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032 ニャんでもない一日

 サラは、猫カフェ『ニャンと心地よい時間』に足を運んだ。


 店内は、温かな陽光と猫たちのぬくもりで包まれている。


「おお、久しぶりだな!」


 駆け寄ってきたのは、ロシアンブルーのアズラだ。


「ちょっと大きくなったニャン?」


 アズラをでつつ、サラはほっと息をついた。


「イワシ食いすぎで最強だ!」


 アズラは尻尾をピンと立てて、自慢げだ。


「今日はどうした?」


 サラは少し考えて答えた。


「魔王を倒したけど……面白い話ではないニャ」


「えっ、倒したの?」


 アズラが驚いた目で見上げる。


「巻きこまれただけニャン」


 サラは肩をすくめる。


 その時、三毛猫のリリィがサラのひざにちょこんと座った。


「今日は大人しいね」


 リリィは耳をピクピクさせる。


「そうかもニャン。リリィはどうしたニャ?」


「私は考え事してたの」


 リリィはしばらく目を閉じ、にっこり笑った。


「今日はタマと競争するかも」


「へ?」


 店内を見渡すと、アメリカンショートヘアのタマが堂々と歩いてきた。


「今日は俺の『肉体派』を見せる日だ!」


 胸を張って宣言するタマに、サラは笑う。


「肉体派だったなんて、知らなかったニャ」


「体力には自信あるんだぜ!」


 タマは前足を高く上げ、ストレッチを始めた。


「さあ、披露するぞ!」


「ちょっと待ってよ!」


 アズラが慌てて叫ぶ。


「負けないぞ!」


「おお、アズラも参戦するニャ?」


 サラは二匹を嬉しそうに見守る。


 その時、店の奥からマンチカンのポンが歩いてきた。


「ちょっと待った。競争ばかりで楽しいのか?」


「え? ポンも一緒にやるニャン?」


「ゆっくり過ごすのも大事だと思うんだ」


 ポンは穏やかに答え、ふわりと伸びをして耳を揺らす。


「今日はお昼寝にしようかな、って」


 サラは笑ってうなずく。


「ポンらしいニャ。確かに昼寝が一番ニャン」


 そのまま寝転び、目を細めた。


「みんな、それぞれのペースでいいニャ!」


 サラは店内を見渡し、背もたれに体を預けた。

 最後までお読みいただき、ありがとうございました!

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