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聖剣の書架  作者: AΨ狂育
9/17

陸頁:昼食と剣闘 01

土日は投稿を休みました。AΨ狂育です。

今後も多分土日は休みます。

ご了承ください。

「あー、こういう事ぉ……」

 皿に乗った料理を見て零時は納得した。

 ハタリオコルテンというのは、いわゆる丸鶏ローストチキンの事だった。

 どうやらこの世界にも鶏や牛といった家畜が存在するのかもしれないと零時は思った。

「ソフィアさん、こっちの世界にも僕のいる世界と同じ動物や植物って存在するんですか?」

「え?居ませんよ?」

「え……?」

 予想外の回答に零時は驚いた。

「あ~、でも似ているようなものは存在するのです」

 ソフィアは席を立ち上がってギルド内にあるモンスターの図鑑を取ってくる。

「えっと……あ、ありました。これです」

 ソフィアが見せてきたのは緑の美しい羽根を持つ異世界の鳥の写真だった。

「これは……?」

「これがハタリオコルテンの材料になっている鳥のロックスっていう鳥なのです」

「あ、え?!これが?!これがこうなるんですか?!」

 零時は写真を見てすっかり観賞用の鳥だと思っていたので驚いた。しかし写真の背景を見てみると鳥小屋が写っているので納得する。

「他にもヤギとかカエルとか、似ているのは沢山いるのです。この世界で家畜として利用されている動物は勿論、モンスターといっても普通に零時から見ても動物だと思えるものはいるわね」

