これって、なに効果??【R15(手篭め寸前)/百合】
モテ男君に告白されて以来、私の日常は一変した。
男性に対するトラウマを植え付けられてしまうかもな話…。
みっちゃんという主人公の友達が、とにかく口が悪いです
初出【2023年6月25日】
私は、元々モテる方ではない。……だったのだが…。
学校の女子の過半数のハートを撃ち抜いてるモテ男君に告白され、私の日常は一変し、ーー現在。
「嫌ああぁっっ!!! 」
「待てええぇ!!! 」
休み時間がくる度に、男子生徒達から追い駆け回されていた。
理由は多分、男子達の、モテ男君への長年の嫉妬が、漸く晴らせる時だと、好きでもない私を我が物にして、モテ男君を精神的に追い詰めようという、全く身勝手なやり方なのは明白なのだが……流石に、毎日こーゆう事が続けば、しんどい。
……流されそうになる。
「あ"ーーっっ!!! もうっ…モテ男君フッて、誰かと……」
「アンタはそれで好いの? 」
「!?」
放課後。自分以外に人気の無い教室で、押し潰されそうになる現実から逃げたくて…。
でも逃げられない状況に、だったら受け入れてみようと思い、覚悟を決める為に自分に言い聞かせる様な事を口にした時、まさか独り言に問いが投げ掛けられてくるとは思わず、声がした方へ振り返る。
「アンタさ、好きでもない男と付き合うの? それってさ、相手に対しても失礼だし、アンタ自身も、自分を大事にしてないんじゃないの? 」
声を掛けてきた人物ーーみっちゃんは、はあぁ…と呆れたと言いたげにわざとらしく溜息を吐いて、私が座る席の前までくると、正面の椅子を引き出して、それの向きを此方に向けると、其処へ腰を下ろした。
如何やら、私の愚痴話に付き合ってくれるらしい。
「いや…でもさ……」
追い駆け回される度に、心臓がめちゃくちゃ鼓動して、偶に、追っ駆けてくる男の事が好きなんじゃないかな? って思う事がある。ソレを伝えると、みっちゃんは顎に手を当て、考え込む。
「つり橋効果…いや、違うか? でも、ドキドキする=その人が好きかも? と勘違いする現象に陥ってるわけよね…」
「うん…。でも私……」
「解ってる。追い詰められると、自分の気持ちが分からなくなっちゃうからね」
「………」
「…アンタはさ、もう少し、誰かを頼った方がイイと思うんだよね」
「………えっ? 」
予想してなかった言葉に、私は驚きで目を見開く。それにみっちゃんは、だってさ、と言葉を続けた。
「客観的に見て、これは異常な事なんだよ。如何して、アンタはこの状況へと追い込まれたわけ? 」
「えっ…えーっと……」
「他人に優しくする前に、自分を一番に優しくしなさい」
「わっ…私…他人に優しくなんか……」
「他人の気持ちを優先しがちな言動だから、気持ちの持って行き場が分からなくて、こうやって私によく相談してくるんでしょ? 」
……そう。今回は、みっちゃんに見つかって、話を聞いてもらっているが、普段は彼女の都合も考えず、私は事ある毎に、みっちゃんへ相談を持ち掛ける。
この件が起きてからは特に、ほぼ毎日といってイイ程にだ。
「ごっ…御免なさい……」
「謝るぐらいなら、自分を大事にしなさい、馬鹿ッ! ……自分の事を大事にしないで、自分よりもクソみたいな誰かを最優先にし、大事にしてるしのぶ…貴女自身を否定してる感じがして、見てて悲しいよ、私…」
「………」
みっちゃんはいつだって、私の言葉にしたいケド出来ない気持ちを引き出してくれて、それを口にしてくれる。
あの時だってそうだった。
モテ男君のせいで、男達から逃げ回る日常になってから一週間後ぐらい。
焦っていた事もあり、注意がちゃんと働いてなかったのだろう。ちょっとした段差に躓き、私は転倒した。
『っっ……いっ、たぁ…』
膝を擦りむいたかもしれないという不安とか、緊張の糸が切れたからなのかは判らないが、先程まで走っていた足に力が入らず、上手く立ち上がる事が出来ない。
『えっ…ちょっ…やだ…何で…ねぇっ! 』
『漸く、大人しく、話を聞いてくれる気になったか』
『!? ッ……』
なんで、ズボンのベルトを緩めてるんだろう?
なんで、チャックを下ろしてるんだろう?
話を聞くって、どーゆうイミだ、っけ…?
