012 闇に堕ちたアイドル、魔王の誕生
アスヴァルの目前で起きた出来事は、予測をはるかに超えるものだった。
彼が魔王の命令を受けて送り込んだ十万の魔物が、星の光に包まれ、瞬く間に消滅したのだ。
「まさか……こんなことが……」
アスヴァルは言葉を失った。心の中で不安が膨れ上がる。
輝きの中から現れたのは、見覚えのある人物たち――サラとレイナ、かなえだった。勇者パーティの面々が一堂に会したのだ。
「どうして、お前たちが……!」
アスヴァルは口元を引き結び、無表情で笑みを浮かべた。
「魔王軍を一瞬で消し去るなんて、さすがですこと」
レイナの穏やかな声が響く。
アスヴァルの冷淡な目が輝き、内から放たれる精神的圧力が、周囲の空気を重くした。まるで、かなえの心を直接攻撃するかのように。
「勇者になれなかった理由、心の中にあるその弱さを、感じているのだろう?」
アスヴァルの言葉が深く刻まれる。
「お前は、ずっとその限界を抱えながら生きてきた」
かなえは動揺した。
心の中には、深いコンプレックスがあった。サラと違い、自分が勇者に選ばれなかった理由をずっと探していた。
「……私に足りないものは……?」
かなえは手で顔を覆った。
サラの強さ、勇者としての資質、それらは確かに素晴らしい。でも、かなえの心の中で、どうしても納得できなかった。
「サラのように、みんなを支えられる存在になれなかったからだ」
アスヴァルの非情な攻撃が、かなえの不安、怒り、そして心の闇を一気に引き出し、深く突き刺さった。
「それを逆手に取って、魔王になる力が手に入る」
かなえの心が大きく揺れる。彼女は感情を抑えることができなくなった。
「……私だって……勇者になりたかった!」
闇の力が一気に解放され、彼女の周囲を取り巻く空間が歪んでいった。
かなえの体から強大な魔力が溢れ出し、瞳が赤く光り始めた。
ついに魔王として覚醒したのだ。
心の中にあった闇が解き放たれ、新たな力で満たしていった。
「……私は……もう弱くない」
かなえは深く息を吐き、目の前に立つサラを見つめた。
「あなたを超える、私が新しい世界を作るんだ」
サラはその言葉を聞き、驚きと共に警戒心を強めた。
「どうしたニャ……」
「私は運命に頼らず、進むべき道を自分で選ぶ」
かなえの声は決意に満ちていた。
魔力の竜巻が天を貫く。
サラやレイナ、そしてアスヴァルさえも圧倒された。新たな魔王として目覚めたかなえは、恐ろしい力を持つ存在に変わり果てていた。
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