プロローグ
少し肌寒い春の午後、あの店の扉を開けた瞬間、誰もがふっと「いつもの顔ぶれ」を探す。
小学校からの幼馴染たち。
年を重ねても、結婚しても、離婚しても、親になっても、そうでなくても、
何となくつながりが続いているのは、「絆」と呼ぶには少しだけ軽く、
「縁」と呼ぶには少しだけ重い、そんな関係だ。
——年に数回、誰かが言い出したら始まるランチ会。
みんなが揃うことは、もう随分とない。
それでもなんとなく続いているのは、たぶん、誰もが「比較される場所」を手放せないから。
幸せそうな顔をしながら、誰かの不幸を探す。
自分の選んだ道が正しかったと思いたくて、
選ばなかった人生を、遠回しに否定する。
誰かの「充実」は、誰かの「我慢」によって引き立てられるのだと、
無意識のうちに知っている。
けれど、沈黙の奥にはそれぞれの事情があり、
笑顔の下には言えなかった選択があり、
誰もが必死に、自分の「正解」を信じようとしているだけなのかもしれない。
それに気づいているのは、ただ一人。
あの日、誰よりも無邪気に笑っていた、あの子だけだった。
本当のことなんて、きっと誰も口にしない。
でも最後には、こう思うことになる。
「一番幸せだったのは——あの子だったのかもしれない」と。
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※この物語は、7人の女性が織りなす、笑って、刺さって、ちょっぴり苦い物語です。
最後の一滴まで、お楽しみください。




