#56 裏切りのにぃ
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「つ、強い……っ!」
「…………」
「ふむ……殺さないように手加減するにはなかなか難しいものだな」
あれで手加減してたの……と蒼華は驚いていた。
龍神カグラが憑依したモネと戦っていた蒼華と冥、メル、レイニーの四人は彼(彼女)に圧倒されていたのだ。
「グレンさんを……グレンさんを喰ったお前は絶対に許さない……ッ!!」
そう自分を鼓舞するように叫んだメルは、超スピードで飛び出した。
「スピード、パワー共に鬼には劣るな……なんだ、お前は鬼ではなかったのか?」
「何言ってるのか分からないのよッ!!」
目にも止まらぬ連撃で、カグラを押し込んでいくメル。
しかし、カグラはその全てを余裕で受け流していた。一切効いていないといった様子で。
「クソッ! なんで……なんでッ!!」
「――さて、あちらの話も終わったことだし、そろそろこちらも終わらせるかな」
「何、言って……」
「少し準備が必要なのだ。だから、それが終わるまではそこで大人しく眠っててくれ」
そう言いながら、カグラはメルたちに一歩ずつ近寄った。
そして、先頭にいたメルが一瞬だけ瞬きをした刹那――
「――あがッ……!!」
「メルちゃんッ!!」
カグラは、メルの腹を殴って後方まで勢いよく吹っ飛ばしたのだ。
「さて、次はそちらの鬼だ」
「クッ……」
カグラは、次に蒼華を見てそう言った。
先程と同じように一歩ずつ蒼華に近づいていくが、蒼華は逃げるように少しずつ後退していった。
「フン、退いても同じことなのが分からないのか?」
「でも……ここであたしが倒れちゃったら……」
「もう遅い――」
カグラは、一歩踏み込んで蒼華に高速で近づいた。
そして、その拳を腹に――
「――それはさせませんよ」
――当たる直前、カグラの拳は突如現れたその男の剣によって阻まれた。
「いやいや、一撃で魔王様から頂いたこの剣が壊れるって……どんな怪力してるんですか、お嬢さん」
「――誰だ」
「そんな……どう、して……」
その男の姿に、冥は驚いていた。
この世界に、居るはずのない人間――いや、人間と呼ぶにはその頭の角は禍々しく、魔人と呼んだ方が正しいだろうか。
そんな彼の姿に、『妹』である冥は、ただただ唖然とすることしかできなかった。
「――どうして、悠にぃがここに……ッ!?」
「やあ、冥。久しぶりだね。二年ぶり、かな?」
――そう。それは、冥の実の兄である、式神悠だったのだ。
「――なぜ我が拳を阻んだ、魔人よ」
「……なるほど、そういう事ですか。だから魔王様は予定が狂ったのですね」
「話を聞いているのか、魔人よ」
「ええ、ちゃんと聞いていますとも。龍の神に、鬼の王……そして、大いなる罪――」
カグラの憑依したモネ、そして後ろの方で気絶しているメル、鋭い目つきで悠を睨む蒼華。
彼女たちを順番に見た悠は、そう納得したように呟いた。
「邪魔が入ったから魔王様は帰りが遅れた……とすると、入れ違いになったという事ですかね」
「なぜ、我の拳を――」
「――悠、アンタ……さっきから魔王様魔王様って言ってるけど……まさかアンタ、その角といい……魔王軍に入ってるとか言うんじゃないよね?」
「そうだと言ったら?」
「ここでボコボコにして、捕まえて色々と吐かせるよ」
「ハッ、そんなボロボロの身体で何が出来ると?」
新しい剣を構え直した悠。それを受けた蒼華は、ボロボロで悲鳴をあげる身体を何とか奮い立たせて、拳を構えた。
「はあ、勝手にしろ……いいもん、どうせ我は邪魔者だし……」
「お、お姉ちゃんが拗ねた……?」
カグラは後ろで一人、寂しそうにいじけていた。
が、すぐに切り替えると、レイニーと冥の二人を自分のところに呼んだ。
「ほら、そこの人間とエルフよ。こっちへ来るといい」
「で、でも……おねえちゃんとにぃが……」
「奴らは問題ない。それよりもお前たちにはやってもらいたいことがあるのだ。なに、敵意はもうないから安心しろ」
「そ、そんなこと言って、ぼくたちを油断させるつもりだろ!」
「ああもう、やはりいつの時代も人というのは面倒な生き物だな!」
カグラは髪の毛をわしゃわしゃと掻きむしったあと、言った。
「――この者の身体と、紅蓮を蘇生させるからおとなしく言う事を聞いてくれと言っているのだ!」
次回更新は明日です!
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