#58 目覚めし相棒
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神回です
「悠兄さんが、俺を殺す……? な、何を言って……」
「――言った通りだよ、紅蓮。ボクは君を殺して、その聖剣を奪わせてもらう」
悠兄さんの視線は、俺ではなく、俺の手にある『桜花』に集中していた。
「……本当に、そんなことが……」
「出来るさ。だって、ボクは魔王軍四天王の序列一位なのだからッ!」
「魔王軍四天王の……だってッ!?」
本当に、一体何がどうなっているんだ!?
目が覚めたら、冥の兄である悠兄さんが蒼華姉さんを襲っている魔人で、しかもあの魔王の部下の四天王序列一位って……。
でも、俺はそれを受け入れるしかなかった。
彼の頭にある禍々しい二本の角に、さっきのカグラの言葉。カグラは、ハッキリと『魔人の襲撃者』と言ったんだ。
だから、これは全部現実で――
「――油断してるとすぐにやられるって昔教えなかったかなァッ!?」
「ッ……!!」
まずい、長考しすぎた!
悠兄さんの振るった剣が、もう目の前まできて――
「――それはこっちのセリフなんだけどッ!?」
「貴女ならそう来ると思ってましたよッ!」
蒼華姉さんが割って入ろうとすると、それを見越していた悠兄さんが剣の振るう方向を急転回させた。
「それくらいならどうってこと――」
「――そう、思いますよねッ!」
「――なッ……!!」
直後、軽い爆発音がして、姉さんは吹き飛ばされていた。
悠兄さんは、剣でも攻撃を囮にして、左手で魔法を発動させていたのだ。
「そろそろ大人しくしててください」
「――だ、れが……」
「――まずは一人」
「あがッ――――」
倒れる姉さんに、悠兄さんは容赦なく拳を叩きこんで気絶させた。
「に、にぃ……なんだよね……どうして、どうしてこんな事……」
「悪いな、冥。お前の回復スキルも邪魔だから――」
気付いた時には、俺の視界から悠兄さんはいなくなっていた。
「――ァッ……!」
「これで、二人……」
そう言いながら、今度は後方で冥を簡単に気絶させていた。
「妖精族の双子――まあ一応、外野がいると気分が削がれますからね」
「まさか――ッ!」
悠兄さんは、モネとレイニーを見ながらそう呟いていた。
「――や、やめろ! お姉ちゃんに、近づくな!」
悠兄さんの次の狙いが分かったからか、レイニーは男らしくモネの前に立ち塞がった。
しかし……
「――邪魔だ、子供の分際でボクの前に立つな」
「うああッ!」
「レイニーっ!!」
悠兄さんは相手が子供だろうと構わず拳を振るった。
「な、なんで私たちまで……!」
「ああ、せっかくの紅蓮との大切な時間だからね。二人で過ごしたいんだよ、ボクは」
「悠兄さん! それなら俺たちだけ場所を変えればいいじゃないかッ! モネやレイニーは関係ないだろッ!!」
「――ああ、それもそうだね。確かに、さっきの子供は関係ないよ」
「なら……」
「――でも、彼女は別だ。神を受け入れられるだけの力があることが分かった」
「え……」
「神は、魔王様が恐れる唯一の存在だ。――だから、キミだけはここで始末させてもらう」
始末? 始末って……まさか、殺すのか?
モネを? そんな事……
「な、なんで剣を構えてるんだ……悠兄さん!」
「――言っただろう、殺すと」
ふ、ふざけるなよ……!
モネは、儀式に利用されて……すごく苦しい思いをして……
そんな傷心の彼女を、殺すなんて――
「これで、三人目――」
「やめろおおおおおおおおおおおおおおッ!!!!!」
俺は、手を伸ばした。
届かないことは分かりきっていたのに。モネを守りたい、ただその一心で。
声を荒げ、手を伸ばして。
悠兄さんの構えた剣が、モネに突き立てられようとしたその時だった。
『――乗り掛かった舟だ。我は、貴殿と彼女だけは最後まで守ると約束しよう』
俺の中から、声が――カグラの声が聞こえてきて。
――その瞬間、世界が停止した。
「こ、これは……」
『――我の力だ、紅蓮』
「た、助かったよカグラ……! でも、状況が最悪なのには変わりない……一体、どうすれば悠兄さんを止められるんだ……!」
『――さあ、早く言わんか。時間はあまり無いのだぞ?』
……? それは、俺に言ってるのか?
いや、違うよな。じゃあ、一体誰に――
『――時は満ちた。長らく力を蓄えていたが、ついに至ったのだ!』
ッ!! そ、その声は……ッ!
『――ぐれんっ! 久しいのだ! ワタシが戻ってきた、のだ!!!!!』
「――桜花ッ!!!」
次回は明日更新!
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