#61 戦いのその後:姉弟
お待たせしました!新章開幕でございます!
今日は活動報告も同時に更新しますよ~!
『大妖精の森』で起きた戦争から、数日が経った。
――俺、こと緋神紅蓮は現在何をしているのかと言うと……
「――よし、あがり~!」
「また姉さんの一抜けかよ~」
「ふふん、伊達にみんなより長く生きてないわ!」
『ババアなのだ』
「誰さ今あたしのことをババアって言ったの!」
……みんなで仲良くカードゲームで遊んでいた。
もちろんこの世界にそういう娯楽は無かったが、「ないなら作ればいい!」と、蒼華姉さんと冥が率先して作ってきたのだ。
ちなみに種類はシンプルなトランプ。
メルやモネ、レイニーにもルールを教えて、みんなで楽しく遊んでいる訳だ。
あの日、あの戦いの後。
桜花と悠兄さんの戦いは、桜花の圧勝で終わり、桜花に貸していた体もすぐに帰ってきた。
正直、考えることは山ほどある。
それは、俺だけじゃなくて、皆にも。
だから、今俺たちはヴェインの街から少し外れた長閑な村に訪れて、大きな休暇を取っているのだ。
何故ヴェインの街じゃないのかというと、聖騎士団の一件があって蒼華姉さんが聖騎士団の団長から除名処分となり、今は街に居づらいのが一つ。
そして、行く宛の無くなったモネとレイニーも同行することになった為、人間慣れしていない二人を人間族最大人口の街に連れて行くのは良くないと思ったのが二つ。
最後に、色々と考え事をするなら静かな場所がいいと思ったのが三つ。
これらの理由から、俺たちは今『パパル村』という村に来て、そこの宿の大部屋一室を借りて休日を楽しんでいたのだ。
「――次はわたしも参加するわ! ソウカ様の戦い方を見て私もやり方が分かったから!」
「じゃあ俺が抜けるよ。――メル、言ったからには姉さんを負かしてくれよ?」
「ええ! 任せておいて、グレンさん!」
意気揚々とカードを握るメルに、俺は優しく微笑むと、その場を離れた。
「あ、お兄ちゃん……どこに、行くんですか?」
「冥、俺はちょっとだけ外に出てくるよ」
「あ、あの……外は危ないかもだし……ここでわたしたちと一緒に居た方が……」
「――ごめんな、冥。今はちょっとだけ、一人にしてくれないか」
「あ……う……。わ、分かりました……」
今にも泣きそうな冥。いつもなら頭に手を置いて慰めてやるところだが……。
今の俺は、少し考え事をしたい気分だった。だから、冥のことは気にも留めずに、桜花を手に取って外に出て行った。
――村はとても綺麗な場所だった。
風景が美しい村。それなのに、人は全然いなくて、静かで、とても心地のいい場所だった。
俺はちょうどいい高台を見つけ、そこまで登った。
見下ろすと、小川がさらさらと流れているし、ちょうどいい強さの風も吹いていて、まるで『優しさ』そのものに包まれているようだった。
「――あ、いたいた」
「……姉さん? トランプはどうしたの?」
「勝ったから抜けてきたよん」
「早くない!? もう勝ったの!?」
「まあまあ、そんなことはいいからさ。一つだけ、伝えておこうと思って」
「何……?」
「――あんまり、自分を責めないようにね。紅蓮が今回の……ううん、この世界に来てからずっと辛い思いをしてきてるのは知ってるから。だから、紅蓮の気持ちは理解できるよ」
「姉さん……」
「でも、全部自分で抱え込んじゃダメだからね。周りにはあたしや、冥。それにメルちゃんもいるんだから! 仲間を、友達を……そして家族を頼って!」
まるで心の内を見透かされているかのような言葉だった。
だからこそ、その言葉に涙が込み上げてきて……
「――あたしが言いたかったのはそれだけ。ごめんね、一人の時間を邪魔しちゃって」
「……ううん。いいよ、気にしないで。それに、今の姉さんの言葉……とっても嬉しかった。暖かかった。だから、むしろありがとう……」
「ふふっ、あたしは紅蓮のお姉ちゃん、だからね! ――絶対に、これから先も、何があっても守るから……だから、安心しててね」
「うん、頼りにしてるよ。――お姉ちゃん」
そう言って、俺は微笑んだ。
俺の顔を見た姉さんは、一瞬だけ真っ赤になったかと思えば、すぐに顔をそらして、
「じゃ、じゃあもうあたしは行くからね! 早く戻ってくるんだぞ!」
なんて早口で言って宿の方に戻っていってしまう。
「……ありがとう、姉さん」
俺の頬には、一筋の涙が伝っていた。
次回更新は明日です!
少しづつ気持ち切り替えて、また頑張っていこうと思いますんで良ければ
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