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12/15

湖の満月

 



 翌朝、私はいつもの服に着替えて廊下を歩いていると、庭を走るバルトがいた。


 鍛えているとは思っていたが、シンプルに走り込んでいたとは


 しかしよくよく見ると、少し離れた場所でタクトが筋トレしていた。親子だな……




 侍女に食事の席に案内されると、食堂にはヴィータ様だけだった。



「おはようございます。ルルシア様」



「おはようございますヴィータ様、皆さんはもうお済みになられましたか?」



「ええ、いつも朝早くに外へ出るのよ」



 困ったように笑うヴィータに、私も苦笑いで席について、朝食を頂いた。



「夕べはお休みになられましたか?」



「はい、お陰様でゆっくり休ませて頂きました」



「そうですか……。そういえば、ルルシア様には一つ伝えておきますね」



 最後に紅茶を共に飲んでいた時、ヴィータは四つ折りに畳まれた紙を私のティーカップに添えるように置かれ、それを手に取る前にヴィータは続けて



「昨日一人は押さえましたが、まだ他にもいるようです……そちらは我が家を出た後にご確認を」



 紙をズボンのポケットにしまい、私は改めて顔を上げると、ヴィータは何も言わず目を伏せていた。


 悲しげにうつるその姿は美しいが、彼女の心中を思うと複雑だった。



「本当に、ありがとうございました」



 改めてお礼を言うと、ヴィータは瞬きをした後、すっと席を立ち、私に深く頭を下げた。



「こちらこそ、領主や民に代わり心から感謝申し上げます」



 しばらくして頭を上げたヴィータは、貴族らしい笑みを浮かべて



「ルルシア様のお役に立てる事があれば、私共はいつでも力を御貸ししますわ」




 私はそれに対し、曖昧に笑って頷いた。










 準備を整えたレアンドロが急かすので、早めに屋敷を出ることになった。


 ロビーにはバルト、ヴィータ、タクトがして、後ろに侍女や従者が並ぶ中に、カールは居なかった。


 今朝のヴィータの表情を思い出したが、それを振り切るように深呼吸をした。



「世話になった。王都に来た際には王宮に寄ってくれ、歓迎しようと思う」



 レアンドロがタクトに挨拶してる間、バルトが近付いてきて、無表情で私の頭を撫でてきた。


 レアンドロに言われて、まだフードを被っていなかったから、直に撫でられて微妙な顔をしているとバルトがニヤリと笑う。



「大変だろうが頑張れよ」



 小さい声だったが、更に小さい声で続けて



「……俺も後で行くから」



 そう言い終わると手が離れ、バルトは元の位置に戻っていく。


 まさか旅について来るつもりかと思ったが、改めてバルトを見ると貴族らしくレアンドロと話をしていた。



 気のせいだと思いたいが……

 ズボンのポケットに思わず手を入れて、紙がある事を触れて確認しつつ、私は頭を左右に軽く振った。



「何をやってる。早く行くぞ」



 いつの間にか挨拶を終えたレアンドロから声をかけられ、私も軽く挨拶とお礼をしてから皆に見送られながら足早に屋敷を後にした。




 昨日の宿に戻り、買い物して揃えた荷物をカバンに詰めてから改めて町を出た。


 先に町の外にいたレアンドロは黒い馬と共に待っていた。



「宜しくお願いします」



 私はレアンドロと馬に声をかけて乗り、町を離れて走り出した。









 馬のいる旅はゆっくりだが歩くより早くて楽だ。


 今日は馬を休ませながらも日が落ちる前に村までたどり着くことが出来た。


 レアンドロ自ら村長に挨拶し、村の空き家を借りた。


 馬にエサを与えているレアンドロに、私は井戸で水を汲んでくると言ったら、レアンドロもついて行くと、馬用の空のバケツを持ってついて来る。




「……何をしているのだ?」



 ここの井戸も汚染していたので、石に浄化の魔術をかけて井戸に入れていると、レアンドロがそれを見て疑問に思ったらしい。


 この井戸の水は汚染している事と浄化を行った事を軽く話すと、驚きながらも改めて汲んだ水を見て更に驚いていた。



「確かに、綺麗になっているな……」



「レアンドロ殿下も分かりますか?」



「漂う嫌な匂いが消えたな」



 聖なる力を持っているが、スーラ同様にレアンドロも感じとったようだ。

 スーラは目視だが、レアンドロは嗅覚で分かったところは面白いけど



 別の井戸も同様に行う。

 今回は渇れた井戸はなかった。




 汲んだ水をレアンドロが2つ持ってくれた。こういうところは紳士だな。


 しかし家に戻ると、レアンドロから



「パンだけでは足らぬ。何か作れ……」



 私に何かやれと言いたいのだろうか?

 なんかソワソワしてるし。



「スープでも良いですか?」



「あ、ああ、それでいいだろう! 自分は馬の世話をしてくるからな!」



 と足早に家を出て行く。


 何だろう? スープ飲みたかったんだろうか?



 馬だったとはいえ疲れているのだろうな。


 私は持って来た材料と調味料で簡単な野菜スープを拵えた。



「うむ、悪くないな」



 夕食にレアンドロはそう言いつつ、表情は柔らかかった。

 シンプルな味だが、悪くなかったようで、一杯食べ終わるとすぐにおかわりしてくれた。




 日が暮れて、空き家の中でランプに火を灯し、レアンドロは地図を広げて道を確認していた。


 私はレアンドロに言われて、彼から少し離れた場所に厚手の布を敷き、その上で座ってカバンの中を整理した。


 そういえばと思い出し、ポケットから四つ折りの紙を出して広げた。

 ランプから遠く薄暗い中で見た内容を確認して、それをすぐに銀貨の入った袋に入れてカバンにしまう。



『 オクタビア

  ライオネル

  ランドール

  レアンドロ

  パトリシア 

  アリアドネ 』



 頭の中で復唱したが、意味が分からない。


 まず『オクタビア』については知らないし、聞いた事がない名前だった。


 『ライオネル』は正妃が産んだ王太子

 『ランドール』は表立って出ていない王子

 『レアンドロ』は側妃が産んだ王子

 『パトリシア』は正妃が産んだ王女


 継承権の順番のバラつきも気になるが、ここに国王の子どもの名が何故書かれているのか……


 そして最後に『アリアドネ』は、私の知る限り一人しか思い浮かばないのだが……果たして同一人物なのかも疑わしくなる。




 ヴィータか、またはバルトからだとすれば、何かのヒントをくれたのだろうが……グラジア領の事か?


 確かに王族が関わっていたのは事実だが、では何故それを二人は知っているのか?





