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聖剣の書架  作者: AΨ狂育
5/17

参頁:異世界、クロード・ヴァロアにて。

5話です。

今回最初のシーンは異世界側の視点から書いています。話が飛んだように見えるかもしれませんがれっきとした5話です。

 クロード・ヴァロア。12個の世界の内、[ファンタジー]を主とした特徴を持つ世界。

 王国やギルド、騎士団など異世界ファンタジーを象徴する文明や文化が存在する、ファンタジー好きには憧れのような世界だろう。

 そしてクロード・ヴァロアに存在する国の一つ、ファンタズマゴリア王国ではドラゴンが別の世界に召喚されたことが問題となり国会では騒ぎが起きていた。

「陛下、これは一刻を争う事態です。早急に判断願います」

 ファンタズマゴリア王国の大臣の一人がファンタズマ国王にそう急かす。

「恐らく原因は魔王エクリプスじゃろう。一体何を企んでいるのか分からんがこの規模となってしまってはあちら側の世界の民の記憶を消したりするのは難しいじゃろうし…どうやらあの世界にはスマートフォンなる情報を全世界に簡単に拡散できる道具があるそうじゃ。それも民のほとんどが持っているらしい。由々しき事態なのは分かるが王が代々受け継ぐ掟として他の世界に干渉するのは御法度……どうするべきか……」

 ファンタズマ国王はそう言いながら眉間にシワを寄せる。

「俺たちにお任せください!!!」

 会議場に勢いよく扉が開かれる音が響き渡る。

「誰だ?!」

 大臣たちが一斉に扉に目を向ける。

 ガチャッガチャッと鎧が揺れる音を響かせながら、燃えるような深紅の髪を持ち、業火の色をした瞳を輝かせ、本が入った革製のベルトポーチを腰に下げた男が堂々と歩きながら会議場に入ってきた。

「王!俺たちならあんなドラゴンチャチャッとブッ倒せますし、忘却魔法を使える騎士がいるからすぐに記憶を消せます!だから王!俺たちに任せてください!」

 男は堂々としすぎて逆に失礼な口調で喋る。

「お、お前!国王になんて口の利き方をしているんだ!まず名乗るくらいの事をしなさい!」

 大臣の一人が立ち上がり男の態度に対して顔を真っ赤にして怒る。

「俺か?俺はイグニス!イグニス・クリムゾンフェニックス!17歳だ!今年騎士団に入った新入り騎士だがよろしくな!オッサン!」

 イグニスと名乗った男は大臣の手を取って握手をする。

「な?!お、オッサン?!」

 大臣は怒りが頂点に達し言葉が出ない。

「陛下!この者を早く追い出してください!」

 大臣はそう言いながらイグニスを指さす。

「そうか!その手があったか!」

 ファンタズマ国王は掌を拳でたたく。

「へ……陛下?」

 大臣はポカンとする。

「イグニスとやら、騎士団長を呼んできなさい。すぐに準備しよう」

「分かりました!!うおー!!!」

 イグニスは猛ダッシュで騎士団長を呼びに行く。

「へ、陛下!いいのですかあんな輩の意見を飲んでしまって?!」

「今使える最大の戦力は彼らしかいない。彼らに頼もうじゃないか」

「は、はぁ……」

 大臣はぎこちなく首を縦に振る。

「呼んできましたー!!!」

「い、イグニス!痛い痛い!!腕がもげる!」

 騎士団長、レグルスがイグニスに腕を引っ張られる痛みに悶えながら走ってきた。

「おお、来たか」

「へ、陛下!申し訳ございません!この馬鹿の面倒を見なかったばかりに……」

レグルスは跪いて頭を下げる。

「まぁよい。すこし礼儀知らずなところが目立つが確かにこの者の言う通りじゃ。魔法使いを集めるからあちら側の世界に行く準備を始めてくれ」

「御意!」

 イグニスとレグルスは準備に向かった。


 パラパラパラパラ……

 東京の高層ビルの屋上に巨大化した本が現れ、零時とシェリアが描かれているページが開かれページがめくられながら絵が段々と立体化し二人が出てきた。具現化したように見えなくもないが、実際のところはワープしている。

