弐頁:その少女、聖剣。
4話です。書き溜めたのが半分まで迫ってるので焦りまくってます。
執筆頑張ります。
「あぁ……やっと会えた…私のマスターに……!」
零時は抱き着いてきたシェリアに少々混乱しているがなんとか発見できた安心感のほうが大きく、落ち着きを取り戻しなんとなくシェリアの頭を小動物を撫でるかのように撫でる。
「えっと……なんて呼んだらいいかな?」
「シェリアです。シェリアって呼んでください!」
シェリアは零時の胸にうずめた顔を上げてそう答えた。
シェリアの体が小刻みに震えているのを零時は感じる。
どれほど零時……いや、自身の主が来るのを待っていたのだろうか。きっとここに何年も閉じ込められて孤独な毎日を送っていたに違いない。
「マスター……本当に元マスター、いえ、あなたのお爺様の若かりし頃に似ていらっしゃいますね」
「元マスター……あぁ!君が昔僕のおじいちゃんと一緒に戦ってたていう……」
「はい。少しお話してもよろしいですか?」
「あ、うん」
シェリアは水路の近くに座ると零時の祖父と戦っていたころの話をし始める。零時はその隣で胡坐をかきながらシェリアの話に耳を傾ける。
「あなたのお爺さん、定時様が若かりし頃私と共に大魔王エクリプスを討伐したことはご存じですか?」
「あ、うん。さっきソフィアさんから聞いたよ」
シェリアは手の指先を合わせて零時の祖父と戦っていた当時の事を話し始める。
「定時様はとても堅実な方で、クロード・ヴァロアに召喚された時は恋人……いずれあなたのお婆様となる方がいらっしゃるので何があっても帰らなきゃいけないと言って、沢山の厳しい試練や戦いを乗り越えていらっしゃいました」
「僕のおじいちゃんが……」
「定時様以外の勇者の方々は魔王を倒した後、勇者と聖剣は恋仲となりそれぞれの世界に旅立ち、その能力は新たに作られた聖剣に受け継がれて行きました。彼らは作られてすぐにいつか必要とされる日が来るまで眠りにつくこととなりここで封印されていたのですが、一人、また一人と主が見つかり、ここを離れていきました。作られてすぐ眠りについた彼らの監視役を任されていた私はここで約70年間動物や植物と共に彼らを見守り、そして見送ってきました。そして最後は私一人となり、ここでずっと眠っていたのです」
「70年……」
ここでの時間は零時が暮らす世界と時の流れが違う為、シェリアはそこまで歳をとっていないだろう。だとしても長すぎると零時は思った。
自分がもっと早く来ていたら、もっと早く気づけていれば、彼女の孤独を少しでも埋められたのではないかと考えると零時はいたたまれない気持ちになった。
「・・・・・」
考えれば考えるほど申し訳なさが零時の心を押しつぶす。
零時はシェリアの顔が見られなくなり下を向いた。
「……ごめん……僕がもっと早く来れば…」
シェリアは零時の手にそっと触れ、首を横に振った。
「いいのです。マスターがこうやって私を探しに来てくれたのは紛れもない事実です」
「でも……」
シェリアには自身の持ち主の心を鮮明に感じ取る力がある。
今零時がシェリアにいかに罪悪感を感じているのかが彼女にはよく分かる。
「マスター、私の事はあとでも構いません。今はドラゴンを倒すことを最優先しましょう。……ね?」
シェリアの提案を聞いた零時は顔を上げる。
「……うん」
零時とシェリアは出口に向かって歩き始めた。
零時とシェリアが出てくると、本を枕代わりにして気持ち良さそうに寝ているソフィアがいた。
「あの~、ソフィアさ~ん?」
「んう……あ、零時……あ!見つけたのですね?!聖剣を!?」
「あぁ、はい。確かに見つけました。ここにいます」
「番人、只今目覚めました」
「シェリア……何十年ぶりかしら。久しぶりですね」
「はい。お元気そうで何よりです」
二人はそう軽く挨拶を済ませるとすぐに本題に入る。
「シェリア、やることはもう分かっていますよね?」
「はい。ファイアードラゴン討伐を最優先事項としています」
ソフィアは頷き、零時を見る。
「零時、あなたはここに入る資格はあるけれど、シェリアの力を使う資格はまだ手に入れていないのです。これからあなたには聖鍵士の試練に挑んでもらうのです」
「え?どういうことですか?」
「あなたがお爺さんから貰った本はこの叡智の書架とシェリアの封印を解く解除キーみたいなものなのです。シェリアの聖剣としての力を使う資格はあなたはまだ手に入れていない。試練はここを出たら恐らくすぐに始まるのです。心の準備をしておくのです」
「わ、分かりました」
零時は戸惑うがソフィアは零時が試練に合格するのを確信しているかのように頷き、着ている服の襟に手を入れて、手のひらサイズの本を取り出す。
ソフィアがその本を投げると本が巨大化して叡智の書架の出口が完成する。
「零時、覚悟はできましたか?」
「……はい……!」
「シェリア、零時の事を支えてあげて欲しいのです」
「お任せください、番人」
零時とシェリアは目を合わせると同時に頷き出口に向かって走る。
二人が出ていくと出口は小さくなり、本に戻ってソフィアの手に戻った。
「…行ってらっしゃい。最後の聖鍵士…。ご武運を」
ソフィアはそう零時たちの健闘を祈って呟いた。
ご拝読ありがとうございます。
最近事情があって午前4時半に起きなきゃいけないので午後は眠くて執筆できない日が続いております。
でもそれも明後日まで。
明明後日から執筆頑張ります。