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最弱な俺が『最強』の美少女たちに姫扱いされる件  作者: テトラ
第八章 ≪夕焼け空と恋模様≫
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#66 喧嘩

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今回少し複雑な書き方してます。視点変更たくさん使って臨場感を出しました。



「――今までどこに行ってたんだ」


 俺は、目覚めてすぐに覚醒していた。

 というのも、あれから帰ってこないメルをレイニーと一緒に探したのだが、結局見つからずじまいだった。


 だから心配だったが、一度眠って体を休めてから再び探しに行こうとしていたら。

 俺たちの眠る大部屋の隅っこの方で、一人ちょこんと膝を抱えて丸くなっていたのだ。


「なあ、メル。何でさっきから黙ったままなんだよ」


 正直な話、俺はかなりイライラしていた。

 俺はそれだけ彼女のことを心配していたのだし、彼女の行動すべての理由が不可解だったからだ。


 俺は低い声で、メルに何度も問いかけた。

 しかしメルは、さっきから胸を押さえて黙ったままだった。


「まあまあ、紅蓮。いったん冷静になろうよ。ね?」

「姉さんは黙ってて」

「ひゃいっ!?」


 今は俺とメルが話をしているのだ。

 俺は彼女とはそれなりの時間を過ごしてきたつもりだ。


 だから、この世界では桜花の次くらいには信用できる人だと思っていたんだ。

 もちろん姉さんや冥は別だぞ。信用してないわけが無いからな。


「ぐれんに……ぐれんに怒られた……」

「お、お姉ちゃん。怒ったお兄ちゃんは結構怖いですから……いったん外に行きましょ?」

「うん……。ぐすん、冥、ありがとね」

「なんですか、寄りかかってきて。いいですか、お姉ちゃん! わたしだって病み上がりなんですよ!?」

「天才だからだいじょうぶでしょ~?」

「ま、まあ……。それはそうですが?」


 しっかりと薬を飲んで寝たお陰で、冥の身体を襲っていた熱は引いたようで、もうすっかり元気になっていた。

 そんな冥は、しょぼくれた姉さんを支えながら、部屋の外に出ていった。


 部屋には、俺と、メル。

 そしてモネとレイニーの四人が取り残された。


「…………」

「なあ、そろそろ何とか言ったら――」

「――うるさいわよ」

「……は?」

「うるさいって言ったの! いいから放っておいてよ!」

「……だから、なんで――」


 やっと喋ったと思ったら、いきなり叫んで俺に威嚇してきたメル。

 俺はそんな彼女の腕を掴もうとしたのだが――


「――離しなさいッ!!」

「い……ッ」


 直後、俺の手首から血が流れ落ちた。

 メルに、引っかかれてしまったようだ。


「……ぁ、う……」

「痛い、な。何、するんだよ……」

「――な、何、って……」


 ――違う。違う。

 私は、こんなことがしたかったわけじゃない。


 私は、ただ、彼に触れたくて――


「――じ、自業自得、じゃない……。グレンさんが、私にいきなり、さ、触るから……」


 ――なに、言ってるの?

 謝りなさいよ、私のバカ! なんで、なんでそんなことを言っているの?!


「レイニー! 急いで治療用の道具を集めてきて!」

「う、うん!」


 どうやら、モネが俺の怪我をなんとかしようと動いてくれるみたいだった。

 が、今はこんな怪我にかまけている場合じゃない。


「何で、そんなことを言うんだ。メル」

「……ち、ちがっ…………い、いや、違くないでしょ? グレンさんのせいよ!」


 ――何を、何を強情になっているの!

 私は、なんで素直になれないの!? 今まで通りだったら、こんな事なかったはずなのに!


 なんで……なんで!


「俺の、せい? 俺が、一体何をしたって言うんだよ!」

「ぐ、ぐれんさん……落ち着いて――」

「――今は、ちょっとだけ止めないでくれ。モネ」

「は、はい……」


 モネには申し訳ないが、ここまで来たら俺も後には引けない。

 なんで一日帰ってこなかったのか。どうして何も言わずに行ってしまったのか。


 俺はそれを彼女から聞き出さないとならないから。


「――なんで、何も言わずにどこかへ行っていた? 目的は、何だったんだ?」

「そ、それは……」


 ――そんなの、言えるわけがない。

 メイさんが、グレンさんに告白しているのを聞いて、胸がズキッとしたから、なんて。

 絶対に、言えるわけが無い。


「――なんだって良いでしょ!? 大体、なんでグレンさんがそこまで私の心配をするわけ!?」

「……? なんでって、そりゃもちろん……」


 ――そりゃもちろん…………なんだ?

 もちろんの後に、俺は何を言おうとした?


 友達だから? 仲間だから?

 いや、違う。そんなことを言おうとしたんじゃない。俺は今、『大切な――』


「いや、何でもない」

「ほら! やっぱり理由なんてないんじゃない!」


 ズキン。

 あれ、なんで今私は胸の奥に痛みを感じたの?


「……いや、それは……」


 あれ、おかしいな。

 俺は、なんで今誤魔化したんだ?


 言えばいいじゃないか。『大切に思っているから』って。

 境遇が似ていて、キミの気持ちを分かって上がられるから、って言ったあの日から。


 俺にとって君は、家族と同じくらいかけがえのない存在で――


「――もう、いい……ッ!! 今は一人にさせて!」

 

 そう言って、メルは部屋を飛び出していってしまった。


「……ああもう、クソ。一体何なんだよ……」

「……災難でしたね、ぐれんさん」

「モネ……ありがとう」


 モネは、話が終わった俺に近寄ってくると、メルと入れ違いで戻ってきたレイニーから包帯を受け取って、俺の手首に巻いてくれた。


「多分、あれは発情期なんだと思います」


 モネはそう言った。


「発情期……?」

「はい。獣人族にだけ見られる現象で、心が不安定になる成長期などに発症するものだと聞いたことがありますね」

「それで、メルは今あんな風に……?」

「まあ、それもありますけど……少しはぐれんさんも悪いんですからね?」


 めっ、と俺に人差し指を向けてくるモネ。

 俺に悪いところって…………いや、まああったな。ちょっと冷静さを欠いていた部分があると思う。



「――じゃあ、そんな訳なので、私とデートしていただけませんか?」


「…………? 聞き間違い、かな?」



 何か、今……会話になんの関連性も無い話題が出たような……?



「いいえ? 聞き間違いなんかじゃんないですよ? ――私と、デートしてください!」


『はあああああああああああああああああ!?』



 直後。俺と、レイニーと、ついでに何故か桜花までもが驚きの叫びをシンクロさせるのだった。

次回は明日更新です!

高評価↓↓↓ぜひ

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