017 再生の光
魔王軍の指揮官アスヴァルは、戦況を見守っていた。彼は瞑想にふけりながら、勝利するための「次の一手」を探している。
古代竜へと変貌を遂げたアリスティアは、口から凄まじい火炎を吐き出し、ダリウスに猛然と迫る。その火炎は、星のように輝き、ダリウスを飲み込んだ。
「くっ……!」
ダリウスは必死に魔法で防ぐが、炎は容赦なく彼を包み込む。体は次第に焼け焦げ、足元が崩れそうになった。
「アリスティア……!」
声は痛みで震え、息も絶え絶えだ。それでも彼は、アリスティアの心を取り戻すため必死に語りかける。
「こんなこと……するな、頼む! お前は俺の……!」
ダリウスは炎に包まれながらも、彼女の声なき声に耳を傾け続けた。
「俺たちは……まだ、やり直せるんだ! その力を、戦うために使わないでくれ……!」
その言葉が、アリスティアの心に深く響いた。だが、アスヴァルの支配が再び力強く迫る。
ダリウスの体が崩れ落ち、ついに力尽きる。
その刹那、アリスティアは自分の手を見つめた。そこに感じるのは、かつての無垢で優しい自分自身の心の残滓だった。彼女の心が完全に戻るが、ダリウスはすでに倒れていた。
共に戦い、笑い合った日々が脳裏によみがえる。彼はいつも、アリスティアを支えてくれた。彼の力強い言葉と温かい笑顔が、今や彼女の心の中で燃える希望の源となっていた。
「ごめんなさい……」
アリスティアは決意した。古代竜の力を使い、命を蘇らせる。
「私は、もう誰にも支配されない。あなたを取り戻すために、すべてを捧げる」
アリスティアの周囲に、古代竜の力が具現化した光の球体が現れる。それは、時空を越えるかのようにダリウスの体に吸い込まれていった。
ダリウスの体は次第に温かさを取り戻す。焼け焦げた皮膚が癒え、壊れた細胞が再生し、胸がゆっくりと上下し始める。
「お願い……目を覚まして……!」
ダリウスのまぶたがゆっくりと開き、彼女の姿を捉えた。
「アリスティア……?」
彼はアリスティアの手を強く握りしめる。涙が止まらない。
「……よかった……」
アリスティアは、声を震わせた。
「あなたを救ったのは、私の力じゃない。あなたが私を信じてくれたから」
ダリウスはその言葉を噛みしめ、静かに答えた。
「……ありがとう」
二人の間には、決して離れない絆が結ばれていた。
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