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最弱な俺が『最強』の美少女たちに姫扱いされる件  作者: テトラ
 第一部 人間時代 最弱の統率者誕生編  序章 ≪最弱の始まり≫
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#7 洞窟に住み着いた巨悪

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それでは今回もお楽しみください!



『ぐれん♪ぐれん~♪』

「桜花……分かったからもう俺の名前で歌うのはやめてくれないか……?」

『嫌なのだ~~♪』

「はぁ……ったく調子のいい奴め」


 俺が、聖剣コイツに『桜花』と名付けた直後のことだ。

 桜花は人が変わったかのようにテンション高くなり、このように俺の名前で変なリズムで歌うようになってしまったのだ。


 楽しそうなのはいいことだが、流石に自分の名前を連呼されると……なんかこう、心にくるものがある。


『って、そうだったのだ! ぐれん、寒くないのだ?』

「え? まあ……クソ寒いけど」


 天井は一部吹き抜けになっているし、出入り口ももちろん扉なんてない。

 そこから吹き込んでくる風がとても冷たいのだ。おまけに雨に雲というアンハッピーセット付き。


 俺の濡れて凍えた体は、ぶっちゃけると既に限界を超えていた。

 それでも、意識が保っているのは桜花のお陰なのだろうか……?


『じゃあいったん私を置くのだ! 台座にでもさすといい!』

「わ、分かった」


 震える手で桜花を台座に再び戻す。

 すると桜花の刀身が赤く輝き出した。


『今はまだこれしかできないが、火属性の魔法だ。服を乾かしたり、冷えた体を温めることくらいはできるから、遠慮なく使うのだ!』

「おぉ……ふおおおおおおぉ!!!」


 桜花が魔法を使った瞬間、俺は寒さとは別の理由で震えた。


『ど、どうしたのだ。急に気持ち悪い声なんかだして』

「い、いや……俺、この世界に来て初めて魔法を見たからさ! 感動しちゃって、つい……」

『初めて、か。そかそか……にへへ、ワタシのすごさを思い知ったかなのだ~!』

「ああ! ガチですげえよ!」

『そ、そうか? 面と向かって褒められるとなんだか照れるのだ』


 それにしても、桜花の身体からは実際に火が出ている訳じゃないのに、まるでそこに火が灯っているかのような感覚だ。

 しかもその火は、火傷するような熱さじゃなくて、ほっこりするような温かさで……。


 ほんとにすごいな……。

 魔法も、それを使える桜花も。


『本当なら服を乾かすだけの魔法とかもあるのだがな……。残念ながらワタシはそういう魔法は覚えてないから、こうやって地道に温まってもらうほかないのだ』

「いやいや、これでも十分すぎるくらいだよ。それよりも、辛くないか? 魔力って無限にあるわけじゃないんだろ?」

『だ、大丈夫なのだっ! これくらい朝飯前なのだ!』

「そ、そうか。それならいいんだけど……。こんな俺のために、お前が傷つく必要なんてないんだからな? 辛かったらすぐに――」



 ――パキッ。



「……今の、何の音だ?」

『? ワタシには何も聞こえなかったのだ?』

「そうか……まあ洞窟だしこんな音くらいするもんか」


 天井の石でも落ちたのだろう。

 そう思った矢先の出来事だった。



「――シュルル……」



 目の前に、巨大な蜘蛛の化け物が現れたのは。


「え……」

『あ、アイツは……『タイラントスパイダー』!? どうしてこんなところに……』


 見た目は、いつも見るような気持ち悪い蜘蛛の見た目だ。

 しかし、異常なのはその大きさだった。全長何メートルとか、そういうのはパッと見じゃ分からないけど……一目で異常と分かるくらいにはデカかったのだ。


 自動車と同じくらいか、それより少し大きいくらいのサイズ感の、文字通りの『化け物』だった。

 って、何をそんなに冷静に考えてるんだ俺は! 早くここから逃げないと――


「あ、れ……」


 あれ、おかしいな。

 足が、動かない?


