幕間4 蘇りし少女
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よし
異世界から召喚された人間の中で、突出した能力を持っていた少女。
それが、影咲奏という少女だった。
力を持つ者は、敵味方問わず狙われてしまうのが世の摂理だ。
味方からは強大な敵と戦うための切り札として。敵からはいずれ脅威となりうる芽として。
「だから、我はこの少女を殺したのだがな……」
魔王はその少女の肉体を見つめながら、溜め息を吐いた。
そう、この時影咲奏という少女を殺した魔王の選択は間違っていたのだ。
いや、見方によってはあるいは正しかったのかもしれないが。
「――まさか、『影魔法』の才能があったとはな……」
「それは、一体?」
悠は魔王に尋ねた。
「ユウよ、この世界の魔法の概念については理解しているか?」
「え、ええまあ。魔王様に教えていただきましたから」
魔法――それは、この世界においては常識ともいえる力で、物語に出てくるような非科学的な力だ。
魔力の能力値が高い者ほど、より威力や効力の強い魔法を扱えることができ、その延長でスキルを獲得できればさらなるパワーアップが見込める優れた力の一つである。
魔力には属性があり、『炎・水・風・土・光・闇』の六つの属性が主となる。
さらにそこから、氷や雷、そして今回問題となっている『影』など、細かい魔法属性に分類されているのだ。
中でも光属性と闇属性に属する魔法を扱える者は数が少なく、かなり貴重な存在となっているのだが……。
「それなら、魔法が努力次第では誰にでも扱えることも分かっているな?」
「はい。適正によりますが、魔力がほとんどない人でも使えるんですよね」
「ああ、そうだ。それが、魔法だ――」
魔王の言葉に、悠は首を傾げた。
「あ、あの……一体何が言いたいのですか……?」
「――魔法には、ごく稀に『特定の人間』のみに扱える魔法というのが存在するのだ」
「なるほど……それは、魔法とは少し違うような気もしますね……」
「ああ、まるで特殊能力のような物だ――」
それは、努力や才能に関係無く、選ばれた人間にのみ与えられる力だった。
魔王は、影咲奏を再び見つめて言った。
「――『影魔法』、まさにそれこそがそんな『特殊能力』の一つなんだ」
「……ッ。そういう、ことですか」
「彼女を殺したあの時は気付かなかったが……後々異世界人について気になって調べてみたらそうだと判明したのだ」
魔王は再び溜め息をついた。
そして、少しだけ悩むと。
「――そろそろ、頃合いか」
「では、彼女を目覚めさせるのですか――?」
「ああ、肉体の再生や魔族としての転生も全て完了しているしな。ただ、記憶の消去が完全でないのは心残りだが……今は少しでも戦力が欲しい」
「そうですね。今は問題も多いですし、マグナの代わりもまだいないですしね」
「ああ、だからそろそろ頃合いなのだ」
魔王は彼女を眠らせている巨大な装置に近づいて、そこの開閉スイッチに手をかけた。
「――ユウ、彼女に着替えさせるものを用意しておけ」
「かしこまりました」
「では――いくぞ」
カチ……。
スイッチが魔王の手によって押され、装置が煙を吐きながらゆっくりと開いていく。
中で少女を包んでいた液体は徐々に床に流れ出していき、やがて少女の裸体は完全に空気にさらされた。
「――――。」
少女は、目を開いた。
「――ユウ」
「はい」
悠が、少女にひとまず体を隠せるような布の一枚服を手渡した。
「……ん」
少女が服を着ると、装置の中からゆっくりと出てくる。
少し目をぱちぱちとさせて、周囲の様子を確認すると、少女は一言。
「――私は……? 貴方たちは――?」
「私は――魔王。魔王、アレン・ディヴォ―トだ」
「ま、おう……」
「――安心しろ。お前は今この瞬間、完全に我の庇護下に置かれた」
――我と共にある限り、命の保証はしよう。今度こそ、な。
次回は明日更新!!
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