005 黒竜の将軍と魔王の姉
天空が大きく裂け、巨大な黒い竜の影が空を覆い尽くした。
黒竜の将軍、ヴァルガス。背中に広がる深い闇色の翼が風を切り、目に見えないほどの重圧を放っている。漆黒の鱗は金属のように光り、氷のような鋭い目が、ダリウスを捉えた。
「久しぶりだな」
ヴァルガスの声は低く、冷ややかに響く。
かつてはダリウスの最も親しい友であり、盟友だったヴァルガス。しかし運命のいたずらか、彼は今や敵となり、魔王軍の将軍として立ちはだかっていた。
「今さら何を話すことがある?」
「お前の選んだ道がどうだったか、これから教えてやる。」
ヴァルガスの両手がゆっくりと動き、指先から暗黒のオーラが渦を巻いて放たれる。
ダリウスは覚悟を決め、剣を握りしめた。
ヴァルガスとダリウスの激しい戦闘が繰り広げられる中、突然、空の端から濃い霧が現れる。その中から姿を現したのは、魔王の姉、ルセナだった。
「フフッ、いい勝負してるじゃない、あんたたち」
背後の闇から無数の黒い羽根がひらひらと舞い落ち、その存在が別世界の不気味な空気をまとっていた。
「ルセナ!」
サラはルセナの姿に、すぐに反応した。
「久しぶりだね、サラちゃん♪」
ルセナは笑顔で、片手を軽く振る。
「やめるニャ! 私に恨みでもあるのかニャ!」
サラは顔をしかめ、腰に手を当てて睨みつけた。
ルセナは面白そうに口角を上げた。
「わざわざこんなところまで来るなんて、よっぽど暇なんだニャ!」
サラは軽く舌を出して見せる。
ルセナはその言葉に、面白がるように口元を歪めた。
「まあ、暇つぶしにはなるかしらねぇ」
「うるさいニャ! もう、あんたとの戦いは嫌ニャ!」
顔を赤くして怒ったサラは、両手を広げて拳を握る。
「でも、戦わなきゃいけないんだから、どんなに辛くてもやるニャ!」
「フフ……可愛いわねぇ、その意気込み」
ルセナは再び笑い、ゆっくりと歩み寄る。
戦場は水を打ったように静かになった。それは、これから始まる激戦の幕開けを告げていた。
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