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それを読んで、わたし思わず悲鳴を上げそうになる。
兄の文章が、いかにもエドワード様とかいうその相手の男性とわたしの出会いを、楽しむような感じに書かれていたからだ。
「あっ、ああ……」
「あ? どうなさいました、お嬢様?」
「あ、あの馬鹿兄上っ! 何をしてくれてんのよーっ!」
怒りを吐き出すとともにわたしはその手紙を拾い上げると、力任せに引き裂いてしまった。
「ひいいいっ、それ、手紙――」
「うっさい! あんなたまにしか連絡してこない奴なんて、兄妹じゃないわよ! なによ、妹を客寄せする道具か何かのように‥‥‥」
スウェイがその様を目の当たりにして悲鳴あげた。
破りまくったその手紙を、ぱあっと花吹雪のようにわたしは室内にまき散らしてやる。
侍女は慌てて、鉄格子の鍵を開くと、室内に飛び込んできてその紙片をかき集めていた。
「だめです!」
「……何がよ」
スウェイが叫ぶことはあまりない。
狼の獣人なのに、彼女はまるで借りてきた猫のように物静かな性格だ。
だから、これほど大きな声でしかられたのは初めてのことだった。
「お嬢様には家族がいるではありませんか!」
「だって、でもそれは‥‥‥子供の頃に殺そうとした両親だよ?」
この十年近くで、わたしの口はすっかり悪くなっていた。
そこいらの村娘よりも悪いかもしれない。
しかし、スウェイがその言い分を黙殺する。
「お黙りください! 家族がいるかどうかも分からないスウェイよりも、お嬢様はまだ恵まれております!」
「……」
それは確かにそうだ。
他の大陸から生まれたときに売られたのだという彼女には家族の温かみも記憶にないのかもしれない。
そう思うと、なんだか申し訳ない気持ちになる。
「……まったく。せっかくのお手紙を勿体ない」
「ごめん」
スウェイは共に学び始めたその過程で魔法学にも精通するようになり、毎週、街に買い出しにいくときには必ず図書館で魔法学の書物を借りて戻ってくる。
それはもちろん、わたしの名義での貸し出しだけれど。
正直、魔法に関しては彼女の方がうまいような気もしないではない。
早速、その魔法が輝いていた。
「さあ、おもどり。お前たちの元の姿に」
スウェイの白黒の尾が、蒼い燐光につつまれる。
獣人はその尾で魔力の制御をするという。
見る見る間に、手紙はわたしによって破られた前の姿を取り戻していた。
「スウェイ?」
「……物をだいじになされないお嬢様は嫌いです。あれ‥‥‥これって」
ぷんすか怒っていた狼侍女は、不機嫌なままに伏せていた耳の片方をあげた。
そのまま、最後にまだ読んでいなかった一枚に目を通して、こちらに渡してくる。
「なに?」
「日付ですよ。明後日になっております」
「……何が?」
「金曜日、カーディフ伯爵家の次男エドワード様、ご到着予定。本日、水曜日です」
「……最悪だわ」
こうして、わたしは人生最初の伴侶となるエドワードと顔を会わせることになる。
「頑張ってくださいね、お嬢様!」
「お兄様のばか」
スウェイの応援は、わたしの耳を素通りして暗い地下牢のどこかに溶け込んでいった。