 ああ……面倒だ。やめよう。


 これだけじゃ何も分からないわ。





 不貞寝を決め込み、私は横になる。


 厚手の布を選んで良かったなぁ……なんて考えながら目を閉じた時、横から声がかかった。



「もう寝るのか?」



 仰向けになり、顔をレアンドロのほうに向けると、声をかけた本人なのに驚いて目を反らした。



「少し、話をしないか? これからの事など」



 何を話すのだろうか、と黙って見ていると、レアンドロはチラチラこちらを見ながらも



「お前は、魔女アリアの使いでザビの町に行くのだろう?」



「そうですね」



「俺の目的は……気にならないか?」



「王族のお考えを問い質す事など……いち貴族の娘が聞いて良いことでは無いかと」



 というか、本当は巻き込まないで欲しいんだけど。



「お前のそれは本心じゃないだろう?」



「嘘などついてはおりませんよ」



「嘘偽りがないのは分かっている。私は昔から鼻が良いからな」



 何故ここで“鼻が良い”なの?


 あぁ、聖なる力のアレか



「ならば、そうなのでしょう」



「……何故、昔から王族から遠ざかろうとするんだ」



 ストレートな言い方だわ。


 有り難いけど、有り難くない



「王族は何故、私のような者に近付いてくるのでしょうね」



「それは、皆がお前を……ルルシアを好んでいるからだろう」



 未だに膨れ上がる自分でも分からない量の魔力……狙いはとても分かりやすいだろう。



 視線を外し、顔を天井に向けて黙っていると、レアンドロは言葉を重ねる。



「その魔力を求めている者もいるが、そうじゃない者も居るんだ。俺には魔力が見えないがルルシア自身を見ているつもりだ」



 だから何? 見た目の問題?


 レアンドロには私の何が見えているというの?


 私ですら……自分が見えていないのに



「……私を見て下さっているのですね。レアンドロ殿下は凄い方ですわね」



 見たければ勝手に見ればいい。


 好き勝手に動いて、人の気持ちなど分からない者の言葉など、私には意味の無いものでしかない。



「機嫌を損ねたのなら謝ろう。ただ信じて欲しい、私はルルシアの敵ではないと」




 あぁ、面倒くさい。本当に……



「それでは聞かせて下さい。レアンドロ殿下の目的は何でしょうか?」



 ゆっくり目を閉じて聞けば、レアンドロの声が少し近付いて聞こえた。


 私は気にせず、レアンドロの声に集中する。



「魔女アリアから、ルルシアから魔剣について学べと言われた」



 思わず目を開けると、レアンドロがランプを挟んだ手前で座っていた。


 真剣な表情を向ける姿は、普段の上手くいかなくて苛立つような顔とは違った。



 全てが嘘ではなさそうだが、信用は出来ない。


 アリアの意向も真意も分からないが、考えそうな事だなとは思った。



 ランドールの時にも思ったが、王族は魔剣についての知識が足りないのだ。


 しかし、魔力のないレアンドロにそれを教えたところで何になる?

 ただ誰かに伝える為にここまで来たの?



 ゆっくり起き上がりながらレアンドロと向かい合うように座る。





「レアンドロ殿下はそれを聞いて、どうなさるおつもりでしょうか?」



「兄弟に伝える。俺では魔剣は使えないからな……だが、兄上やランドールに伝えれば、きっとこの国を良く出来るはずだ」



「今、我が国は良くない……と言っているように聞こえますが」



「ルルシアが何処にいたのかは知らないが、王宮は今どちらに転ぶのかと揺れている。それは領地に貴族や商人には当たり前に知られているくらい皆知っている事だぞ」



「……国王陛下に何かあったのでしょうか?」



「あれは王では無い。厄災をもたらそうとする愚行者だ」



 拳を強く握り、怒りを露にする姿を、私は昔見た事があった。


 昔と同じ……レアンドロはいつだってこうなのだ。

 疑うことのない様は、真っ直ぐな男とはまた違う……

 方針のブレがあり、味方でいれば何処かで間違えて仲間もろとも痛い目をみるだろう。



 あんなにも慕っていた父親を、こうも見離せるのだ。怖い人だ。




「……魔剣について少し話しましょうか」



 一息ついてから、私は真っ直ぐレアンドロを見定める。



「魔剣の歴史は浅く、300年程前から始まっています」



「歴史書で読んだ事はある。初代国王のムグル王が統治した際に使ったとされたのが魔剣だったとあったな」



「民族同士の戦が続く中で、誰よりも力のある者が上に立つ……今よりも魔力を主軸とした時代で、ムグル王は極めて秀でていたとされていますね」



「その魔剣の力で戦の世を治め、人々が平等に住めるように、平和で餓死や病死のない豊かな土地を与えて下さった英雄であると」



「……レアンドロ殿下は、不思議に思いませんか? 一人の人間がそれを全て為し得た事を」



「一説には不老不死だったとあったぞ」



「では何故、今いないのでしょうか?」



「不老不死とは言え、毒や殺傷などで命を落とすこともあるだろう」



「それが原因で300年前にムグル王の時代が終わったとして、それ以降は誰が治めたのでしょうか」



「ムグル王の次はウルサス王だな。魔剣の中でも火を得意としていたとある」



「ウルサス王の時代は災害により作物が育たず飢餓が増えましたが。ウルサス王は即位して11年で退位し、アレクサス女王が継ぐと魔剣の力で災害を治め、平和な世を取り戻した……と、記載がありますね」



「それからは魔剣の力が優れている者が王についていたからで……おい、いつまで歴史書の話をする気だ?」



「申し訳ございません。もう少しだけ……では、いつから魔剣の力ではなく世襲制になったのでしょうか?」



「いつから……当然それは初代ムグル王の時代からだろう」



「レアンドロ殿下は、歴史書をいくつ読まれましたか?」



「何を言っている。王族の歴史書は一つしかないだろう」



「では……魔術師に関する歴史書が存在しているのはご存知ですか?」



「私は魔術師ではないから詳しくは知らぬが、そういうものがあるのは知っているぞ」



「はい、一般書籍として閲覧できるよう写しをとったものがありますよ。国立書籍館にお立ち寄りの際は是非ご覧下さいませ」



「ルルシアよ、話を逸らそうとしているな」



「これは失礼しました……さて、魔術においての歴史は長く、他国からの情報から読み解くに1000年以上はあると言われています」



「それも知っておる」



「無論、魔術の歴史書には王の記述もありますが、何分古いものなので詳しく書かれてはいませんが、ムグル王、ウルサス王とアレクサス女王の事も少しではありますが名前が載っています」



「当然だろう、だから何だと言うんだっ」



「魔術の歴史書には、ムグル王の子どもが誰であるか、ウルサス王とアレクサス女王の二人がどういう関係だったのか……どこにも書かれていないのですよ」



「……何?」



「明記していないのです。ウルサス王が後を継ぐように指名したのがアレクサス女王でありますが血縁があるとする記述や、ムグル王に至っては次代の王を指名したという事も書かれていないのです」