「意外ですね。いると思ったんだけどな~異世界にもそういうこっちの世界の動物とか」

「二つの世界に同じものが存在することはできないのです。このナイフやフォークも形が同じなのは用途が同じようなだけで、開発目的や経緯、歴史はまるで違うのです」

「そういう事もあるんですね」

 零時は恐る恐る初めての異世界料理を食べ始める。

 ももの付け根にナイフを入れて関節のところまで外す。

 そして思い切ってかぶりつく。

 肉をかみちぎり、咀嚼し、飲み込む。

「……美味しい」

「ね?言ったでしょう?」

 自慢げにソフィアは笑う。

「香辛料……なのかなぁ?スパイスっぽい香りも効いてて肉も焼いてるのに水分があって柔らかいし…あ、ソフィアさんも食べます?……ってもう食べてる……」

 ソフィアはハタリオコルテンを勝手にいただいていた。

「私も分けるのですからいいでしょう?それにこれは私の懐から払っているのです」

「えっそうだったんですか?奢ってもらっちゃってすみません……」

「気にしなくていいのです。ほら、これを」

 ソフィアは小皿に例の裏メニューであるベルテルーナを取り分けて零時に渡す。

 ベルテルーナは焼き鳥のようなものだった。

 ただ明らかに牛肉のようなものもあれば鳥皮っぽいものも混ざっておりバラバラだ。

「いただきますね」

 零時は串に刺さっている肉を豪快にいっぺんにいただいた。

「これまた美味いなぁ~っ」

チェルデンソースというのは酸味の強い柑橘系の果実を使ったソースなのだろうか。酸味と爽やかな香りが肉と非常によく合っていると零時は思った。

「クロード・ヴァロアの料理のお味はどうかね?」

 戻ってきたレグルスが零時に聞く。

「あ、はい。すごく美味しいです。確かに食べたことはないけど日本人の口に合う気がします」

「それは良かった。話は変わるが零時君、話があるんだ」

 そう言いながらレグルスは零時の目の前に座る。

「騎士団に入らないかい?」

「だっダメなのです!零時は私と本を……」

 ソフィアはレグルスに抜け駆けしたことに怒る。ソフィアも零時やシェリアの力でエクリプスに奪われた本を回収しようと考えていたからだ。

「え、無理です」

 ソフィアは言い切る前に零時がそう言い切った。

「え……?」

 ソフィアは叡智の書架にあった零時の説明に頼まれたことは断れないと書いてあったので零時はすんなり許可してしまうと思っていたが、予想を裏切る答えに少し驚く。

「僕学校あるし、バイトあるし、それに多分家で家族も待っているので。だから無理です。すみません」

 零時は頭を下げた。

「……そうか……」

 レグルスは残念そうな顔をする。

「まぁ君の事情があるなら仕方ない。あと、それとは別に頼みたいことがあるのだが……」

「なんですか?」

「イグニスがどうしてもといって聞かないから一回彼と一戦してくれないか?」

「えぇ?!」

 零時は悩む。相手は新米と言っても恐らく零時のいる世界ではプロの顔負けの剣士。痛い目を見る可能性も無くはない。

「シェリアはどうしたい?」

 零時は自分では決められないので黙ってスープを飲んでいるシェリアに判断を委ねることにした。

「私は……70年ぶりに聖剣になってまだあまり体が慣れ切っていないので、イグニスさんと戦ってマスターともっと一緒に戦えるようになりたいです!」

 シェリアの目を見て零時も決意が固まった。

「よし!頑張ってみるか!……とその前に」

 零時はハタリオコルテンを食べる。

「腹が減っては戦は出来ないので食べ終わったらでいいですか?」

「うむ。構わないぞ。お、ハタリオコルテンじゃないか。私も食べていいか?」

「それはソフィアさんに……」

 零時はソフィアに奢ってもらっているのでソフィアに答えを求める。

「構わないのです。あと零時、私はあの爆発頭が気に入らないのでけちょんけちょんにしてやるのです」

「あ、あはは……わ、分かりました……」

 零時は苦笑いした。


 昼食を食べ終えた零時たちはレグルスに案内されて騎士団員が利用している専用の練習場に来た。

 そしてそこには零時のことを今か今かと待っていたイグニスがいた。

「お!来た来た!待ってたんだぜ~っお前の事!よっしゃー!勝負だ勝負!」

 イグニスはテンションが上がり聖剣を振り回している。

「零時、健闘を祈るのです」

「ありがとうございます。ソフィアさん。じゃあシェリア、行こうか」

 零時は深呼吸をする。

「我は時に触れし者。そして世界の叡智について、聖剣少女はかく語る……」

 詠唱し終えると零時の手から聖鍵が出てくる。

「我は時の概念也。語り師先に導きし答え、解錠者と共に詠唱す……」

 零時はシェリアの胸の鍵穴に聖鍵を挿しこみ、回す。

「「聖剣解錠!!」」

 零時が聖鍵を引き抜くとシェリアは光の粉となり聖剣の刀身になった。

「おぉ~!!!やっぱすっげぇなその魔力量!もしかしたら並みの騎士団員超えてんじゃねーか?」

 イグニスは聖剣から発される魔力に興奮している。

「ごめん。僕魔力ってどんな感じかよく分かんないんだよね」

「ん?あ、そっか。お前別の世界の人間だもんな。まいっか。よっしゃー!それじゃ勝負だ勝負!!」

 レグルスがフィールドの中央に立つ。

「ルールを説明する。勝負の判定は相手を戦闘不能にする、聖剣を奪う、降参の3つで行う。私がこれ以上は危険だと判断した場合は中止するので即座に従う事。いいな?」

「「はい」」

「それでは開始する。両者、構えて!」

 零時は右足を前に出し聖剣を構える。

 それに対しイグニスは聖剣に左手を添えて剣先を零時に向け、体勢をを低くして独特の構えを取る。

『マスター、戦闘開始と同時になるべく高く跳んでください』

「え?あ、うん分かった」

 零時はシェリアがなぜそう言ったのか分からなかったがシェリアの言うことなので大人しく聞いておこうと考えた。

「用意……始め!!」

 零時は直ぐに空高く跳んだ。

 ドッッッッ!!!

 その瞬間、イグニスが零時に向けて構えていた剣を大きく突き出し零時を貫く勢いで駆け抜けた。

「うわ?!」

 零時はイグニスを見て震え上がった。

「な?!マジかこれ避けられたの初めてだ!!」

 イグニスは最初から零時を串刺しにするつもりだったのだ。

「もしかしてシェリア……まさかそれを見越して……」

『はい。しかしマスター、次の攻撃が来ます。体勢を整えてください』

「こんな空中でどうやって?!」

『腰を軸に体を捻ってください』

「分かった!」

 零時が体を捻ると数センチ先に何かが猛スピードで飛んでくるのが見えた。イグニスだ。

 今度は零時を斬りあげようとしてきたのだ。

「クソ!また避けやがった!お前慧眼のスキルでも持ってんのか?!」

「スキルって何?!」

「説明ならあとでしてやんよ!!」

 イグニスは零時にめがけて聖剣を振り下ろした。

 ギンッッ!!

