002 破滅の前兆
<レイナ>
レイナが冷蔵庫の扉を開くと、目の前に異世界へのゲートが広がっていた。
時間と空間がねじれる感覚に包まれ、異次元の空間へと引き込まれていく。
やがて現れたのは、異世界の壮麗な景色。碧空が広がり、遠くには雪をかぶった高峰の山々がそびえている。
「いつもより、ずっと冷たい気がするニャ」
サラが呟くと、レイナも何かを感じ取ったのか、無言で頷いた。
その時、遠くから足音が響いた。ひとりの人物がゆっくりと近づいてくる。サラとレイナにとって、見慣れた顔だった。
「ダリウス!」
サラの顔に自然と笑みが広がった。
彼は元魔王軍直属近衛騎士。
鋭い眼差しからは感情が読み取れない。
「久しぶりだな」
淡々とした口調に、サラとレイナは思わず背筋を伸ばした。
「状況はどうニャン?」
サラが尋ねると、ダリウスは言葉を慎重に選びながら答えた。
「魔王軍の残党が、ゲートを使って人間界に攻め込もうとしている」
サラとレイナは驚きを隠せなかった。魔王軍が再び動き出すなど、想像もしていなかったのだ。だが、ダリウスの険しい表情が、事態の深刻さを物語っていた。
レイナが口を開いた。
「このまま放っておけませんわ」
ダリウスは息をつき、再び語り始めた。
「古代竜が、この問題を解決するために必要な力を持っている」
異世界で伝説とされる存在で、計り知れない力を持つ竜のことだ。
「どこにいるのですか?」
レイナが尋ねる。
ダリウスは瞳を閉じ、一瞬の沈黙を置く。
「場所は分かっている。ただ、簡単には会えない相手だ」
サラは何か気になる様子だった。
「でも、どうしてそこまで古代竜に頼るニャン? 私たちだけでも残党と戦う方法があるニャ?」
問いかけに、ダリウスは視線を逸らす。
「竜は……知り合いだ」
その表情に、昔の思い出が滲む。
「だが、長い間、会っていない」
ダリウスは胸の動揺を抑え、冷静に言葉を紡ぐ。
「過去はさておき、今は協力が必要だ。すぐに出発する」
「私たちも行くニャ」
ダリウスは何も返さず、ゆっくりと歩き出す。サラとレイナも後に続き、異世界の奥深くへと足を進める。
その先に待つのは、ただの強大な竜ではない。
想像を超える試練が、彼らを待ち受けている――。
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