「しかし、王の歴史書ではっ……」



「それを書いたのは一体誰なのでしょうかね……魔術の書物は他国とのやり取りで得ている文献で、他国もまたそれを証拠として残していますが、王の書物は誰が……?」



「王族を疑っているのかっ!?」



「私ではなく……現国王陛下を疑っていらしたレアンドロ殿下にお聞きしたいのですよ」



「なっ!?」




「もし、その事を現国王や王太子であるライオネル殿下がご存知だとすれば……王族にとって今一番邪魔な人間は誰でしょうか」



 魔力量だけでいえば私な訳だけど、魔術の使い方については優れた者は他にもいる。




「ま、待てっ、兄上はルルシアを疑ってはいないはずだ!」



「現国王陛下はどうでしょうか?」



「それはっ……」



 押し黙るレアンドロに、私は視線を反らしてため息をついた。




「……陛下はずっと怯えていましたからね。私が王都から離れた時に喜ばれたと耳にしました。その様な企みはないのだ、と安心されたのでしょう」



 話ながら自分でも改めて皆の思惑に呆れてきた。


 出来る事なら私を遠い場所で留めたかった……上手く使うことが出来なければ人知れず葬ることも視野に入れて


 それを壊したのがアリアだ。

 楽しんでいるようにも見えるアリアだが、人を煽るくせに戦を好まないという矛盾した性格なのは知っている。


 だからこそ弱く力のない王族よりも、アリアは私を上に置けば皆従うし、それが一番自分にとってもいいとか思っていそうで恐ろしい。


 私は面倒事はごめんなので、関わりたくもないけれど。


 王族や貴族と違い、アリアは何処か、私を表に出したくて仕方がないようにも見える。

 



「私は王という地位など欲してはおりませんが、陛下や周りはどうでしょうか? 私が力を持って生きている限りその疑いは付きまとい続けるのでしょう……それでもレアンドロ殿下は本当に皆が私を好んでいると言いますか?」



「……少なくとも、私はそうだ」



「ありがとうございます。しかし違う者がいる限り、私の立ち位置は変わりませんし、信用しようとしても難しい……特に、王族に関しては尚更」



 やはり単純な男だな。


 これも簡単に信じてしまう……まぁ、これもあながち嘘では無いのだが




「申し訳ございません、話が大分逸れてしまいましたね。魔剣について話を戻しましょう」



「それを聞くに、魔剣は王族のみに使えるものではないと言いたいのか?」



「魔剣の力を引き出すのに血筋は必要なようですね。今ある王族の魔剣は王族のみが使えますから」



「今ある? ……まさか、ルルシアが魔剣を作ればルルシア自身が使えると……?」



「そして、私の血筋の者も使えることが可能になりますね」



「ルルシアだけではない。魔術師ならば誰でも作れてしまう……のか?」



「しかし問題の魔剣の作り方を誰も知らないのです。魔術の書物にも無く、他国にはその様な物は存在しない。それこそ我が国の王族以外は」



 レアンドロは安心したのか、肩を撫で下ろしていた。信じるのが早すぎるよ。



「もう一つ。では何故魔剣の事を王族ではなく私に聞きに来るのか」



「魔女アリアはルルシアが知っていると言っていたぞ」



「……昔、アリア自身が王族に伝えていた事は知っていますか?」



「あぁ、しかし自分が教えた事で悲劇が起こったから……ルルシアに託したと言っていた」



 再び彼の目をじっと見つめると、レアンドロはたじろぎながらも姿勢を正し、視線を逸らさずに聞いていた。



「私はアリアから、魔剣について話を聞いた事はありません。それこそお互いに口にすら出した事もなかったのですよ」



「それは、誠かっ?」



「私が魔剣の知識を得たのは学院の間に書物から学びました。なので魔術学院の教師や生徒、卒業生に至るまで書物庫を利用していれば知る者は沢山いるはずです」



「では、何故魔女アリアは行けと言ったのだ……?」



「分かりません。アリアは王族に教える気がないのか、教えるのが面倒だからか、それとも元々あまり知らないから適当に私に押し付けたのか……私には彼女の考えは全く読めませんので、これも憶測でしかありませんが」



 悔しそうな顔をしているが、何処か納得している様子だった。


 やはり彼はそのまま受け入れてしまう。

 この人は大丈夫だろうか?



 こういうタイプも面倒だからな……




「今日はここまでにしましょう。とても眠いのです」



「……そうだな」



 私は再び横になり、目を閉じた。

 そのまますぐに眠りに落ちた。



 



 

 朝早くに目を覚ますと、レアンドロは背を向けていたが寝息が聞こえ、寝ているようだ。


 私は起こさないように外へ行き、まだ朝日が昇ったばかりの冷たい空気を取り込み、バケツを持って井戸に向かった。



 井戸の水を確認し、綺麗なのを確認してから水を汲んで馬小屋に行く。


 端の方にいた黒い馬が、私が来たことに気付いていたが、興味無さげに一瞥しただけだった。


 私は馬の前に水のバケツを置くが、馬は飲もうとはしない。




「君は頭がいいね」



 私に対しての態度に満足しながら、私は馬小屋から出た。



 村の近くにある畑を見渡しながら散歩しつつ、私は心の中で術式を組んで唱え、畑がキラキラしていく姿に満足していると、村から年老いた男が鍬を持って歩いてきた。


 お爺さんは私に気付き、優しい表情で近付いてくる。



「おはよう。あんたは空き家に泊まってる旅人の嬢ちゃんだな」



「おはようございます。泊めて頂いて助かりました。いきなりの滞在でご迷惑をおかけしました」



「いいんだよ。この村に立ち寄る者は商人くらいなものだが、村長はたまに来る旅人をよく受け入れているからね」



 それを聞いて、私は気になって



「最近立ち寄った方とか、泊まられた方はいらっしゃいましたか?」



「立ち寄る者は数日おきにいるが、泊まった者となると……一月前じゃな」



 最近とは言えないが、一月前か……


 汚染効果の持続がそれ程持つものなのか、或いは怪しまれないように立ち寄るだけにして魔術をかけたか……



「あの……変わった人とか来ていませんでしたか?」



 どういえば分からなくて雑に聞いてしまったが、お爺さんは気にすることなく



「ああ、珍しい人なら通っていたよ。ラシュエラ教の服を着た者が団体で来ていたな」



 それってローウェンの所属している教会ね。


 でも団体って……



「確かに珍しいですね。巡礼でしょうか?」



「村や町の井戸水の調査と言っていたよ」



「井戸水……ですか」



「知らないか? 近隣の村や町でも井戸の水で腹を壊す者もいるんだよ。うちの村も何人かなったが、教会の人間が言うには井戸の水が良くないって話らしい」



「噂は聞いていましたが、この辺りもやはり良くないんですね。まさか教会の方がわざわざ調査に回っているとは知りませんでしたが」



「原因はまだ分かっていないが、一応最後には聖職者とか言う人が力を奮っていたが、何も変わらなかったがね」



「そうでしたか……改善する為に魔術師が来たりは?」



「村長が領主に頼み込んでいるらしいが、いつになるのやら」



 この村ならまだバルトたちの領地だが、バルトたちも色々動いているから難しいかもね。


 今回、私が浄化をかけたとはいえ、いつ塗り替えられるのか分からないし、早いところ原因が分かればいい。


 今となっては魔剣による浄化は期待出来そうにないだろう。

 ランドールにしろライオネルにしろ、それが出来るようになるまで待っていられないし



 それに、今の王族にその力が使えるのかすら怪しい。

 



