幕間3 積み重なった問題
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狂は燃え尽きてしまう前に早めに更新、珍しい魔王視点からの先出情報ありです
「――ユウ、どういうことだ。何故お前はあの場所で戦闘していた?」
自分の城に帰ってくるなり、魔王アレンは悠に問い責めた。
「……申し訳ありませんでした。理由は二つあります」
「言ってみろ」
「一つは、魔王様の帰りが予定よりも遅かったので、心配して様子を見に行ったらすれ違いになってしまったのです」
「……そうか。それはすまなかったな」
「そして、もう一つは――ボク自身の私情、です」
「あの聖剣持ちの少年、か?」
「はい……」
悠の言葉を聞いて、色々なことに合点がいった魔王はそれ以上責め立てることはしなかった。
「……まあ、この件はもういい。それよりも今は、次の策を練ろうじゃないか」
「次は、一体何をなさるのですか? ――今は問題点がいくつも重なっているように見えるのですが」
「ああ、そうだな――」
魔王はそう呟くと、顎に手を当てて「どうしたものか」と長考した。
「ククク……まずは問題となっている事案を挙げていこうじゃないか。――ユウ、言ってみろ」
「え、あ、はい。――まず初めに、先程の奴らからですね。中でも重要なのは、やはり紅蓮の持つ『聖剣』でしょう」
「ああ、そうだな。覚醒を果たした聖剣……あれの奪取は我々にとって必須だな」
「魔王様……一つ気になっていたのですが、何故我々は『聖剣』を狙うのですか?」
「……そうか、まだお前には話していなかったか。なら、話しておくことにしよう」
そう言うと、魔王アレンは一冊の辞典のような本を取り出して、悠にそれを手渡した。
「これは?」
「そこには、『十大武具』と呼ばれる大昔に誕生した伝説の武具に関することが記されている」
「伝説の、武具……」
魔王は悠が本をめくっている中、言葉を続けた。
「かつて、世界を救ったとされる五人の英雄と、彼らと戦った五人の災厄級の魔族の力がそれぞれ封印された武具……それが、『十大武具』と呼ばれる代物だ」
「聖剣も、その内の一つという事ですね」
「ああ。そして、我々の目的は世界を魔王軍の手中に収めることだ」
「……大いなる力を以て、世界支配に乗り出す……そういうこと、ですか?」
「ああ、そうだ。魔の力が封じられた武具を用いて力を奮い、脅威となり得る聖なる武具はこちらで厳重に封印しておく――そうすれば、より我々の計画は盤石なものとなるのだ」
両手を大きく広げ、魔王は高らかに言った。
そんな彼の姿に、悠は輝きの目を向ける。
「さあユウ。次の問題点を言ってみろ!」
「はい。――次に問題となるのは、やはり紅蓮の仲間たちが持つ力でしょう」
「そうだな……あれは厄介なモノが揃っているな」
魔王は、三枚の写真を自身の机の上に並べて再び思案した。
「大いなる大罪の力――その中でも格別能力の優れた【憤怒】がまず一つ」
「そして、魔王様の見立てでは、獣人族の少女が持つ力が、古の時代にいた鬼族なるものの力だと……」
「ああ、それが二つ目。そして何よりも、神を受け入れられる器の持ち主が問題だ」
「龍神を宿した少女……ですか」
「ああ、流石に相手が神となると、『今の』我では敵わないからな」
「いや、あの力を使えばあるいは……」そう呟いた魔王だが、すぐに頭を振って自身の考えを否定した。
「いや、油断は禁物、だな。さあユウよ、まだまだ問題点はあるぞ」
「ええと……そうですね。――ああ、そうでした。『聖剣』が発見された場所の付近の調査結果もかなり重要な物でしたね」
「ああ、そうだな。――『魔双剣』の気配となると、見逃すわけにもいかないだろう」
「確か場所は……『ディムナ湖』、でしたか。そこから強い魔力反応が感知された、と」
「恐らく、それが『魔双剣』だろうな」
『十大武具』の一つ、『魔双剣』なる武具の存在を既に魔王軍は把握しているようだった。
壁に張り出された地図には、大きな湖に赤い丸印もつけられている。
「――そうだ、魔王様。例の作戦はどうなっているのですか?」
「ああ、当然だがそれも問題になっている。――『地底世界』に関する調査……今は四天王の『ゲレス』にやらせているから任せておけばいいだろう」
「ゲレスに……ああ、それなら安心ですね。彼はボク以上に策士な人ですから」
「フッ、そうだな」
ゲレスは、魔王軍四天王の一人で、マグナに続く序列三位の魔人だ。
悠の言う通り、彼はかなりの策士で情報収集も得意なので大丈夫だろうと二人は考えていた。
「そして――残る問題点はあと一つ」
そう言いながら、魔王は近くに設置してあった巨大なカプセル型の装置を見て言った。
「――彼女を目覚めさせるタイミング、ですか……」
装置の中には、一人の少女の姿があった。
――影咲奏。そう。それは二年前に魔王の手によって殺された少女の姿だった。
次回更新は明日です!
幕間まだまだ続きます。足りなかった情報を補完していくわよ
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