#46 混沌と化した戦場
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最近暑いですね、、、
時は遡ること数分前。
「――それでは、儀式を始める」
エルフの魔術師たちが祭壇に集まり、そこに横たわるモネの身体に色々な魔術器具を取り付け終えると、族長はそう言った。
モネは昏倒させられており、抵抗することは不可能だったのだ。
儀式――それは彼女の肉体に現存する神を強制的に呼び出し、宿させるという、モネはおろか神の意思すら尊重していない強引な儀式であった。
「この儀式は、我々エルフにとって大きな一歩になる。必ず成功させるぞ」
そう。なぜこんなことをするのか。
それは、エルフが嫌悪するビースト族やヒューマン族に反撃する為だったのだ。
神を使役し、人間と獣人が襲ってきた際の反撃の切り札として使用する。
……そう、まさしくカルマ王国国王と同じ考えをしていたのだ。
しかし、ここで事態は急転する。
「族長……!」
「どうした。今から儀式を――」
「――人間です! 人間族の軍が森に火攻めをしてきました!」
「何……ッ!」
そう。人間族の軍――ガラドン副聖騎士団長が率いる聖騎士団が攻めてきていたのだ。
ガラドンは場所が森であることを考慮し、敵に地の利を活かさせないために森に火を放った。
「ガラドン様……よろしいのですか!? このまま燃やし続けたら我々だって……」
「安心しろ! 全員レバンス様より頂いた魔術具があるだろう!?」
そう言って、ガラドンは顔に着けているマスクと、懐に潜ませていた青い真珠のような物を数個見せた。
マスクは、見た通りのガスマスクで、青い真珠の方は水の魔力が込められた『魔石』と呼ばれるものだった。
その魔石に衝撃を与えると、即座に封じ込められた魔法が発動して周囲に効果をもたらすのだ。
今回の場合は、水魔法が発生して火事の消火や有事の脱出法として使えるわけだ。
それが聖騎士団全員に5つずつ渡されていた。
「それに、我々にとって森などどうでもいいのだ。必要なのは、この領土とエルフの人材のみ!」
「な、なるほど……!! 流石はガラドン様だ!」
「ハハハ! いいか、エルフと遭遇したら殺さず捕らえるのだ!」
『ハッ!!!』
そうして、聖騎士団による侵攻は着々と進んでいった。
しかし、それに対してエルフだって手をこまねいているだけでは無かったのだ。
「――急ぎ儀式を執り行う。大体三十分程度……それだけの時間を稼ぐことが出来たら、儀式は終わるはずだ! ――フット!」
「――はいはい。わかってますッスよ。人間たちを返り討ちにしとけばいいんスよね?」
「ああ。よろしく頼んだぞ。兵は自由に動かしていい。何としても時間を稼ぐのだ」
「……ッス」
フットを筆頭としたエルフ軍も反撃に打って出た。
聖騎士軍による火攻めは幸いまだあまり進んでおらず、エルフ軍にとっての地の利はまだ失われていなかった。
「――お前たちッ! 人間たちから森を守るんだ! やれるッスね!?」
『おうッ!!!』
「聖騎士団よ! 臆するな! 返り討ちにして捕らえるのだ! すべては国王様のために!」
『おおおおッ!!!』
両軍が、遂にぶつかり――。
そして、時は現在に戻って。
「なんだ……? 戦っている、のか……?」
俺たちは、森の中を横に移動していた。なぜって?
……後ろは燃えていて、さらにメルの索敵に収まりきらないほどの大軍が進んできている。
そして、それに対抗するように現れた前方の大軍……恐らくエルフだろうけど、さっきの声や音的に両軍がぶつかり合ってると思われる。
「ぐれんさん……急がないと!」
「あ、ああ。分かってる!」
そうだ、今はそちらの戦いを気にしている場合ではないのだ。
あの、森の中央から発生している禍々しい光の柱――あれが、レイニーの言う儀式の始まりを表しているのだとしたら、モネが危ない。
だからこそ、若干遠回りにはなってしまうが、何とかモネを助け出すべく迂回しながらモネの居ると思われる森の中心部へと向かっているのだ。
「事情はよく分からないけど、多分これマズいことになってるんだよね……お兄ちゃん!」
「ああ、この子のお姉ちゃんがもしかしたら死んでしまうかもしれなくて――」
「止まってっ!!」
突如、先陣切って走っていたメルが俺たちに静止をかけた。
俺と冥、それにレイニーは驚いて止まるが、何があったのかがわかっていない。
「メル、一体どうし――」
「――なに、あり得ないでしょ……こんなの……ッ!」
一歩、また一歩と後ろに下がってくるメル。
そんな彼女の視界の先には――。
「ケケケ……ッ! ――見つけたぞ人間のクソガキッ! それに……クソビーストッ!!」
魔王軍、四天王……マグナ、だと?
しかも、その後ろには……大量の、魔物に魔人……ッ!!!
「マグナまで……ッ! どうしてここに……!」
「――テメエらをブチ殺しに来たんだよ、なァ……クソガキ共がよォッ!!」
次回は明日更新です~!
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