003 再会の時
異世界ラグナヴィア――無数の戦争と英雄たちの物語が刻まれた大地。魔王は滅び、表面上の平和が訪れたが、まだ癒えぬ傷跡が残っていた。
その中で静かに過ごすのは、ダリウス・エンディア。元魔王軍近衛騎士で、半竜の血を引く彼は、戦場で多くの命を奪い、その名を轟かせてきた。
だが、心を最も重く圧するのは、かつて深く愛した古代竜アリスティアの存在であった。強大な力を持ち、世界の創世を知る彼女は突然姿を消した。
その日も、ダリウスは沈黙の中、過去を背負っていた。
「知ってるニャン?」
サラの声に、ダリウスはわずかに目を上げる。
「どうした?」
「西の方で、アリスティアが目撃されたって噂ニャ」
過去の記憶が一気に蘇る。ダリウスは迷わず答えた。
「行くぞ」
彼らは西へ進み、荒れた大地を越え、古代の城跡や黒い森を抜け、思い出の地へ向かった。夕暮れ時、古びた村を通り過ぎる。
「中世の遺物が、まだ残っていますわ」
レイナが呟く。
「でも、なんだか落ち着くニャ。まるで英雄たちが生きた時代に戻ったみたいニャン」
サラが応じた。
やがて、西方の山々が姿を現す。かつてアリスティアと過ごした場所だ。
「ここだ」
ダリウスが告げ、古代竜の巣へと進む。ついに、その巨大な姿が目に入った。
古代竜アリスティア――大地と溶け込む威厳と神秘をたたえた存在。翼を広げ、天空に浮かぶその姿に、一行は息をのんだ。
「ダリウス……」
「アリスティア」
短い呼びかけだけで、二人は互いの存在を確かめる。
「何年ぶりだろうな」
「長い年月が流れたわ」
過去の痛みを抱えつつ、ダリウスは新たな未来へ歩き出す決意を固める。
ラグナヴィアの大地で、傷が癒え、再び道が交わる日を願いながら――。
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