「旅してるなら嬢ちゃんも気をつけな。この先の村や町も同じようなものらしいぞ」




 私は頭を下げてお礼を言い、再び村に向かって足早に戻った。






 井戸の近くには、既に何人か水を汲みに来ていた。

 汚染のない綺麗な水を注ぐ姿に、私は安心しつつ、泊まっている家に戻ろうとしたら、後ろから急にローブを引っ張られた。


 後ろを振り返れば、小さな男の子が不思議そうに新緑色の目で私を見上げていた。



「な、なに?」



 私よりも頭一つ分低い身長の男の子は黙ったままで答えなかったが、その男の子の後ろから新たに私と同じ身長の女の子がやってきて、躊躇うことなく男の子の頭を叩いた。



「ライタっ! 何してんの!」



「いでっ!?」



 我に返ったようで、私から叩いた女の子に目を向けて睨み付けた。


 女の子は腕を組んで見下ろしながら




「可愛いからって、ちょっかいかけるんじゃないよ!」



「なっ!? 何言ってんだよ! こんなやつ可愛くねぇし!」



 ワーワー騒いでいるのが目立って来たので、私は逃げようとしたが、男の子はまだ私のローブを掴んでいた。


 私が逃げようとした事に気付き、男の子は更に強く握って引き止めた。



「おいっ、お前怪しいな! さては井戸の水を荒らしに来たんだろ! いでっ!?」



 再び女の子から叩かれていた。


 女の子は申し訳無さそうに私に声をかけた。



「昨日来た旅の子だよね? 弟がごめんね」



「い、いえ……」



「姉ちゃんやめろよ、そんな怪しいやつ……いで!?」



「怪しいのはどっちよ! 早く離しなさい!」



「やだね! コイツはウチに連れてくんだ! 俺が“じんもん”するんだ!」



「バカ! いい加減にしないと次はゲンコツだよ!」



「お前ウチに来い! 素直に来れば朝めしくらい出してやるぞ! あだっ!?」




 ポカポカ叩かれながら離さないのが可哀想で、私は苦笑いで男の子と女の子に



「朝ご飯はいりませんが、お話だけでいいのなら伺わせて下さい」



「よしっ! 俺について来い!」



「このバカ! ごめんね、狭いとこだけど来て、朝めしも出すからさ」




 二人に連れられてついて行く。


 男の子の名前はライタ

 女の子は姉のカイナ


 カイナから自己紹介をされるが、ライタはずっと私のローブを掴んだまま黙ってついてきた。






 二人の家に着くと、昨日挨拶した村長の家だった。


 驚きつつ、カイナは気軽に扉を上げて招かれ、後ろからライタがグイグイ背中を押されながら家に上がった。



 村長の家だからか、他の家よりも大きく、中も広かった。


 大きなダイニングテーブルの端の席に座らされると、ようやくライタがローブから手を離したが、ライタが私の向かいの席に座ると、じっと見つめながら



「フードを取れ!」



「こらっ!」



「いでっ! カイナ、何度も叩くな!」



「あんたの態度が悪いからでしょ!」



「顔を隠してんのは怪しいだろ!」



 また言い争い始めたので、私は渋々自らフードを取る。


 するとライタは目を見開いて黙り、カイナは目を輝かせて



「綺麗な子じゃないか! 銀髪なんて初めてみたよ!」



 珍しいといえば珍しいのかな?


 私としてはハインツの髪のほうが珍しい思うけど。



「目立つ色なので隠しているんです」



「勿体無いけど、旅してるならその方がいいよね! 目の色も綺麗だし、あんたモテるだろ?」



 苦笑いで流していると、急にライタが椅子の上に立ち上がり、見下ろしながら



「今日から俺の嫁にしてやる!」



 堂々と宣言されたが、私が話すよりも先にカイナがライタを後ろから羽交い締めにして椅子から下ろし



「ちょっと来なっ、頭冷しに行くよ!」



「ぎ、ギブっ! ギブだってっ!」



「ルルシアはここで待ってて、後で母さんが来るから」




 二人は部屋から出て行くと、私だけ残されて落ち着かなかったが、数分も経たないうちに部屋の扉をノックする音がして、私が促すと扉から一人の女性が出てきた。


 私を見て少し驚いていたが、すぐに優しく笑みを浮かべて見せた。



 女性をよく見ると顔はやつれ、身体が細い。

 明らかに体調が良くないようだが、女性は頭を下げて



「旅のお方、私はカイナとライタの母のイベラと申します。息子が失礼して申し訳ございません」



「いえ、突然訪問してしまい、申し訳ございません。私はルルシアと申します」



「こちらこそ、息子の我が儘に付き合って頂いたのですよね」



 再び苦笑いで流すと、イベラも困ったような笑みを浮かべた。


 隣の席に座ってもらい、私はイベラを見る。

 その儚い姿に、私はおもむろに聞いてしまう。




「体調が宜しくないようですね。やはり井戸の水からですか?」



「あぁ、やはり他でも同じような方を見られましたか……私も恐らくそうだと思います」



「体調を崩されたのはいつからですか?」



「半年程前からでしょうか」



 一応、浄化はしているから、しばらくすれば体調も戻るだろう。


 しかし、この体調不良も人によりけりだな。

 元気な人もいれば、凄く影響されて体調を崩す人もいた。



 元々の身体の丈夫さなど、色々要因はあるだろうけど……



「やはり腹痛ですか?」



「いえ、私の場合はお腹等は壊していませんが食欲がなく、身体が時より痛むのです」



 ん? それは初めて聞いた症状だな。



「少し、お身体に触れても宜しいでしょうか?」



「え、ええ……どうぞ」



 私はイベラの両手を掴み、そこから魔力を流してみる。


 魔力が全くない者ならば反応はないが、触れてみて分かったがイベラは微量ではあるが魔力があるようだ。



 流して循環させようとすると、所々流れを止める何かが邪魔をしていた。


 その何かを分解して調べてみれば、あの井戸の水に含まれていた黒い藻のようなものが解れて流れて行く。



 私の中にそれが入って来たので、私は一つ一つイベラに流れないようにした。


 イベラの塞き止める全てを私に移してから、私は両手を離した。



「……何か、分かりましたか?」



 おずおずと聞くイベラに、私は席から離れて開け放たれた窓に向かって、思いっきり口から息を吐き出した。


 見えている者であれば、私は今、息と共にイベラの黒い藻を吐き出したのだが、魔力が微量のイベラでは見えないだろう。



 再び席に着いてからイベラに安心してもらえるように微笑みかける。



「原因は分かりませんが、良くなるように“おまじない”をかけました」



「ありがとうございます……ルルシアさんは聖女様のようですね。おまじないが効いている気がします」



「見た目だけはよく言われますよ。ですが聖女のような力は私にはありませんが」



「それでも私は癒されましたわ。ありがとうございますルルシアさん」



 弱々しく微笑むイベラに、私も苦笑いで返した。


 イベラの塞き止めを取り除いたが、身体に影響していたので恐らく回復まで時間がかかるだろう。


 普通ならば下痢や嘔吐で身体から排出出来れば問題ない。

 だけどイベラのように魔力が少しでもある身体には滞留して悪影響を及ぼす……魔力のある者にとっては飲み続けてはいけないもので、体調を崩すもの。





 それから私は戻ってきたカイナが持ってきたスープとパンを頂いた。


 村長は既に畑で仕事しているようで、私はカイナたちと食事させてもらう。



 本当は断わろとしたのだが、ライタが「食べないなら食べさせてやる」とスプーンで食べさせようとしたところに、カイナが再び叩き、イベラが謝ってきたので、私は有り難く頂くことにした。






