そして鈴音を受け止められるようにするための準備でもあり、覚悟でもあったのだから。だからこそ、沙希はあえて静音の事を話には出さなかった。

 だから沙希は鈴音で適当に遊ぶと吉田と千坂に報告するように出来事を説明し始めた。もちろん静音の事を省いてだが。沙希が皆に説明した事は玉虫がどうやって憑依していたか、それと憑依されるとどれだけの力を発揮するか、それから憑依するためには御神刀で致命傷に近い傷を負わせる事を説明した。

 そんな沙希の報告を聞いた吉田が感想を述べてきた。

『沙希さんの話を聞く限りでは玉虫だけの力では人を殺す事は出来ないが、攻撃を加える事ができるという事になりますね。それに御神刀での傷もかすり傷程度なら憑依される危険は無いという事になりますね』

 そんな感想を述べた吉田に沙希は同意する言葉を返してきた。そうすると千坂がとんでもない事を言い出してきた。

『そうなると……憑依された相手を撃っても問題無いという事になりますね』

 突然そんな事を言って来た千坂に吉田は思いっきり反論する。

『いきなり何を言い出すんですかっ! 確かに殺してしまえば楽でしょうけど、相手は意識を乗っ取られているのと同じですよ』

 そんな吉田の反論に千坂は慌てて言い繕う。いや、正確には千坂の言葉が足りなかったのだから、千坂は慌てて言葉を付け足したのだ。

『いえ、そういう意味じゃなくて。手足を撃って動けなくしてしまえば問題無いと言いたい訳でして、決して殺してしまおうなどとは考えてませんよ』

 そんな千坂の言葉を聞いて吉田は無線の向こうでは溜息を付いているのだろうと沙希は想像して思わず軽く笑いそうになってしまった。そんな吉田が無線で言葉を返してきた。

『それなら、そうと先に言って下さい。誤解されるような事を言うのは千坂さんの悪い癖だと思いますよ』

 そんな事を言い出す吉田。どうやらこんな状況下で同じ目標の元に動いているのだから吉田にも千坂に対して少しだけ仲間意識が沸いたのだろう。だからこそ、そんな言葉を言ってきて、千坂も軽く笑いながら吉田の言葉を肯定するかのような言葉を発するのだった。

 そして沙希はふと思い付く。先程から鈴音が一言も発していない事を。確かに玉虫は沙希の前から姿を消した。次は誰かの前に現れても不思議ではない。それが鈴音の番だと思った沙希は少し声を荒げて鈴音に向かって問い掛ける。

「鈴音っ! さっきから黙ってるけど大丈夫なの?」

 もしかしたら鈴音の前に玉虫が現れたのではないのかと心配して言葉を発した沙希に対して鈴音からは真剣な声で質問が送られてきた。

『ねえ沙希、私達が一番最初に喧嘩をしたのが何時だったか覚えてる?』

 そんな質問をしてきた鈴音に対して吉田と千坂は無線の向こうで首を傾げている事であろう。けれども沙希には鈴音が何を言いたいのかが、すぐに分かった。分かったからこそ、沙希は意地悪な笑みを浮かべながら無線機に向かって言葉を投げ掛ける。

「鈴音の部屋にある本棚。その上から三段目の裏側」

『わーっ! わーっ!』

 沙希の意味不明な言葉に鈴音は慌てて声を荒げる。どうやら沙希が言った場所には鈴音の秘密が隠されているようだが、今はそれが問題ではなかった。だからこそ、沙希は少し笑いながら鈴音に向かって言葉を送信する。

「これで私が玉虫に憑依されていない事が証明されたでしょ。なんだったら、そこに隠してある物も言おうか」

『言わなくて良いっ! もう分かったから……沙希の意地悪』

 最後に拗ねたような言葉を送信する鈴音。そして沙希の言葉を聞いて吉田も千坂も鈴音が何を心配していたのかが分かったのだ。

 沙希の報告から沙希が御神刀からの傷を負っている事を自ら言って来ている。だからと言って沙希が玉虫に憑依されていないとは限らない。もしかしたら既に玉虫に憑依されて沙希はあえて、そのような事を言っているのではないのかと鈴音は心配したのだ。

