019 アスヴァルの戦略
魔王軍の参謀、アスヴァルは戦局を見渡し、頭の中で状況を次々と分析していた。戦闘の裏で進む複雑な駆け引きも、彼の目は逃さない。
アスヴァルは、かなえを「仮の魔王」と呼んでいた。真の狙いは、彼女を依り代にして「魔王アスタロス」を復活させること。
アスタロス――すべての魔王の中でも最強とされ、その死後も恐れられた存在だ。表向きは死んだとされているが、魂は別の次元に封じられている。
アスヴァルは、かなえの暴走する魔力を利用して、封印を解こうとしていた。
冷ややかな目で戦況を見つめながら、心の中で呟く。
(サラが深く眠るほど、こちらが有利になる)
彼女が完全に回復する前に、アスタロス復活の儀式を完了させるつもりだ。
しかし、アスヴァルは違和感を覚えた。
「異世界帰りの人間界の勇者たち、何かがおかしい」
特に目立つのは、ダークエルフの勢力が押されていることだった。アスヴァルは信じられない思いで見つめる。
「……数もレベルもこちらが有利なはずなのに……」
外部からの圧力がかかっている可能性がある。
さらに、冥王軍艦隊が待機している事実。
冥王の力があれば、圧倒的優位に立てる。しかし艦隊が動いていないということは、「何かの引き金を待っている」ということだ。
アスヴァルは息を整え、決断を下した。
すべての駒が動き出すタイミングを見極め、次の指示を出す――それがアスタロス復活の鍵となるだろう。
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