013 天星かなえ
かなえは魔王の力を手にした。
その力は、世界そのものを飲み込む勢いだった。魔王になるということ。それは、想像以上の重圧と覚悟を必要とする。かなえはそれを、痛いほど理解していた。
かなえの生まれは貧しかった。
父はアルコールに溺れ、暴力を振るい、母はそんな父を支えながら体を壊していった。二人とも、かなえを残してこの世を去った。彼女は、親戚にたらい回しにされ、施設で育った。
それでも、かなえは諦めなかった。どんなに辛くても、何かをつかむため、必死に生きた。そしてある日、テレビで見たアイドルに心を奪われた。
アイドルになる――それが彼女の夢になった。夢を追う道は想像以上に険しかったが、かなえは努力を重ね続けた。
幼いころの記憶も忘れられない。交通事故に遭いかけたとき、目の前に小さな子猫が飛び込んできた。車は急ブレーキで止まり、かなえの命は救われた。あの子猫がいなければ、今の彼女は存在しなかっただろう。
やがて、人生の転機が訪れる。
異世界に足を踏み入れ、新たな冒険が始まった。
生配信を始めると、世界中にその名は轟いた。魔王討伐の旅も、冒険の実況も、すべてが一大ブームになった。フォロワーは十億を超え、スポンサー契約、資産は百兆――それでも、かなえの心は満たされなかった。
孤独と虚しさが、成功の影に潜んでいた。完璧を求められ、期待に応え続ける日々。
でも勇者サラの輝きにはどうしてもかなわなかった。嫉妬と無力感が胸に渦巻き、彼女を追い詰めた。
そして、かなえは決意する。
魔王になることで、すべてを終わらせる――その力を手に入れた瞬間、ふと胸に問いかける。
「一体、私は何を求めてきたのだろう?」
力を手にしても孤独が残る。絆を失えば、自分自身も消えてしまう――そんな恐怖が、かなえを支配していた。
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