#76 リヒトとカイ
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ちょっとブレてきてるから、何処かで自分とこの作品を見つめなおして、修正できるところは修正したい所存。拙い文章ですが、良ければこれからもお付き合いくださいませ
「……何かを、喋っている?」
里の中で何かを探している様子の集団の中に、一際目立った人物が二人居た。
一人は、前に見たことがある人物だった。あれは確か、『聖堂会』とかいう魔術師集団の会長の隣に居た男だ。
それと、もう一人は……何やら剣士のような男だが、そこまで偉そうな人間には見えなかった。
「もう少し、近づいてみるか……」
そんな二人が何かを喋っているようだったが、距離があるせいでその会話の内容は俺には聞こえなかった。
だからもう少し近づこうと思ったのだが……。
――ガサッ。
「しまっ――」
その時、俺は迂闊にも草木を揺らし物音を立ててしまったのだ。
「――ッ? 誰だ!」
しまった! 今の物音で、数名の人間がこちらに向かってきている!
姉さんたちも居るし、そいつら数人だけなら倒すことは簡単かもしれないが、それだと他の奴らにもきっと見つかってしまうだろう。
一体、どうすれば……。
「――紅蓮、大丈夫なの?!」
「いや、マズいかも……どうすればいいか……」
「――話し声が……! 隊長! やはりそこに誰かいます!」
対策を考える暇も無く、敵はすぐそこまで迫って来ていた。
いや、完全に敵と決めつけた訳ではないが、少なくとも味方でもないだろう。何故って、あの『聖堂会』のイケメン野郎は俺のことを知っているだろうからな。
それはつまり、俺が異世界からの召喚者だということも、数年前に居なくなっていることも知っているという事だから。
「クソッ……」
俺の不注意で、小さな物音なんか立ててしまったばかりに……。
姉さんたちと一緒なら、20人くらいなら相手に出来るか……?
「――声がしたのはそっちか?」
「ハッ! そこの木の陰から――」
クソ、悩んでいる時間はもうないか!
姉さんたちには悪いけど、アドリブで行かせてもらうしかないようだなッ!
「――ごめん、姉さんっ!」
「紅蓮っ!?」
――次の瞬間、俺は木陰から飛び出した。
「――うわっ! な、なんだコイツッ!」
「賊か? ならば殺しても構わないッ! レバンス様の計画を邪魔する者には正義の鉄槌を下せッ!」
「かしこまりましたッ!」
思い出した。あの指示を出しているイケメン野郎の名前は、確か『リヒト』だったか。
『聖堂会』の、若きエース魔術師……みたいな。そんな感じだったな。
――木陰から飛び出した俺は、飛び出す前に拾った小さな石をスキル『生存』の効果の一つである『投擲能力の向上』を利用して、近くにいた魔術師たちの顔面に投げつけてやった。
「――ぐわァッ!?」
「……こざかしい真似をする賊だなッ! 小石程度で俺たちが怯むとでも思ったか! 馬鹿めッ!」
「……いや、一瞬でも隙を作れたのならそれでいいのさ」
「何……?」
「――本命は、俺じゃない」
そう、俺が呟いた直後の事。
「――『身体強化』……ッ! 重い一撃、いっくよ~!」
「なッ……いつの間に背後に……ィッ!?」
俺の投げた小石程度に目がくらんだ一瞬の隙に、リヒトたちの背後に回り込んでいた姉さんが、後頭部に重い拳を叩きつけていた。
そして……
「燃えてっ!!」
「こういうのは速攻なのよっ!」
冥の炎の魔法と、メルの鋭い爪の一撃がリヒトの近くにいた4名の魔術師を気絶させたのだった。
しかし、まだ油断はできなかった。
「……賊め……よくもリヒト様をっ!」
「カイ様! 我々も!」
「――ああ、そうだね。僕たちも、やっちゃおうか?」
これだけ勢いよく飛び出してしまったのだ。
それは、気付いていなかったであろう他の敵にも気づかれてしまうという訳で……。
さらに、姉さんの一撃を喰らったはずのリヒトも、まだよろよろと立ち上がっていた。
「クソが……この俺様にこんな事をしてくる奴が居るとはな……ァッ!」
「はは、リヒト君。君もしぶとい男だねぇ。流石魔術師の若手エースってところかな?」
「うるせぇぞカイ。いいから賊を処分するのに集中しろ。偉大なるレバンス様の計画を邪魔することは、絶対に許されないのだから」
「はいはい。そうだねぇ。レバンス様は、偉大だからねぇ……。それに、賊の中にも面白い人もいるみたいだしねぇ」
カイ、と呼ばれた男は姉さんの方を見ながら小さく笑った。
「……まさか、こんなところで出会えるとは。ねえ、聖騎士団の元団長様?」
「カイ……まさか貴方と戦うことになるとはね……」
「はは、どうしたんですか? 感動の再会じゃないですか? もっと喜んでもいいんですよ?」
「うるさいわね……あんた強いし戦い方もいやらしいから、あたし嫌いなのよ」
「ハハ、これは耳が痛い評価だ。ですが、それが僕の武器なので――」
――『後ろに避けろ! 紅蓮ッ!』
「ッ!?」
俺は、いきなり聞こえてきたカグラの声に言われるがまま、体を後ろへと動かした。
すると、さっきまで俺が経っていた場所には、小さな氷山のようなものが出来ていた。あれは……魔法だろうか。
「おや、気付きましたか。すごい胴体視力ですねぇ。そのままそこにいたら、足がカチンカチンに氷漬けになったのに……」
「カイ……まさか会話の途中に紅蓮を狙うなんて……!」
「ハハ、言ったでしょう?これが僕の武器だって。そして――」
カイという剣士の男は、俺の方を見ると、
「――そこの貴方。あなた……何か強大な力を隠し持っていますね?」
「……俺が、強大な力を……?」
……それは、カグラの事だろうか。
だが、何故それを奴は分かった……?
「せっかくだから、その力……見せてくださいよ。僕、弱い者イジメってあんまり好きじゃないので」
次回は明日更新です!
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