#53 血の匂い
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再三言いますが、この章が終わったら全体の改稿を予定しています!
では新章開幕!
「光の、柱が……ッ!」
森の中心部から見えていた『儀式』の光の柱が、モネの痛々しい叫び声と共に消えてしまった。
紅蓮達が魔族の相手を、蒼華が聖騎士団・魔王軍・エルフ軍の三つ巴の相手をし、それらが片付いた時の事だった。
紅蓮は、焦る気持ちを体現するかのように、一人駆け出した。
「モネ……ッ!」
「ま、待ってくださいお兄ちゃんっ!」
紅蓮の後を追うように、冥たちも森の中心部へと向かって駆け出す。
「――魔王が恐れていたアレが……消えた?」
同じ頃、蒼華も森の中心にあった光の柱が消えたことを確認していた。
「確か、あっちには紅蓮たちが向かって行ってたよね……」
マグナに『魔王』と呼ばれていた男が恐れ、紅蓮達が焦るように向かって行ったそこに、この戦いの真相が眠っているのだと蒼華は考えた。
ひとまず倒れている人たちは無視して、蒼華も森の中心部へと向かって行くことにした。
「俺は……俺はまた、あの子を助けられないまま……ッ!」
一度目の前で失っている悲しみを知っているからこそ、『儀式』が終わってしまえば彼女はこの世界から消えてしまうことを知っているからこそ。
紅蓮は、ただひたすらに走った。
木々をかき分け、枝で体に切り傷が出来ようとも、気にすることなく。
ただただ、前へ、前へと。
「紅蓮は……こっちね……!」
スキル『溺愛』の効果によって、深く想った相手――紅蓮の位置を瞬時に把握した蒼華も、『身体強化』によってブーストされたスピードで紅蓮たちの近くまで来ていた。
「あれは……ッ!」
「ぐれんさん! その先がエルフの里ですっ!」
レイニーが先頭を走る紅蓮にそう伝える。
紅蓮はそれを聞いて、さらにスピードを上げて森の中を進む。
次第に視界が広がっていき、少しの太陽光が差し込む神秘的な空間に抜け出る一同。
周りはツリーハウスや、扉の付いた大きな木などがあり、明らかに人が住んでいる形跡があった。
「――ここが里です……けど……」
そう、そこは既にエルフの居住区――『エルフの里』だったのだが、神秘的な見た目とは反して、異様な空気が漂っていた。
レイニーもそれに気が付いて、走る足を止めてしまう。
「何か、変な匂いがするわね……」
メルの鼻は、木々や草花の放つ自然の香りではない、別の何かの匂いを感じ取っていた。
「儀式をしてたから皆非難してるのかな……?」
「えっと……その儀式って、そんなにヤバいやつなの? お兄ちゃん」
「ああ、一人の少女をこの世界から消すことで成り立つ、胸糞悪い儀式だ……」
「えっと、いや、そういう話じゃなくて……。周りを危険に巻き込むほどの物なのかな、って思って……」
「あ、そうです……神様を召喚する儀式なので、当然危険です――」
冥の疑問にレイニーが答えた。
「……それにしても、この匂い……おかしいわよ」
「メル、何か分かったのか?」
「――血の匂い、よ。それも、かなり強い匂いだわ」
瞬間、紅蓮とレイニーの頭に嫌な考えが浮かんだ。
背筋がピリッと凍り付く感覚。
モネが、里の仲間たちが――二人は『血』という単語を聞いてさらに気持ちを焦らせる。
「まさか……」
「みんな……っ!」
不気味な空気間の中、紅蓮とレイニーは里の中を奥へと進んで行った。
冥とメルも後を追うが、メルの鼻は進めば進むほど敏感にその匂いを感じ取れるようになっていた。
「――紅蓮っ!!!」
「姉さん!?」「お、お姉ちゃん!」
と、ちょうどそのタイミングで蒼華も紅蓮達と合流した。
「ね、姉さん……無事で良かっ――」
「――待って! 何か、前から来るよ……ッ!」
蒼華は合流するなり、何者かの気配を感じ取って皆に注意を促した。
「――あ、れ……?」
「お姉ちゃん、大丈夫ですか!?」
「わ、わかんない……急に、力が抜けて……ッ!」
だが、蒼華の身体はとうに限界を超えていて、『身体強化』の効果が解けてその場に崩れ落ちてしまう。
本来なら異常な数の『身体強化』を重ね掛けした蒼華の身体は、痛みで張り裂けそうなはずなのだが、ボロボロな彼女を見た冥が『治癒』のスキルで彼女の身体を癒していたためそれは無かった。
「気を付けて……そいつ、あたしが今までに感じ取ったことが無いくらいの強さだよ……気配が、オーラが異常だもん……!」
「っ……!」
紅蓮はその言葉を聞いて、咄嗟にレイニーを自分の後ろに誘導し、桜花を構えた。
「メル、敵の数は――」
「一体よ、グレンさん!」
「よし、それならなんとか――」
「――甘いな、人間」
「――ッ」
刹那の出来事だった。
カラン……と、さっきまで紅蓮が立っていた場所には、紅蓮が持っていたはずの桜花が落ちていた。
「今……なに、が……」
「おにい、ちゃん……?」
「ぐれん……ッ?!」
「ぐれんさん、あれ……?」
目の前から、紅蓮が消えたことに驚く暇も無く、追い打ちをかけるように彼女は姿を現した。
「――お、ねえ、ちゃん……?」
「……? 姉、だと?」
「なに、その血は……なに、してたの?」
「――何、体を慣らすのにちょうど良かったのでな、一つこの里を滅ぼしたという訳だ」
そう笑って言って見せた彼女の身体は、返り血で汚れていた。
「なんで……? どうしちゃったの……ッ!? ――モネお姉ちゃんっ!!!」
次回更新は明日です!!!
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