 だからこそ沙希の意識がはっきりとしているかどうかを確かめるために。沙希にしか分からない質問をしたのだ。それがまさか沙希に鈴音の秘密がまた知らされていた事に鈴音は安心するのと同じく、沙希に何でその事を知っているのかを尋ねた。

「もちろん静音さんに教えてもらったのよ。なんなら私が憑依されていない証拠に他の恥かしい鈴音の話でもしようか?」

『しなくていいよっ!』

 沙希の言葉に鈴音の抗議が返ってくる。その事に沙希は思わず笑ってしまった。たぶん無線の向こうでは吉田も千坂も苦笑している事だろうと沙希は感じながら、鈴音との会話を続けた。

「けど鈴音、これで私が憑依されていない事を証明されたし、私が報告した事も事実だと証明されたでしょ」

『うん、ごめん』

「別に謝る必要は無いでしょ。私が御神刀から傷を負ったと聞けば当然の心配だからね。それよりも鈴音。さっきも言ったけど、玉虫は私達が全部の柱を破壊出来ないと確信している。それに対する対処法はあるの?」

 そんな沙希の問い掛けに鈴音はすぐに答えてきた。

『たぶんだけど……私は全部分っているのかもしれない。でも、それは私の推測で何一つとして証拠となる物が無いから、今はまだ何も言えない。けど……私が推測した最悪の展開どおりなら……ちゃんとした対処法はあるよ』

「そう……なら、そこは任せたわよ」

『うん、だから今は柱を破壊する事に専念して。もちろん吉田さんも千坂さんも。そして八本の柱が破壊された後、九本目の柱を破壊しようとした時には玉虫も本気で私達の妨害をしてくるはず。だから最後まで気を抜かないでください』

 そんな鈴音の言葉に吉田と千坂はもちろんだという意味の言葉を返してきた。そして沙希はというと。

「鈴音じゃないんだから、私はしっかりと役目を果たすわよ。鈴音こそ、しっかりとやりなさいよね」

『う~、沙希の意地悪~』

 そんな鈴音の拗ねた声が無線から聞こえてくると沙希は凄く安心する事が出来た。それは先程鈴音が言った言葉から沙希は察する事が出来たからだ。鈴音は既に……最悪な事態について覚悟を決めていると。

 だからこそ沙希はいつもの調子で返してきた鈴音の声に安心する事が出来たのだ。鈴音がそれほどの覚悟を決めているのであれば、沙希はいつでも鈴音と同じ傷を負う事が出来るのだと確信しているからだ。

 その事を鈴音は知らないのかもしれない。いや、知られてはいけない事なのかもしれない。どちらにしても、それは沙希の覚悟であり、沙希自身が負うべき覚悟と傷である。だから沙希は今は柱の破壊に専念するために、次の言葉を無線に向ける。

「それじゃあ、私は次の柱に向かいます。皆さんも気をつけて、特に鈴音はね」

 そんな沙希の言葉に鈴音は拗ねた返事を返してきて通信を終える事にした。そして沙希は無線機を仕舞いこむと、バイクにまたがる前に再び赤錆の空を仰いだ。

 ……やっぱり、私は卑怯だね。鈴音は最悪な展開を予想して覚悟を決めている。私はそれを告げる事が出来たのに、私の手で鈴音を傷つけたくないから言う勇気が無かった。やっぱり……私は卑怯だ。だからこそ、鈴音……今度は一緒に傷を負ってあげるから。だから鈴音、今は自分を信じて進もう。一緒に……どんなに傷ついても。

 そんな事を考えた沙希はバイクにまたがるとヘルメットをしっかりと締めてから、バイクを発進させて次の柱へと向かうのだった。



 う~ん、沙希……何かあったのかな? 鈴音はそんな事を考えながら道なき道を草を掻き分けながら歩いていた。どうやら鈴音は先程の通信で沙希の心に微妙な変化が生じていた事に気付いていたようだ。けれども沙希からそれを言ってこないので、鈴音はあえて聞く事はしなかった。沙希の事だから、その時が来れば言ってくれるだろうと信頼しているからである。