「うぇ?!ここどこ?!」

 零時は辺りを見渡しどこかは分からないが屋上から見える景色からなんとなくビルの屋上にいることを理解する。

 そしてそれと同時に空を飛んでいるドラゴンが目に入った。

 ドラゴンはビルよりも遥かに大きな翼を羽ばたかせて飛び続ける。

 そしてその下ではドラゴンにスマホを構えて写真を撮りSNSに投稿する若者や、突然のドラゴン出現に驚き恐れおののく民間人の姿があった。

 彼らがこれから自分たちが死ぬのも知らずに逃げずに呑気にスマホを構えているかと思うと零時は早く逃げろと思い焦燥を感じた。

「シェリア、試練ってもう始まるの?」

「いえ、まだです。聖鍵は候補者の身に危険が迫った時姿を現すもの……。マスターの身に危険が及ばない限り現れることはありません」

「まだか……。正直緊張してるから早く終わらせたいんだよな…」

 零時は頭を掻きながら本音を吐露する。

「大丈夫ですよ。マスターなら」

「え?」

「私を見つけてくれたのですから」

 シェリアはそう言って微笑んだ。

「はは……うん。頑張ってみるよ」

 零時が頷くと、ビルの下からざわめきが聞こえてくる。

「おい、何だあれ?」

「竜の上になんかいないか?」

 零時たちがいるビルの屋上はかなり高い為何を言っているのかは聞き取れないが、皆上を指さしているのが見えたので上を向いてみるとそこにはスーツを着ており、頭には何故か虚無僧が被るような天蓋を被った人物がいた。

頭から下が普通な分、頭が異常に目立っている。

 男は空中に浮いており、どういう原理か分からないが拡声器を何もないところから出現させた。

「この世界の皆様、初めまして。セレーネヘリオスエンタープライズ社員のウツロと申します」

 ウツロと名乗ったその男はそう言って頭を下げるとどこからか紫色の注射器のようなアイテムを取り出す。

「こちらは我が社が開発した新作魔法道具、[闇属性化薬]と言います。この商品の効能を今からこのドラゴンで試してみましょう。

 ウツロはドラゴンの上に乗って注射器を突きつけ、注射針を刺して薬を注入する。

「グルロ?!」

 ドラゴンは薬を注入された数秒後に反応を示した。

「グ……グルル……ギャオオオオオ!!!!」

 深紅に染まった鱗の色が段々とドス黒い紫色に変わっていく。

「シェリア、いったい何が起こってるの?!」

 零時は何も分からないまま始まった商品紹介に困惑する。

「セレーネヘリオスエンタープライズ…聞いたこともないです。しかし恐らく……」

 シェリアは顎に手を当てる。

「……エクリプスが関係している気がします」

「エクリプス?!あの…魔王って人の?!」

「はい。あのドラゴンが薬を注入されてからエクリプスに近い魔力を感じます」

「なるほd……

 なるほどと言い切る前に突然ビルに揺れが発生する。

「うわ!!」「キャッ!」

 突如揺れが発生し零時とシェリアはバランスを崩して倒れる。

「な、なにが起きたんだ?!」

 答えはすぐに分かった。

 零時たちがいるビルのすぐ近くのビルをドラゴンが火球を吐いて破壊したのだ。

 ビルはギリギリ倒れずにいるが、いつ倒れてもおかしくはない。

 零時はその光景を見てさらに焦る。

「ど、どうしよう?!このままだとみんなが!!」

 ビルの瓦礫が民間人たちを襲う。

「うわああ!!」

「キャアアアア!!!」

 響き渡る悲鳴、瓦礫が落ちる音。

 零時はそれを目で見て、耳で聞いて、自分はなんて無力な存在なのだろうと感じた。


「パパー!!ママー!!」

 両親とはぐれてしまった少女が泣き叫ぶ。

「弘子!!」

 父親だと思われる男が少女を抱きしめる。

「もう大丈夫だからな!早く逃げよう!!」

 父親は少女を抱きかかえて逃げようとする。

「パパ!上!」

「え?!」

 父親が上を見上げると上から瓦礫が降ってきた。

「わああああ!!!」

 父親は自分を盾にするかのように少女に覆いかぶさる。

 ザンッッ!!

