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そして、十年近く。
わたしの住む部屋は、街よりだいぶ郊外に下がったとある村の別邸の地下。
そこの地下牢の一つが改装され自室となり、侍女として二人の女性神官と、一人の奴隷の少女がやってきた。
二人は主に別邸で神殿の出張場のようなことをやり、わたしの世話に充てられたのは同い年の奴隷の少女。
黒い狼の耳と白黒まだらな尾をもつ獣人族の、スウェイだった。
最初は臆病だったスウェイもわたしとの会話を通じて仲良くなり、いまでは上のお姉様たちと彼女が呼ぶ女神官たちの用事がないときは、必ずわたしの部屋にきて話をしていた。
鉄格子のあちらとこちら。
手をつないだりすることはできる程度の隙間しかないそれを介して、わたしたちは本当の姉妹のように生きてきたし、関係性を作ってこれたと思う。
学びもまた、実りの多いものだった。
通信教育の過程には実にさまざまなものがあったのだ。
――家庭教師代わりに週に三回届けられる、語学、数学、歴史、科学、外国語、剣術、魔法学、薬学などをわたしたちは学びあった。
宝珠を通じて遠隔でお互いを見ることができ、通話も画像なども録画を伴って配信されることもあった。
この王国の学院が実施するそれよりも、海外の帝国などが行うもののほうが、よほど内容もレベルが高く、そして先進的だったからわたしはそれを選んだ。
と、いうよりはロメロお兄様がそうするようにと、父上に助言してくれたらしい。
そのほうが、何かの拍子に国内で悪いうわさが立たない、ということにもできたし。
何よりも、帝国に留学に行かせたという建前にしておけば、ある日を境にわたしを見ることがなくなっても、誰も気にしないからだった。
「お嬢様。担当いたします、エイデア帝国学院のブレアと申します」
「先生、どうぞ、よろしく」
先生は、卒業するまでの十年間の面倒を見てくださった。
学問だけでなく、人生の師としてもそう。
でも彼が帝国学院では最年少で教師となった、と聞いたときは驚いた。
最初にそのお姿を拝見したときもびっくりした。
先生はまだ十八歳に過ぎず、私と十二歳しか違わなかったのだから。
わたしたちが一番はまったのは、普通の貴族令嬢たちが学べないことを追い求めることだった。
もちろん、基本とされるそれらを学んだうえで、だったけれど。
わたしの一生は牢獄の中、と決まっていたし。
スウェイの一生は奴隷であり、わたしの世話をして死ぬまでそばにいることだった。
わたしたちは知恵を絞って……その時々の気分で、ブレア先生を困らせながら、さまざまなリクエストをした。