 ようやく泊まった家に戻ると、レアンドロは明らかに不機嫌で私を睨んでいた。



「どこへ行っていたんだっ、心配しただろう!」



 何だかライタと変わらないな……なんて思いつつ、私は頭を下げて謝る。



「全く、子どもではないんだぞ、うろうろするな」



 ああ、この人をカイナに叩いてもらいたい……なんて不敬な事を考えながら、私の口から再び謝ってやり過ごした。










 村を出て、再び旅を続けた。


 相変わらず馬は私に懐かないが、レアンドロの馬だからか、ご主人様を好きなようで頭をすり寄る姿を度々見せていた。


 そんな馬の様子に、私はますます好感がもてた。




「何をニヤニヤしている」



「すみません。頭のいい馬だなと思っておりました」



「当然だ。我が愛馬のグレンデールは国一番の名馬なんだぞ、かの有名なアデルランの父と母のアネッサの息子で……」



 レアンドロによるグランデールについての話は長く続けた。


 別に聞きたくはないが、凄い血筋の馬だってことは分かったが……馬は馬だ。



 こんな考えだから、あの馬も私に懐かないのだろうと思う。



 馬に乗っている間も話は続き、私はレアンドロの前に乗りながら適当に返事をすれば



「おい、聞いているのか!」



「聞いておりますよ」



「なんだその態度は、お前から聞いてきたのだろうが!」



 私は聞いておりません。褒めただけです。


 もうレアンドロの前でこの馬を褒めるのは止めようと、心に決めた。










 今日は村や町にはたどり着けないというので、野宿する運びとなった。


 途中で小さな湖があるらしく、近くに狩猟小屋があるかもしれないからと、そちらに向かう。





「うむ、綺麗なものだな」



 レアンドロは満足気に湖を見ていた。


 小さな湖というより、池に近い気がした。



 私は辺りを見渡して、狩猟小屋を発見してレアンドロに声をかけたら



「お前は情緒というものが足りないな」



 まずは湖の感想を言い合いたかったようだが、私は面倒だと思いつつ



「綺麗な水質ですね。きっと馬も喜んでますよ」



「馬ではなくグランデールと呼べ! そなたはいつもそうだぞ!」



 それから再びグダグダと私の説教が始まり、私は右から左へ受け流しながら素直に聞いている姿勢をとった。






 日が暮れて、今日も要求されたので私がスープを作り、それをおかわりしたレアンドロは満足そうに



「悪くないぞ。また俺の為に作れ」



 そう言うので、私は頷いておいた。


 スープを作るだけなら苦ではないし、私も馬よりも何もしてないのが居たたまれなかったし



「今日は、満月だな」



 外で食器を洗ったりして片付け終わると、レアンドロはソワソワしながら話しかけてきた。


 夜空を見上げると、星よりも煌々と光る月明かりが湖一面を照らしていた。



「あぁ、そうみたいですね」



「……お前は、感情が欠損しているな」



 いい雰囲気を作り出したいのか、酔いしれたかったのか知らないが、相手を間違えていますよ王子様。



「満月も湖も、私には今まで身近にありましたし……もっと美しい景色を私は知っていますから」



「全く……それならば、ここより美しい景色とやらの場所に俺を連れて行け」



「高貴な方をお連れ出来るような場所ではありませんよ」



「ならば、俺が廃嫡すれば連れて行ってくれるのだな」



「……。え?」



 思わずレアンドロのほうを振り替えれば、悪戯した子どものような顔でニヤニヤしていた。


 急に何を言い出すんだか……


 呆れながら私は視線を逸らして、満月が映る湖面を眺めた。




「魔力がない時点で俺は始めから王位を継げぬ身だ。今更廃嫡しても変わらないだろう」



 いや、変わるでしょうよ。

 廃嫡したら王宮どころか王都にも居られないし、貴族ですら無くなる可能性もあるのに……何を言ってるんだこの王子は


 尊大な態度だって王族だからこそ許されるのだ。それも村長の小さな息子のライタとも違う。




「そうだな……ルルシアが俺を婿に迎えてくれ。そうすれば俺も自由になれるな」



 更に、何を言っているんだこの王子は


 ため息をついて、私はレアンドロを見上げれば、彼は満月をただじっと見つめたままだった。


 表情はどこか物悲しく、何か諦めているような雰囲気を感じた。



「なんですか……私を口説く作戦ですか? 王族の話など信用できませんよ」



 いつものように聞き流すことはせず、あからさまに言ってみれば、レアンドロは笑いながら




「ハハハッ……バレたか、残念だ」



 なんて返してくる。


 面倒な人……本当に、面倒だ。




「ルルシアよ。頼みがある」



「なんですか」



「旅の間だけでいい。俺の事をレアンと呼んでくれないか?」



「我が儘な方ですね」



「今はまだ王族だからな」



「そうですね。気が向いたら呼びますね」



「全く、そなたは……不敬極まりないな」



「よく言われます。特に、レアン様から」



「え?」



 こちらを見る前に、私は顔を戻した。



 手前の湖に映る私と、どころか落ち着きのないレアンドロの姿は、風に靡いて時より揺れていた。



「……月が綺麗だな……」



 近くで静かに言うレアンドロに、私は再び満月のほうに視線を向けた。




「今後、これより綺麗な月を見る事もありますよ」



「どうだかな……俺は今この月で十分だよ」



「三日月も綺麗な時がありますし、月のない夜も美しいですよ」



「移ろいやすいな、少しはこの満月に浸れないのか」



「私はそういう人間なんですよ。真っ直ぐなレアン様と違うのです」



「なっ……お前は、そういうところだぞ! これだから魔女は苦手なんだ!」



 はいはい、どうぞそのまま嫌って下さい。


 私なんて、湖に映る月でしかないんだから。




「さぁレアン様、今日はもう寝ましょうか」



「だからっ! ……本当にお前はっ」



 まだ何か言っていたが、気にせず狩猟小屋に戻り、私はさっさと床についた。



 ずっと聞いてたら朝になってしまう。


 私は眠いのだ。寝かせて頂きます。









 目覚めたら、まだ薄暗い夜明け前だった。


 レアンドロは仰向けに姿勢正しく寝ていた。

 やっぱり陛下そっくりだな……