 ゴトゴトンッ

「……ん?」

 父親が目を開けると、何故か瓦礫が真っ二つに斬られ自分の左右にあった。

「怪我はないか?」

「はっ?!」

 顔を上げるとそこには剣を持った男がいた。

「だ、大丈夫です」

 父親は頷く。

「走れるなら走れ!娘さん抱えながらだと大変かもしれないが出来るだけ遠くに行け!」

「わ、分かりました!ありがとうございます!!」

 父親は少女を抱えて走っていく。

 パラパラパラパラ……

 親子を助けた男を筆頭に、沢山の鎧を着た者たちが大きな本の中から現れる。

「魚隊と射手隊は怪我人の手当てを!牡羊隊、水瓶隊は避難を仰げ!我々天秤隊はドラゴンの殲滅に当たる!」

 リーダーと思われる男が本から出てきた彼らに指揮を執る。

「了解!」

 彼らは指示通りに動く。

 零時はビルの上からその様子を見ていた。

「シェリア、何あの人たち?!」

「彼らはクロード・ヴァロアにある国の一つ、ファンタズマゴリア王国の騎士団です!まさかこちらの世界に現れるとは…」

「騎士団…」

 零時は彼らの活躍を見て驚いている。

「いいか?!必ず生きて帰るぞ!それだは配置につけ!」

 騎士団員たちは横に隊列を組む。

「本を取れ!」

 団員達は自分たちが持っている色とりどりの本をブックホルダーから取り出す。

「世界の叡智を秘めし書よ……」

 そう口々に呪文らしきものを唱えると本が勝手にパラパラとめくれ始める。

「その強大なる力を剣として顕現し…」

 そう言い終えた瞬間、飛び出す絵本のようなページが開かれる。

 飛び出したのは剣の柄が描かれた仕掛けで、それぞれ様々なデザインをしている。

「我に敵打ち破る希望を与え給え!」

 詠唱が終わるとなんとページとページの間が光り柄が立体化する。

 そして各々柄を手に取り剣を引き抜いた。

 本は剣が引き抜かれると同時に自らブックホルダーに戻っていく。

「準備はいいか?!行くぞ!」

「うおおおおお!!!!」

 騎士たちは空高く舞い上がりドラゴンの強靭な鱗をいとも簡単に切り裂いてゆく。

 ドラゴンは激痛で苦しみ空中でもがいている。

「凄い……」

 零時はヒーロー番組を見る少年のように目をキラキラさせている。

「彼らは戦闘のプロフェッショナル。もしかしたら私たちの出番は無いかもしれませんね」

「え?……まぁ、そうだよね」

 零時は少し残念そうな表情を一瞬見せたが、その百倍は安心したような顔をしていた。

 ドラゴンは墜落してぐったりとしている。

「チャンスだ!一気に畳みかけるぞ!」

 騎士団員たちはドラゴンに一斉攻撃を加える。リンチしているようにも見えて可哀そうに思えてしまうが、この世界にドラゴンが住めるような場所は何処にもない。ましてや狂暴化したドラゴンなどクロード・ヴァロアにも居場所はないのだ。

 そしてその様子を高みの見物をするかのようにウツロは見ていた。

「この薬品の力はこの程度ではございません。ここからが本領発揮です」

「うおおお!!」

 一人の騎士団員がドラゴンにトドメを刺そうとしたその時だった。

 今にも死にそうなドラゴンの目が限界まで開かれ、傷だらけだった体が一気に修復されていく。

「な?!」

 騎士団員たちは警戒して後退する。

 しかしもう遅かった。

 ドラゴンが咆哮し紫色の業火を吐く。

「うわあああ!!!」

「ぎゃあああ!!!」

 炎に触れた団員が火だるまとなり転げまわる。

 ドラゴンは体の筋肉がどんどん膨れ上がり、真っすぐに生えていた角が螺旋を描くように急成長し、目が2つから4つになる。

「何が起きているんだ?!」

「い、一時退却!」

 騎士団員たちは逃げ出す。

 体が3倍くらいの大きさに成長し禍々しくなったドラゴンは炎で団員たちを焼き尽くし、尻尾で薙ぎ払い蹂躙する。

「この商品には特性として喰らった攻撃に宿る魔力を吸収、闇属性の魔力に変換する効果があります。しかしあそこまで成長するのは想定外ですね。もう止めようもないでしょう」

 ウツロはそう言いながら紅茶をストローを使いながら飲んでいる。

「さて、そろそろ時間なので帰るとしますかね……」

 ウツロは時計を見て辺りを見渡す。

「この世界の景色は何処の世界にもない素晴らしさがあり壊してしまうのは勿体ない気もしますがこれも仕事……さて……ん?」

 ウツロの目にとあるビルの屋上にいる二人の人物が目に留まった。

 一人はベストを着た青年。よく分からないので特に興味はないが問題はもう片方だった。

 明らかにこの世界のものではないドレスを着ている。

 ウツロにはそれが誰なのかすぐに分かった。

「あ、あれは……シェリア・クロノブレイド?!」

 思わず目を丸くする。(天蓋で見えないが)

「何故奴がここに……。しかしこれはチャンス!奴を倒せば出世間違いなし!」

 ウツロはドラゴン専用の犬笛、所謂竜笛を胸ポケットから取り出す。

「ピー・・・・」

 笛の根を聞いたドラゴンがウツロの方に向く。

「あそこのビルの屋上にいる女を殺しなさい!」

 そうウツロが命令するとドラゴン翼を広げて飛んだ。

「ん?!?!」

 零時はドラゴンがこちらに飛んでくるのに気が付く。

「シェ、シェリア?!なんかドラゴンがこっち来るよ?!」

「逃げましょう!マスター!」

「う、うん!」

 零時が走りだそうとすると視界が急に暗くなった。

「……え?」

 振り向くとそこにはドラゴンが口を開けていた。

 思考が止まる。

「あ……あ……!」

 ドラゴンが零時とシェリアにめがけて火を吐いた。

「うわああああああ!!!!!!」

ご拝読ありがとうございます。

明日からまた書き溜めをし始められるので張り切って書き進めていきます。

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