『なにをやっているのだぐれん! 早くにげるのだ!』

「分かってる……そんなことは俺が一番分かってるよ! でも、足が――」


 吹き抜けから現れたその化け物を見た瞬間、俺の中を支配した感情――恐怖。

 出入口は一つしかない。桜花を回収して、そのまま逃げなきゃいけないのに。


 怖くて、足がすくんでしまっている。


「クソ……動け! 動けよっ!」 

「――シュルルル……」


 ドス……ドス……と蜘蛛の化け物――タイラントスパイダーはゆっくりと俺に近づいてくる。

 どうする……どうすればいい?


『ぐれん……どうするのだっ!? このままじゃお前は――』


 そうだ……姉ちゃんが言っていた!

 『恐怖に支配されたときは、それを別の感情で支配し返せばいい』って。


 そして、それが可能なもっとも簡単な方法は――


「これで……!」


 俺は足元に転がっていた手ごろな石を拾うと、それを俺の腕めがけて――叩きつけた。


「いッッ……た」

『な、なにしてるのだぐれん! 頭がおかしくなったのか!?』

「安心しろ……普通、だ」


 ――そう。恐怖を、痛みで塗り替えること。これこそが一番簡単な恐怖の支配方法なのだ。


「よし……動く、動くぞ……!」

「――シュルルラアア!!!」


 しかし、俺が動けるようになった時には、もう既に手遅れだった。

 タイラントスパイダーは、俺の眼前までやってきていたのだ。


『ぐれんっ!!!』


 まだ、間に合うか……?

 桜花を手に取った俺は、そのまま走り出す。


 しかし――


「フシャアッ!!」

「うぐああっ…………!!」


 タイラントスパイダーは、その長くて鋭い手足で俺のことを軽く薙ぎ払った。

 薙ぎ払われた俺は、そのまま洞窟の壁に背中を打ち付け、倒れてしまう。


「くそ……痛ぇな……」

『ぐれん……大丈夫かっ!?』

「ああ、なんとか……」


『危ないっ!!!!!』

「ッ……!」


 間髪入れずにタイラントスパイダーは攻撃を仕掛けくる。

 が、体が大きい分動き自体はそこまで早くはない。だが、休まずにかわし続けられるほど遅い攻撃でもないのも事実だ。


 桜花の声に素早く反応した俺は、すぐに横に転がってタイラントスパイダーの攻撃を回避した。

 だが、そこに新たな攻撃が飛んでくる。


「シャアッ!!!」

「うああっ! こ、これは……!」


 ――蜘蛛の、糸……!


『う、動けるか? ぐれん!』

「ダメだ……ッ! 身動きが取れない……!」


 タイラントスパイダーが吐き出した蜘蛛の糸は、すぐに俺の全身に絡まりついて俺の動きを封じていた。

 まずい、このままじゃ回避ができない……!


『ぐ、ぐれん! 前!』

「嘘、だろ……!」


 気付くと、タイラントスパイダーの鋭い切っ先が俺の目の前まで来ていた。

 これは流石にかわせない……か。


『だめだぐれんっ! あきらめちゃだめなのだっ!!』

「だけど!」

『絶対に、死なせるわけには――』



 刹那。桜花の刀身が、赤く煌々と輝き出して――



『――いかないのだあああああああああああああッッッ!!!!!』



 ――紅蓮ほのおの柱を、生み出した。



【topics】★魔法について

 魔法は、魔力を消費して繰り出すことのできる力。魔力量は、能力値の『魔力』と同じ数値で表される。

 魔力は無限には続かず、連続で使用したり、強力な魔法を使用すると魔力切れとなってしまうこともある。

 魔力は時間が経てば回復するが、魔力回復のポーションや魔力回復効果のある食べ物を摂取することで時短回復も可能。

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