ココアと、問い掛け。【片想い/トゥルーエンド】
とある団の団長・カザマ。そんな彼に想いを寄せる、彼の部下で、幹部の地位であるアンナの話
初出【2023年1月25日】
それは、「世界征服」を掲げる、とある団の団長と、そんな彼の部下で、幹部の地位である女性の、日常の一コマ。
--ねぇ、カザマさん。コッチ、見てよ…っ
「カザマさん」
「なんだ? 」
「カザマさんって、」
レイラの事如何思ってるんですか? と出掛かりそうになる言葉を呑み込んで、ココア飲みますか? と尋ねると、あぁ、と返ってきたので、アンナは厨房に向かうと、ココアを作ってから再びカザマの元へと戻り、ソレを渡す。
「サンキューな」
そう言ってココアを受け取った男は、それを口に含むと、熱ぃな、と洩らしマグカップをテーブルに置いた。如何やら彼は、その厳つい見た目にそぐわず猫舌な様だ。
「そりゃ、出来立てですからね。冷ましてから飲んだら如何です? 」
そう言うアンナもココアを口に含んでるが、彼女は平気な様で、ゴクッ、ゴクッと少しずつ飲んでいる。それに、カザマはチッと舌打ちすると、
「そしたら美味さが半減するじゃねぇか。折角、アンナが作ったココアなんだ。美味しく味あわねぇと勿体無ぇだろぉーが」
と言う。
アンナは顔が熱くなるのを感じた。
--貴方って、ほんっと狡い…
あたしの気持ち、本当は気付いてるクセに、全く知らないフリして…。でも、こーゆう時に気を持たせる様な事言ってさァ
男の台詞に他意はない。そんなの、長年の付き合いから察する事が出来る。
--それでも…
つい、期待してしまうのだ。自分が作ったココアは“特別”なのだと、言われてるんじゃないかって。
「…そういやお前、さっきなにか言い掛けた様だがなんだったんだ? 」
「……えっ? 」
「ココア…は、咄嗟に出た問いだろ? 本当はなにが聞きたかった? 」
「………」
普段、鈍感なクセに、こーゆう時は何故か鋭い。それが、団を束ねるボスが為せるカリスマ性だからなのかは解らないが、今はそーゆう過敏さを発揮するのは遠慮してほしい。
「っ……解ってる、でしょ? 」
「…言葉にされなきゃ分からねぇな」
「っっ…」
カザマは、アンナの気持ちに気付いている。だが、彼女の気持ちは受け取れない。
何故なら、他に恋い慕う女性がいるからだ。
しかし、アンナからは想いを口にしてほしいとは思ってる。
……同じ気持ちを返すつもりが無いクセにだ。
「…カザマさんって、ほんっとデリカシーないよね? そんなんだから、レイラさんに相手にされないのよ」
少しでも男に反撃したくてアンナがそう皮肉ると、カザマは苦い顔をして、あの女性とはそんなんじゃねぇよ、と憂いを帯びた顔でそう返した。
そんな二人のやり取りを、少し遠い場所から見守る幾つかの影が。
「どう? どう? 姐さん、とうとう想いを告げたみたい? 」
「…いや。あの感じだと、まぁーたカザマさんに負かされた感じっぽい…」
「あ"ーっ! もう焦ったい!!! 俺がカザマさんに姐さんの気持ちを--」
「駄目よッ! それじゃあ、姐さんの為にならないわ!! 」
「っ…、でもっ……」
「…解ってるわ。私も…うんん。此処にいる皆、同じ気持ちなんだから…」
「あー…ほんと……」
「「「早くあの二人、くっ付かねぇかなぁ…」」」
「「「早くあの二人、くっ付かないかしら…」」」
部下達の願いを他所に、本日も件の二人の関係性が変わる事は無かった。
それから少しして、ある人物がカザマとアンナが束ねる団と、レイラ率いる、「生きる者全てが、幸せになる未来の為」を掲げるグループの暴走を止めに対峙し、その結果、二つの組織は壊滅する。
それがキッカケで、アンナの気持ちに蹴りがつく事になるのだが、それはまた別の話。
了