 そんな事を考えながら歩いているうちに、段々と草が無くなって行き、広い場所へと出てしまっていた。そしてそこは見覚えがある場所だった。

「ここって……平坂神社」

 確かにそこは平坂神社の片隅である。もう少し進めば本殿が見えてくるだろう。

 本来なら人目につく神社のように広い場所は避けるべきなのだろうけど、鈴音はここが平坂神社だと分かると、どうしても確かめずにはいられなかった。それは水夏霞の事だ。けれども水夏霞は危険である事は鈴音も充分に承知していた。

 なにしろ今回の首狩り殺人で最初の被害者は水夏霞の両親である。つまり水夏霞が玉虫に憑依されてる対象である可能性は大きい。それでも鈴音は水夏霞が心配になり、あえて鈴音は本殿に向けて歩みを進める事にした。

 その事がどれだけ危険かは鈴音にも分っている。けれども、もし鈴音の推測が当たっているなら水夏霞を助けなければ行けない。そう感じたからこそ鈴音は本殿に向けて歩みを進めたのである。まるで何かに吸い寄せられるように。

 そして鈴音が本殿が見える位置まで来ると思わず歩みを止めてしまった。なにしろそこには……本殿に向かって顔を俯けている水夏霞の姿があったからだ。







 はい、そんな訳で第三章はここで終わりです。

 それにしても……沙希……意外と恐ろしい手段を静音から教わっていたんだね。いやね、本文でも書いたとおりに絞殺による窒息死は、気道を締め付けられての呼吸困難ではなく、頚動脈を締める事による脳梗塞にも似た窒息死が多いと以前に聞いた事があります。

 まあ、そんな訳で今回はその聞いた事を元に沙希にあんな技を出してきたんですけどね。今更ですが……あれって……やりすぎると完璧に殺してたよね。まあ、その前に落ちるという形で失神するんですけどね。沙希はその落とした状態で止めた訳ですよ。

 まあ、そんな事はさておき、これで沙希の戦いも終わりました。そして、その後に沙希が思った事。それは沙希の過去に関する事であり、それは……咎では語りませんっ!!!

 ……いや、だって、それを語っている余裕が無いし、話的にも組み込む余裕が無いんですよね。だから最初から三部作と言ってるんですよ。そんな訳で沙希の過去は七海と動揺に三作目で語るので、咎が終わるまで忘れててくださいな。

 ……まあ、それでも沙希の過去についてはちょくちょくと出てくるかもしれないけど、咎では語らないので、あしからず。

 そんな訳で次の話をしましょう。いよいよ出てきましたね。水夏霞ですよ、水夏霞っ!!! というか巫女ですよ、巫女っ!!! 巫女属性を有している私としては自分の作品とはいえ巫女が出てくるとテンションが上がりますね。まあ、だから七海も巫女服を着て縁に登場していたのかもしれませんが……。

 そんな訳で第四章は水夏霞の話から入ります。そして水夏霞の口から語られる残酷な現実。鈴音はそんな水夏霞に対してどうするのか。そして第四章はどこで終わるのか。その辺を楽しみにお待ちください。

 まあ、第四章も出来れば三話で終わらせたいんですけど……また長くならなければいいな~。まあ、予定通りに三話で上がれば、もしかしたら七月中に上げるかもしれませんが、長くなったら八月には上げますので、それまでお待ちください。

 そんな訳で第四章は遅くなっても八月の頭ぐらいには上げる予定です。だがっ!!! 予定は所詮は予定っ! だから確定事項ではないっ!!! ……まあ、つまり予定通りに八月の頭に上がらなくても怒らないでね、てへっ。という事です。

 まあ、出来るだけ早く上げたいのですが……私はこの時期が一番苦手です。身体が暑さに慣れてない時期に一気に気温が上がると……死にます。というか死んでました。だから更新が遅れたんですけどね。そんな訳で、これからも何度か死ぬと思いますので、更新が遅れてもご容赦くださいね。というか、三度の飯よりこの時期が嫌いだっ!!!

 ……はい、意味不明な事を叫んだところで締めますか。

 ではでは、ここまで読んでくださりありがとうございました。そしてこれからもよろしくお願いします。更に評価感想もお待ちしております。

 以上、すでにここに書く事が無くなったっ!!! と叫んでみた葵夢幻でした。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