#84 集う者達
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闘う者達的な、ね?
「――ただ今戻りました。レバンス様、ガラドン様」
「おお、戻ったか、カイ。それにリヒ――ッ!? リヒト!? その様子は……い、一体何があったのだ……!?」
カルマ王国のとある屋敷――聖堂会と元聖騎士団の混成軍の拠点には、大妖精の森の調査を行っていたはずのカイ達が戻ってきていた。
しかし、戻ってきた彼ら調査隊の様子は、何やら普通ではなかったのだ。
「カイ君以外は皆怪我を負っているようですね……ひとまずこちらで治癒の魔術具を起動しておきます」
「か、感謝します……レバンス様」
カイ以外の調査隊メンバーは、龍神カグラの憑依した紅蓮との戦闘によって気絶させられてしまっていた。
リヒトは薄れかける意識の中で、レバンスに礼を告げるとその場に倒れ込んでしまう。
「い、一体……何があったというのだ、カイ!」
「それは、かくかくしかじか――色々ありまして……」
レバンスが範囲回復魔法の仕掛けが施された魔術具を展開する中、カイはガラドンに森で何が起きたのかを説明した。
妖精族の住む里にあるという大書庫、そこにある膨大な『知識』を求めて調査を進めていたところに、賊と思わしき人物たちが現れ交戦に。
たった数名の賊に仲間が倒されていく中、何とかあと一人まで追い込んだリヒトとカイだったが……。
「龍の神を名乗る男に、一瞬で返り討ちにされた……だと?」
「ええ。何か大きな力を隠し持っているのは気配で分かったのですが、まさかあれほどの強さを持っていたとは想定外でした……」
「それは、私でも敵いそうにない相手だったのか?」
「……そうですね。ガラドン様でも、厳しい相手だと思います」
「そうか……」
その言葉を聞いて、少し考え込むガラドン。
そんな彼に、カイは「それに……」と言葉を続けた。
「それに、一つ面白いことがあったんですよ」
「面白いこと、だと?」
「ええ。――その賊の集団の中に、聖騎士団の、元団長様がいらっしゃいましたよ」
「何……ッ!?」
◆◆◆
「――聖騎士団の元団長を見つけた……だと?」
「ハッ。『聖堂会』の動向を監視する者から、そのような報告が上がっております」
黒服の忍者のような男は、目の前のカルマ王へとそんな報告をしていた。そう。王国暗部の男だ。
王の隣には、執事のゼナスも控えていた。
「元団長と言うと……そうか、彼女もまた異世界人だったか」
「ヒカミソウカ様……武術の才に恵まれた、近接戦最強の御方でしたね」
「ああ……それで、彼女は今どこに?」
「……それは」
王の問いかけに、口を濁らせる黒服。
「まさか――」
「申し訳ありませんっ! ただ今暗部も人間は皆疑心暗鬼になっていまして……一人で行動するようになってしまったのです」
「例の裏切者の件か。あれもまだ解決していないという事か?」
「申し訳ございません……」
「彼女の動向が分からなくなったのは痛いが、レバンス達の方は追えているのだろうな?」
「それでしたら、抜かりなく」
そう言うと、黒服は懐から一枚の紙を取り出して、その内容を読み上げていった。
「――『聖堂会、追放された騎士団と共に行動。大妖精の森にて何かを調査中のところ、賊の襲撃によって拠点へ撤退。賊の中に、元聖騎士団長の姿有り』」
「賊……か。何故賊の中にあの異世界人が……? おい、お前。何か心当たりはあるか?」
「……そう、ですね。――例えば、ヒカミ様が賊の中の誰かを好きになって一緒に行動している、とかですかね……?」
「――そんなことを聞いているのでは無いッ!! もう良い、下がれ」
「ひぇっ、も、申し訳ありませんでしたッ! それでは失礼いたします!」
まるで警察に見つかった泥棒のように尻尾を巻いて逃げていく黒服を、カルマ王は溜め息をつきながら見ていた。
そのまま、王は隣のゼナスに声をかける。
「それで……他の異世界人についてはどうなっている?」
「――現在も調査中です」
「そうか……」
「申し訳ありません。しかし、道中で調査隊が別の収穫をしたようです」
「別の収穫……?」
「ええ。何やら『ディクス大森林』にて大きな魔力の気配を感知したとか……」
「大きな魔力、か……。今調査隊は何処にいる?」
「先程その情報を受け取りましたので、まだ『ディクス大森林』の付近にいるかと」
「では、引き続き異世界人の調査を進めさせてくれ。大きな魔力とやらは、無視してもよい」
「かしこまりました」
◆◆◆
「――これで最後です。周りにはもう誰も居ません」
「よくやった、ユウ。そして――カナデ」
『いえ……』
十数人の小隊を、たった三人で壊滅させた者達が『ディクス大森林』に居た。
――そう。それは【魔双剣】を奪いにやってきた、魔王アレンと式神悠、そして影咲奏の三人だ。
「しかし一体、何の目的でこんなところまで来た人たちなんですかね」
「さっきの人間たちの事か? それなら――これだろう」
そう言うと、魔王は倒した男の懐から一枚の紙きれを取り出して悠に見せた。
「……何ですか、コレ。異世界人の調査……?」
「ククク……どうやら。その紙切れに書いてあることが本当だとしたら、今運命は我らの味方をしてくれているのだろうな――」
そう呟いて、魔王は不敵な笑みをこぼした。
『異世界人の隊をディクス大森林にて発見。急ぎゼナス様に折り返し連絡をするように』
次回は明日更新です!
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