色んな情報が思考を巡って、キャパオーバーにより、なにも考えられない。ってか、考えたくなかった。
嫌な予感のする、現実から、目を背けたかったから…。
『やっ…、やだ…』
『大丈夫。君が大人しくしてれば、直ぐに済む事だからさ?』
ーーやだ……やだ、やだ、ヤダ、やだ、ヤダ、ヤダ、YADa………タス、ケテ…。ダレカ…ダレカ……
『てめぇの負の遺伝子を、此処で根絶やしにしてやるっっ!!! 』
『ぎゃあああぁっっ!?!!! 』
『!?』
男の悲鳴で、はっと地面に落としていた視線を上げる。
ズボンを下ろして、パンツ姿の男の股間に、直接誰かの踵が見えて、其処に蹴りが見事に決まったのだと、なんとなくだか判った。
女の私じゃ、あの痛みがどう云ったモノかは理解出来ないが、かなりの激痛である事は、想像出来る。
青ざめた顔の男は、その場に倒れ込む様に跪き、呻き声を上げながら苦しんでいた。
それにより、男の背に隠れていた、私を助けてくれた人物の姿を目視する事が漸く叶う。
『っ……みっちゃん!! 』
『…ったく。ヤバい野郎には、股間狙え、つったろ。馬鹿しの』
『……いや、でもそれだと、将来的に可哀想かなぁ、と…』
『馬鹿! お前の将来が可哀想な状況なら、そんなクソ野郎の将来を悲惨にした方が、ずぅーーっっとイイに決まってんだろぉーが、馬鹿!! 』
『馬鹿って二回言ったぁ! 馬鹿って言った方が馬鹿なんだよ!? 』
『馬鹿に馬鹿って言って、なにが悪いんだよ馬鹿! てめぇを大事にしねぇ奴を、馬鹿扱いして、なにが悪いんだよ、馬鹿! 』
『また馬鹿って言ったぁ!!! みっちゃん、貴女ねぇ』
『テメェ等……』
『『!?』』
『イイ度胸だな、ゴルァ? 覚悟は出来てんだろぉーな? あ"ぁ?! 』
『覚悟って、なんの覚悟だよ? お前の負の遺伝子が、完璧に、根絶やしになる覚悟か? 』
『ちょっ…!? みっちゃん、それ以上は……』
『上等だゴルァ!? その負の遺伝子とやらを植え付けて、孕ませてやるからな? そんで、優秀な遺伝子だった、って言わせてやるから覚悟しな? 』
『ハッ! 女を手篭めにする事でしか、孕ませられる状況に出来ないなら、やっぱり負の遺伝子保有者じゃねぇか。優秀な遺伝子保有者なら、男女問わず、自分の憂さ晴らしだけで他人をイジメたり、それで自分のいいなりにならなかったら、暴行働こうとか弱みを握ろうとしたり、イジメてた事実を反省する処か、更に誰かをイジメて罪悪感から目を背ける様な、時間が経っても、他人には言えない秘密を持たない奴だと思うケドな? まぁ、馬鹿になに言ったってアレか? ヤレるもんならやってみろ、バーカ』
『ちょっ、ちょっ!? みっちゃ……ぎゃっ!?!! 』
『リラックスしたろ? 私がリードするから、ちゃんとついて来い、しのぶ』
『!』
『てめぇ…好き勝手言わせておけば……俺は優秀な遺伝子の持ち主だああぁ!!! 』
男が本気で走って追っ駆けてくる。先程、私を追い駆けてきた時よりも速い…筈だ。
なのに、先程まで追い付かれる不安でいっぱいだったのに、全然、そんな気配を感じない。というか、逃げ切れる自信が湧いてくる。
前方に、私の手を引いて走る、みっちゃんが居たから…。
そんなやり取りがあった事を思い返していた時、
「ッ……!? 」
ーーなっ…、なに?
顔が、めちゃくちゃ熱い。
息が、上手く出来ない。
胸がめちゃくちゃ痛くて、それで……
「? …しのぶ?? 」
「!?」
心配そうに私を見つめるみっちゃんの顔を見た途端、この突如襲ってきた苦しみがなんなのか気付く。
ーー私…私……
「みっちゃん…」
「ん? 」
「私、みっちゃんが好き」
「…えっ? あ……えーっと……それは、」
「やっぱり、察しが良いね? …うん! そうなの」
もう、友達には戻れない。
それでも、想いを告げられずにはいられなかった。
気持ちを伝えない侭、【友達】として一緒に居られる程、私は嘘を吐くのが得意じゃないから…。
「……しのぶ。如何してあたしが、いつもアンタを気に掛けてたか解る? 」
「っ……友達だから、でしょ? 」
私にソレを言葉にさせる事で、遠回しにフってるのだと気付く。
ズルイな、みっちゃんは…。
「…そうね。友達だから……でも、只の友達だと思ってたら、あんな危険な目に遭いそうな状況だったら、私自ら助けに行くより、先生を呼びに行ってしまう。だから、間に合わなくて、アンタが悲惨な目に遭わせてしまう」
「? 危険な目って……」
「負の遺伝子クソ野郎。その後アイツから、迫られた事は? 」
「ないケド」
「そう、なら良かった…。………しのぶ。本当に、あたしで良いの? 後で、やっぱり好きな人が…とか、後悔しない? 」
「……それ、どういう意味? ってか、返事さえ、答えたくない、って事? 」
「違う…違うよ……あたしは…あたしじゃ……いつか、アンタが子供を欲しいって思った時、体の構造上、それを叶えてあげる事が出来ない…」
「!」
「そんぐらい…しのぶとの将来の事は、数え切れないぐらいに妄想してる。もし此処で、アンタを手に入れてしまったら、あたしは……もう、アンタが別れたい! って言っても、手放せる自信が、ない…」
「………」
初めて見る、余裕の無さそうなみっちゃんの顔。それに、心拍数が上がる。
ーーあぁ…可愛い……
「だから、その覚悟がないんならーー」
「逃がさないよ」
「……えっ? しの…ちょっ!? 」
机の上に膝を乗せて、しのぶの目の前までくると、彼女の両肩を掴み、その耳元へ、「逃がさないよ? 」ともう一度、念押しでそう告げる。
それに、みっちゃんの身体が震えてるのが振動で伝わってきて、不安定な体勢ながら、彼女を抱き締めた。
「好きだよ、みっちゃん」
「っっ………しの…でも、モテ男とは……」
「あんな自分で問題起こしたクセに、その尻拭いの出来ないクソ野郎と付き合うわけがないでしょ? 」
「………そう…」
「だからさ、みっちゃん……」
私の事を手放さないでよ、と耳元へ囁けば、暫しの間を置いて、みっちゃんが頷いただろう振動が伝わってきた。
了