 物音を立てずに外に出て、私は湖から水を汲んで顔を洗った。


 ちゃぷちゃぷと水の音だけが響く中で、後ろから土を踏む音がした。


 近付いてくる。


 ゆっくり振り返ろうとした時、顔の横に現れた刃物に目が行く。




「……久しぶり」



 いつの間にこんな早く近付かれたのか……


 そしてこの声に聞き覚えがある。それも最近聞いていた男のものだ。



「ようやく追い付いたよ……一体どこまで行くつもり?」



 振り返えらなくても相手は分かるが、私は身体を動かさず黙っていることにした。




「魔女アリアが、誰と……何処に行くを指示したのか教えて?」



 向けられた刃先に、力が流れているのが分かる。これは魔剣だ。


 何故、彼が私にこんな事をしているのか分からないけど、ずいぶんと焦っているようだ。



 ずっと違和感があったのだ。

 王族でありながら彼だけが、王族らしからぬ性格だった。



「返事してよ、ルルシア」



「……おはようございます。ランドール様」



 挨拶すると、刃先が近付き、私の首元間近まで近付いてきた。



「何で僕を置いて逃げたの?」



「アリアの指示です」



「旅の仲間よりも大事なの?」



「私はアリアに従っています」



「君さ……おかしいよ。簡単に仲間を裏切るなんて」



「アリアを裏切れませんから」



 刃先が首に触れた。


 朝の冷たさが移ってひんやりしている。


 顔を洗っていたせいで、フードをとっていたからな……仕方ないよね。




「もう一度聞くよ。誰と、何処に行くの?」



「レアンドロ殿下と、ザビの町に行きます」



 素直に答えたが、刃先が離れることはない。


 ただ少し震えているのが刃先から伝わる。



「魔力無しと向かう意味がある訳ないよ。何もないザビの町に行くなんて信じられないな」



「嘘かどうか、レアンドロ殿下に聞かれてはいかがでしょうか」



「……あの小屋に居るって事?」



「お疲れのようで、まだ休んでおりますから時間を改めて……」



「そんな事はどうでもいいよ。僕が知りたいのは魔剣についてだよ」

 



 随分と焦っている様子だった。


 私が逃げたことよりも、ランドールは魔剣のことが気掛かりのようだ。



「ランドール様は、アリアから何かお聞きでは……」



 ぐっと刃先が首に食い込んできた。


 しかし、刃はそれ以上進まない。

 まるでそれが刃物ではなく、ただの木刀のように、私の首を傷付けることすら出来ないのだ。



「くそっ、化け物めっ! なんで切れないんだっ!?」



 声を荒くして焦っているが、諦めずに刃先に力を入れて、前後に揺すっていた。



「魔剣について聞かれていましたね。では少し話しましょうか」



「黙れっ、どのみちお前から大した情報は得られないだろっ!」



 信じれないよね。うん、そりゃそうだ。



 私の後ろから、ガタっと物音がした。


 すぐに誰かが私の後ろまで走ってくるようだが、その足音は二人分で、ランドールの刃先が離れた。



「遅れてすまないっ、大丈夫かっ?」



 振り返れば、そこにはレアンドロが私を背にして剣を構えていた。


 大剣と違って細い刃に、短剣よりも長いそれが朝焼けによって眩しく輝いていた。



 私はレアンドロの後ろから顔を覗かせて見ると、そこにはランドールが地面に転がり、それを押えるように上に乗っているガルムは、動けないように羽交い締めしている。


 二人の様子を見ていると、どうやらランドールの独断行動らしい。



「何やってんだよっ、ルルシアに斬りかかるなんて聞いてねぇぞっ!」



「離せっ、護衛騎士の分際で主に楯突くなっ」



「俺の主はライオネルであって、お前ではない! 俺は俺らしく動いていいからと言われて付いてきただけだっ」



「くっ、兄上も使えないヤツを寄越しやがってっ」



「ライオネルを侮辱するなっ!」



 二人のやり取りにレアンドロも呆気にとられて、私をチラチラみながら「どうする?」と聞いてくる。


 貴方の兄弟でしょうが、貴方が何とかしてくれ。



 すると魔力の気配に、そちらを注視すれば、走りながら遅れてやってきたハインツの姿が見えた。


 何故ここに? とは思ったが、彼は私とレアンドロの姿に驚きつつ、ランドールとガルムの姿に更に驚いて慌てていた。



「……痴情のもつれかなぁ?」



「違うだろっ!」



 ガルムが突っ込みを入れていたが、ハインツはレアンドロとランドールの真ん中に立ち止まり、改めて状況を確認していた。



「揉めているのは確かだねぇ、そして殿下が二人……ルルシアを取り合ってる?」



「強ち、それも間違いじゃねぇな」



「ふーん、やっぱりルルシアは恋泥棒の魔女だねぇ」



「だから痴情のもつれではないと言っているだろう!」



 レアンドロまで声を荒げて参入していた。



 とりあえずまだ逃れようと暴れるランドールをハインツが縄で縛り、木にくくりつけた。


 レアンドロやハインツ、ガルムが話している間に、私は朝食の用意を始めた。





 コーンのスープを、私は小さい鍋に火をかけて木ベラでくるくる混ぜていると、レアンドロがやってきて



「こんな時に何をしている」



 不機嫌そうに言うので、私は気にすることなく



「また作れ、とレアン様が昨日言っていたではありませんか」



「言ったが……まぁいい、食べながら話をしよう」



 出来たスープの鍋をランドールたちの近くに持っていく。



「まずは朝食をとるそうです。ハインツとガルムも器出して」



「ルルシアの手料理ぃ!」



「腹減ってた。器だな、持ってくるわ」



 近くに置いていたようで、直ぐに荷物共々持ってきた。



「レアン様も早く器下さい」



「何故、この者たちまで……」



「いいじゃありませんか。沢山ありますし」



 まだ何か言いたそうだが、私は気にせず出された器にスープを注ぐ。



「ランドール様の器も……」



「誰が食べるかっ!」



「そうですか……じゃあ、パンは各自で用意して下さいね」



「はぁーい」



「ハインツ、明らかに俺らの時と態度違くね?」



「私はルルシアの、愛の下僕なんだぁ」



 ハインツの言動に、隣にいたレアンドロは私に同情するように憐れみを向けていた。



 四人でランドールを見ながら朝食をとる。


 

