日がな一日メモ 0303
ウェアブル端末を装着し、日々の戯言を垂れ流したい。そんな毎日。
忘れちまうんだよねえ。後で書こうと思ったら。
そしてそうやって、昨日も一昨日も、ずっとずっと前から。
今日もほら、帰り道の薄暗い街路樹の下を通る時、向こうから近づいてくるものが何やら得体が知れなくて。
どうしよう。あれは何?なそあれ、かはたれ、護りたまえと念じながら、しかし歩く速度は緩めずに、気が付いていることを悟られぬようにして、すれ違う場所がコンビニの明るい照明の届く歩道になるように、そっと調節していたんだろう?
大人にしては背が低い。少女にしてはずんぐりしている。
暗い色のジャージを着ていて、頭がまるで肩にめり込んだかのような、見たことのない奇妙なシルエットだったのに、近付くにつれ、おいらの首の後ろが汗ばむにつれ、奇異はどんどん縮小して明るい街灯の下を通る時にはもう、黒いスウェットに白いロゴをのっけた浅黒い少女になっていた。
いつかのある日。夕方から肌寒く、急ぎ足で帰った日。
三叉路の右側に上りの階段があって、僕はいつもそこを上り僕の住む建物の敷地に入る。右に曲がろうとする僕のほうに小学生くらいの女の子が駆けて来て、それが、ちょっと変則的なスキップみたいでもあるけれど、走りたいのか走りたくないのかよく分からない歩調で、広い道なのになぜか僕の目の前に走り込んでくる。
少しためらって歩調を緩めると、女の子はなにかコチャコチャと独り言を唱えて僕の行く手で立ち止まった。
まるで僕の通る線を断ち切るみたいな立ち止まり方だったが、僕を見ている様子はなく、いやどちらかというと目に入っていない様子で、僕がするりと避けて横を通り抜けても、ちらりともこちらを見ない。
女の子よりも少し遅れて背の低い女性が歩いてきていたので、親子だなと一瞬思った。だけど二人は目を合わさず、女性もやはりこちらを見ないので、やっぱり女の子が発した言葉は、誰に向かってでもなく独り言だったようだ。
女の子の視界に僕がいなかったのか、マジックミラーのように片方からしか見えないのか。僕が見てはいけないものだったのか。
もし振り向いて女の子がいなくなっていたらとふと思い、一目散に階段を駆け上がって小走りに建物に駆け込んだ。