 零時は間一髪でイグニスの一撃を聖剣で受け止める。

「どりゃああ!!」

 イグニスはそのまま押し出すように聖剣に力を込めた。

 吹っ飛ばされた零時は地面に叩きつけられ…ているかは分からなかった。零時が地面に墜落した時に砂埃が舞ったからだ。

「さて……どう来るんだ……?」

 イグニスは零時が砂埃から出てきて自身に襲い掛かってくることを考え空中で臨戦態勢に入る。

 しかし零時は出てこなかった。

 勘が外れたイグニスはそのまま地面に着地した。

 イグニスが着地したことで更に砂埃が舞いフィールド上が砂埃で充満する。

「畜生……おい!出てこい!隠れたって無駄だぜ!」

 イグニスは手を筒のようにする。

「炎龍の息吹!」

 イグニスがその中に息を吹くと火炎放射器のような勢いで燃え盛る炎が発生した。

 砂埃がイグニスの炎で熱を持ち辺り一帯が熱くなる。

(クソっ……これでも出てこないのかよ…!普通だったら火傷してるレベルだっていうのに!)

 息を潜め続ける零時にイグニスは段々イライラしてくる。

「いい加減にしろ!俺はかくれんぼしに来たんじゃねーんだよ!お前と剣を交えたいと思ったから来たんだ!いつまでもコソコソすんな!」

 ザリッ

「?!?!」

 イグニスはわずかに聞こえた足音に反応しすぐにその場から離れた。

「あ~逃げられちゃった……」

 零時の声がした。

 フォンッッ

 零時は聖剣を振り砂埃を払う。

「お前、今までどこにいた?」

 イグニスは聖剣を構えながら問う。

「結構近くには寄れたんだけどね。ずっと体勢を低くしてたんだよ」

「低く?なんでだ?」

「暖かい空気って上に行く性質があるでしょ?君ずっとまっすぐに火を吹いてるから熱が発生しても下はそこまで熱くはならない。結構息苦しかったり一瞬凄く熱くなった時はあったけどね」

 イグニスは目を丸くしている。

「空気ってそんな性質があんのか……?うわーそりゃ知らなかった!」

 イグニスは頭を抱える。

「じゃあ下に向けて吹けばお前に当たったかもしれないって事か……???」

「火傷じゃ済まないだろうね…炭になっちゃうかも」

 零時は苦笑いをする。

「うわー!!!マジかよもぉ~!」

「え?どうしたの?」

「いやっ俺いろんなヤツと戦ってきたけど誰もそれ教えてくれなかったんだよ!そういうことだったのか!!」

 イグニスは肩を落とすが、同時に薄笑いを浮かべる。

「……ま、これで分かったんだ。んじゃお前の言葉通り……」

 イグニスは手を筒状にして口に当てる。

「下に吹いてやんよー!!」

 イグニスは真下に向けて勢いよく火を放った。

 イグニスを中心に周りが炎に包まれる。

「じゃあこっちも……」

零時は秒針を外す。

「クロノ・エクセレート!」

 零時が詠唱した瞬間時間がゆっくりと進むようになる。

「さて……どうやって避けるか……」

 ゆっくりとは燃えているものの、炎は着実にフィールドに広がり続けている。

『マスター!操作できる時間は残り5秒です!早めに次の行動を!』

「分かった……。ん゛?!5秒?!」

 次の瞬間、炎の燃えるスピードがジワジワと上がっていく。

「え?!嘘?!ヤバい!」

 ボオォッッ!!

 時間の進みが元に戻り、炎が零時に襲い掛かる。

「うお!!」

 零時は寸前で飛び上がって回避した。

「シェリア?!どういうこと?!」

『私の力は相手の時間を奪い、貯蔵し、任意のタイミングで時間操作を発動する仕組みです!説明し忘れていました……申し訳ありません!』

「嘘おおおおぉぉぉぉ?!?!?!」

 零時、大ピンチ。

ご拝読ありがとうございます。

書き溜めがあんまり無いのでちょっと追い込まれてます。(まだ9話なのに)

とりあえず書く以外にやる事ないので頑張ります。

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