「ランドール様、何も食べないのは良くないですよ?」



「うるさいっ、放ってお……むぐっ!?」



 私は何気なく、ランドールが口が開いている間にスープに浸したパンを無理やり放り込む。



「……げほっ、何するんだよっ!」



 あ、飲み込んだ。

 何だかんだ言って食べれるようだ。


 言葉も崩れてきた。本来はこういう話し方なのかな。



「美味しいでしょう。今日はコーンのスープなんですよ。ベーコンも入って贅沢でしょう?」



「無理に食べさせやがって、美味いも何もあるかっ!」



 スプーンで具をすくってランドールの口元に近付けるが、顔を逸らされた。



「ルルシアの“あーん”とかぁ、羨ましいよぉ」



「いや、屈辱だろ」



 私は諦めて自分の口に運ぶが、隣で“くぅ”と鳴る音がした。


 腹の音のようで、ランドールは顔を赤らめていた。



「はい、どうぞ」



 再びスプーンを口元に寄せたが、ランドールは顔を反らした。



「ランドール様が作ったものより何倍も美味しいですよ」



「なっ、侮辱し……もがっ!?」



「よく噛んで食べて下さいね、はい次はパンですよ」



「や、やめっ……むぐっ!?」



 私はランドールを煽りながらスープとパンを食べさせた。

 最後のほうには偉そうだが、大人しく食べさせられていた。


 レアンドロとガルムは、何だか憐れみながら見ていた。ハインツはずっと「羨ましいよぉ、ルルシア私にもぉ」と言っていたが無視した。





 食べ終わり、一息ついたところで、ようやく話を始めた。



「レアンドロ殿下からも聞いたが、ルルシアは魔女アリアの指示で俺らから別行動に移ったんだよな?」



 ガルムの話に、私は頷く。


 しかしガルム曰く、ローウェンからは連れ去られたと聞いたらしい。



「あの娘もアリアからの指示で動いたみたいです」



 簡単には説明してみたが、ガルムは納得しない様子だったが、その隣のハインツは頷きながら



「まぁ、グラジア領の件はルルシアには関係のない事ですからねぇ。大事な弟子を面倒事に巻き込ませたくなかったのでしょうなぁ」



「主が違えば考え方も違うのは分かるがよ、挨拶なしに離れるのは、ちょっと薄情じゃねぇか?」



「あの場を離れる事が最善だったのさぁ。それにねぇ、君たちが先にルルシアの手を離したんじゃないかぁ」



「俺たちだってルルシアを巻き込みたくなかったから、ああしたんだよ。関係ないんだから……」



「だからぁ、仲間とか言ってて何も伝えずにいたから信用されなかったんじゃないのぉ? ルルシアに全部話してれば、ルルシアが何でもやってくれたのに」



 ハインツよ、私は便利屋じゃないんだよ。



「それこそおかしいだろ、王族や他家の問題にルルシアが処理するのは間違ってる」



「君は頑固だねぇ。何も出来ないお姫様にしたいのは分かるけどぉ、どちらかと言えばルルシアはお片付けが上手い掃除屋だよぉ?」



 掃除屋だと思ってたのか……


 話が進まないようなので、私も会話に混じる。



「グラジア領の件は気になるけど、私は介入出来ないからそれ以上は聞きません。ですが……」



「王族の尻拭いなど、ルルシアは昔からやらされていたからな」



 急に入ってきたレアンドロに、ハインツとガルムよりもランドールが驚いていた。


 レアンドロはランドールを一瞥した後、ハインツとガルムに昔の話をした。



「俺の父、現陛下は普段は大人しいが、時折無茶苦茶な命令を下していた。特にルルシアが学院に入学してからは色々と遠回しに命じていた」



「へぇ、ルルシアは何したんですかぁ?」



「だいたいは回復薬だな。毎月何十本も要求していたと、最近になって兄上から聞いたんだ」



 懐かしいな……そんな事してたっけ。


 王宮の魔術師用の回復薬を100本作ってくれとか、薬学の先生伝えで、よく作ってたっけ。


 やっぱりライオネルも知ってたんだね。


 あの方は学院に入ってからは、基本的に私の事には関わらないスタンスをとっていたな。


 パトリシア辺りが知っていたら、もっと面倒な事になりそうだけど。



「きっと父はその頃から戦を視野に入れていたのだろう。回復薬の改良も求められていたと聞く」



「改良された回復薬……まさか、あの時期に王弟アルベルトが開発したと言っていた新しい回復薬は……」



 ランドールが恐る恐る私を見て、その真意を確かめようとしていた。


 私は慌てて否定した。



「違います! 私が改良したのは血栓を溶かす薬でしてっ」



「溜まって身体に流れない魔力の治療に用いるものでしたねぇ、あれも回復薬の一種ですしぃ、アルベルト殿下の発明したものとして出回っていますよねぇ」



 え、そうなの?

 ハインツの言葉に、私も知らなかったなぁ……なんて思ったが、まぁあの頃はよく色々作らされたから、どれの事なのか思い出せないくらい、よく依頼されていた。



「ランドールもそれに助けられた一人だ。あれが無ければ今、魔剣を使う事が出来なかったんだぞ」



 レアンドロの言葉を聞いているのか分からないが、ランドールはショックを受けていた。


 魔術師にとっては、手から魔力を流すのが当たり前だ。薬にしても手からで無ければ魔力を流せない……

 というのが教科書に書かれていたが、実際は触れて流せることも可能で、私も実験的に足の指から流してみたりして遊んでいた。



 しかし、その魔剣を使って私の首を切ろうとしていたなんて……運命っていうのは何とも奇妙なものだ。



「王弟のアルベルトは自分の地位を安定させたかった。だから父とは別にルルシアに命じたのだろう」



 王弟アルベルトは、私が知る前から魔力の多さを知っていた。

 それこそ早い段階で近付いてきて、シュトレ伯爵家と懇意になろうとしていたが、父も母もアルベルトを毛嫌いしていた。それもあって私との接点を減らす為に仮病を用いていた。

 


 我がシュトレ伯爵家は表立っては言える事ではないが、元々王族とは対立する派閥なのだ、戦おうとする王族の意思とは違い、他国との和親を望んでいる。


 

「よく分かりましたね。私が作っているなんて口外した事はなかったはずですが?」



「アルベルトがそれを作れるのは数日かけて一本だが、あの時は毎月10本ほど卸されていたらしいな。王宮内では皆すぐに気付いたが、始めは誰の発明までは分からなかったようだ。兄上が調べて分かったようだが」



「それにしてもぉ、ルルシアの功績をライオネル殿下は知っていて何もしないんですねぇ……皆が話す殿下のイメージとは随分違いますねぇ」



 ほら、突っつかれた。

 やっぱりあの頃から表立って動いてれば良かったのに



「兄上が知ったのはルルシアの卒業後だった。無論、その後はルルシアに権利を譲渡するよう訴えたが、証拠がなかった」



「じゃなルルシアが言えば解決できるのかぁ……でもねぇ」



「ルルシアは権利の主張をしなかった。むしろ自分は作っていないと否定した」



「やっぱりねぇ」



「な、何故だ? 権利で得た金額は計り知れないのに……」



 ランドールは食い込みで聞くので、私は何だったら彼が納得してくれるか考えてから、間をおいてから話始めた。



「色々ありますが……一番に、私はアルベルト殿下に“貸し”を作っておきたいからです」



「貸し? アルベルトにか?」



「一見するとアルベルト殿下に必要なのかは分かりませんが、“恩”をうっておけば、いざというときに切り札になり得ることもありますから」



「だが、それだけの事で権利を?」



「お金が全てではありませんが……権利やお礼の類いは必ずしもお金で帰ってくるとは限りません。特に未婚の貴族が頂く誉といえば王族の誰かとの結婚をお礼として話がくる事になるでしょうね」



「ルルシアからしたらぁ、それが一番の本音じゃないのぉ」



「ずっと王族との婚姻を避けているからな」



「一応、王族には一通り“貸し”はばら蒔いてますね。自ら婚姻を口に出さない限り、私は誰とも結婚しなくて良いのですから」



「ずっと思っていたけど、何故王族との婚姻を嫌がるんだ? シュトレ家の派閥もあるがルルシア自身が望めば……それこそ裏で操る事だって」



 王子自らぶっちゃけているけど、いいのかしら?


