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わたしが案を出し、スウェイが彼女の得意・不得意を述べて、二人で学べるものがよかった。
というのも、スウェイが学ぶことは内緒だったからだ。
すべては、わたしが学ぶという名目のもとにリクエストしなかれば、ならなかった。
それは結果的に、二人分の学問をこの出来損ないの頭の中に。
物覚えが本当によくないわたしの脳に叩き込むという、いじめのような生活をもたらしたのだけれど……。
「やるなら……どこに出て行っても恥ずかしくない淑女として成長したい、かも……」
「それは礼儀作法の先生から学べるではないですか」
「白魔法は……あなたがお姉さまたちから学んでわたしに教えてくれたらいいし。だとしたら、ふつうは学べないもの?」
「スウェイめはあまり学がありませんからあれですが……。婦女子として学ぶべきは、歴史、裁縫、刺繍、詞歌、礼節、楽器と決まっているのでは?」
「あなた、料理はどうするの」
「それはスウェイが作って差し上げます。だいたい、暖炉もないこの部屋でどう調理をなされると?」
「……なら、植物学とか。薬草学などを学ぶわ」
「闇属性で枯らすしか能のないお嬢様には無理ではないかと……」
「あなた、一言余計なのよ」
とまあ、そんな会話をしつつ、この十年近くで学んだ科目は三十に及ぶ。
そのどれもが、同年代の貴族子弟子女が身に着けるよりも数年、早い時間で習得できていると、教師たちからは驚かれた。
もちろん、そこにはスウェイというともにゼロからすべてを学びあった仲間がいることが、大きな励みになった。
「だけど不思議ね。こんな宝珠を介してこちらもあちらも互いに姿も声までも伝え合えるなんて」
「まったくですね。魔法の偉大さ、というところでしょうか‥‥‥」
初めてそれを目の当たりにして、わたしたちは首を傾げあった。
これは人工女神と呼ばれる魔導工学が生み出した、神に近い能力を持つ思念体を通じて共有されるからだという。
わたしにはそれが何かよくわからなかったけれど、与えられた宝珠を操作すれば壁に立体的な窓が開き、そこには各種メニューがあり、申し込みを押して許可されれば、大抵の事柄を学ぶことができた。
画像だけでなく、なかには教師が立体画像としてこちら側に配信されてくるものもあった。
剣術――特に細剣をわたしは好み、スウェイは柵の向こうからだけれど、槍が好きだとかで数年それを学んだ。
秘密裏に牢屋の中に、別邸にあった儀礼用の剣や槍をもちこみ、スウェイもなかに鍵を開けて入ってきて模擬戦をしたり、遠く東の異国から配信されてくる武道というものも学んだ。
互いに模擬戦をするときは真剣になりすぎて、怪我が絶えなかった。
それらの怪我や破けた衣類などをまったくなかったかのようにしてくれたのは、皮肉にもスウェイが学ぶ神官たちの白魔法だった。
神聖魔法、回復魔法、治癒魔法などのそれらをわたしも同じように使えるようになったから――、どうにか大けがをせずに済んだといえる。
スウェイは奴隷だけれど文字に興味を示し、その他の学問を学びたいという意欲に満ち溢れた、偉大な探求心を持つ友人だった。
わたしは先に学び、教師になり、彼女がやがて追い越し、教師になり‥‥‥ということを各分野において繰り返して学んだのだ。