 あそこまで私にやってるから、もう吹っ切れてるのかな?



「私にとって王族との婚姻に利がないんですよ。戦をしたくないのに駆り出されるリスクや、無償で回復薬を提供する事もあるでしょう?」



「しかし、その分自由に使える金を手に入れられる」



「ランドール様、そのお金は国税ではありませんか……私は民の血税を自由など使えませんよ」



「なっ、それは……そうだが……」



「本来であれば、私は辺境の地でアリアからのんびり薬学を学んでいたのに、アリアの出向で私まで駆り出されている今も、元々は王族からの命ですからね……魔剣だ何だと騒がれて正直私も疲れますよ」



 あ、王子二人に愚痴っちゃった。


 レアンドロも気まずそうに私から視線を外していた。




「人に聞く前に、まずは自分で調べてからにして欲しいものですよ。私は便利な辞書や道具ではないのですから」



「それくらいにしよぉ。ルルシアには全く非がないから、返す言葉もなくなっちゃうでしょ?」



 ハインツに止められ、私は口を閉じたが、本当はまだもっと色々言いたい。



「私も思うところは色々あるけどぉ。求められてる事がはっきりしてるならぁ、もう全部話せば言いんじゃないのぉ?」



 ……それもそうだけど、どれだけあると思ってるのよ。


 レアンドロに話しててもキリがないのに、それをまだ話せって?



「じゃあ、ランドール様は魔剣の何が知りたいんですか?」



 しぶしぶながらランドールに聞けば、言いづらそうに



「いいのか? 私は先ほどお前を……殺そうとした相手だぞ?」



「私は斬れなかったのは理解されたでしょう? 貴方の魔力では私は斬れませんよ」



「それは……魔剣の力は魔力の量によるものだということか?」



「それもありますが……本来、魔剣は人を切ることは出来ません」



「それは剣とは言えなくないか?」



「うーん……また歴史の話になりますが、剣は元々狩りの為のものです。二代目ウルサス王の魔剣もまた害獣駆除の為に火を扱う魔剣でした」



「あれぇ? そんな事書いてあったぁ?」



 ハインツの疑問に、私は魔術とは別の書籍である事を伝えた。



「民族としていた時代は、人との争いよりも食料を確保する為の狩りの特化していました。魔剣でなくても魔術による狩りは当たり前にやっていたはずです」



「へぇ、じゃな魔剣って動物に対して使ってたんだぁ」



「ウルサス王に関してはそうだと思いますが、初代ムグル王は他にも使っていたようですね」



「そうだっ、前にルルシアが魔剣の色を変えろと言っていたあの話を聞きたかったんだっ」



「ムグル王に関しての記述は魔術書籍のほうが多く残っていますね。ハインツ……知ってる範囲で話して」



「知ってる範囲って膨大な量だよぉ。まぁ色の話ならぁ……魔術は自然と融合されて関連つける事が基本でぇ、術式の展開の時に浮かぶ色はそれに関係していることが多いねぇ」



 水を扱う魔術は水色や青色、たまに透明な場合もある。


 火を扱う魔術は橙色や黄色、火力次第で赤にもなる。


 浄化などの突飛な魔術は色の出方も様々だが、基本的に白や黄色が多い。



 ハインツはそれを説明しつつ、更に話を重ねていく。



「術式を展開するのはぁ、その引き出す能力と関連付ける為に使うからぁ……あぁ、そういう事かぁ!」



 何かを理解したハインツは、ランドールに



「つまり魔剣にただ力をこめるだけでなく、術式を展開しながらやれば……」



「ハインツ、それは魔剣に対しては使えないのよ」



「えぇ? なんでぇ?」



「色の話は合ってるのよ。でも魔剣はあくまでも有機物であって無機質の自然から引き出すのとは違うの。つまり魔剣には魔剣にあった力が必要になる」



「なるほどねぇ……じゃあ魔剣には魔剣の術式があるんじゃないのぉ?」



 ランドールに詰め寄るハインツに、ランドールは頭を振って「知らないよっ」と脅えていた。



「それが王家に存在していないなら探すしかないでしょうね。だから私は一番知っているであろうアリアから聞くべきだと言いました。私には分からないので」



「……では、兄上や姉上たちが違う色のものが出せるのは何故だ?」



 ここでレアンドロが入ってきた。



「魔剣を作った王たちが、その時に込めた思いが一番強いものが力を持って使えるようになります。思いによって火や水などが使える訳ですね」



「では兄上や姉上たちが使えるものは、それを出したいからその色になったということか」



「そうですね。後は自分の得意分野がそうだったからとも言えますね」



「じゃあ私が使えたら色は緑なのかなぁ」



「術式のように出したいものを強く願えば違う色も出せますよ。要は気合いですね」



「なんだ、それならば騎士と変わらねぇな!」



 ガルムが笑っていたが、当のランドールはそれどころではないだろう。


 騎士もまた努力が必要で、魔剣も同様である。

 魔剣に注がれるほどの強い力は、気力や根気が重要だ。しかし更に魔力やそれに費やす魔力も必要になる。



 王家に残る情報が少ない場合、当人たちは更に大変になるだろう。


 その分だけ、力を発揮した時の効果は絶大なのだ。




「ムグル王の統治した国は、まず土壌から改善してきたのではないかと思われます。次第に人が快適に住める土地にしたのでしょうね」



 果てしなく長い時間をかけただろう。


 力でねじ伏せるのではなく、住む人の為に行動した結果、人々はムグル王に従い、ついて行ったのだ。



「それは他国でいうところの聖者のよう行いだねぇ、そんな方だから慕われて、王になったんだねぇ」



 改めてハインツは王子二人に聞かせるように話すと、二人とも何か思案している様子だった。



「ランドール様、何故魔剣を使いたいのか……それを考えてみて下さい」



 私は鍋や器を集めて、湖の近くに行き、片付けをする。


 皆黙っていたけど、私は気にせず旅支度をした。







「それで、お前たちはどこに行くのだ?」



 馬に乗ろうとしたレアンドロは、朝から登場した三人を睨んでいた。



「このまますぐに王都に向かいます」


 

 ガルムがそう答えると、レアンドロは後ろに乗るランドールの様子を気にしていた。



 いつの間にか馬を二頭連れてきており、一頭にはランドールとガルムが、もう一頭にはハインツが乗っていた。


 というか、早く追い付いたのも馬で来てたからなんだね。




「ルルシアぁ、王都で待ってるねぇ」



「はいはい、ハインツも元気でね」



 手を振り、私たちの進む方向とは違う道を馬が走っていく。


 最後にランドールが私を見ていたが、私は声をかけずに視線を反らした。



「ほら、早く」



 差し出されたレアンドロの手をとれば、そのまま引き上げて乗せてもらう。



「ありがとうございます」



「いや、構わない」



 落ち着いた様子で返すレアンドロは、どこかスッキリした顔をしていた。






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