#39 妖精族の姉弟の事情
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「あ、あの! ――ぼくたちを、助けてくださいっ!」
目の前の、小さな少年は俺に向かってそう言った。
が、俺は状況を全く理解できていなかった。
今の俺の頭の中は『?』でいっぱいだ。
「あー……えっと……。……うん……そう、だな……」
そこは素直に「いいよ」って言うところだろ!
って思うかもしれないのは分かる。分かるけどぉ~!!!
いやいやいや、そんな簡単に「おっけー!」なんて言えないでしょ!?
まずそもそも、俺は何にも事情を知らないし!
しかも今の俺ってば、冥に心を抉られるようなこと言われて傷心中だったしね!?
「あ、あの~」
まずい。
俺が答えに渋っているから、目の前の少年君がなんだか泣きそうになってる。
だあああ、もう!
そんな顔されちゃったらさぁ……。
「――分かったよ。よく分からないけど、助けてあげるよ」
俺は頭をポリポリと掻きながら、了承した。
流石にあの状況で断るのは難しかったから、仕方ないかな。
「――ほ、ほんとうですか!? ありがとうございますっ!」
「あ、ありがとうございますっ!」
「あー、でもさ。助けてあげるって言っても、俺に君たちを助けてあげられるだけの力があるとも思えないから、あくまでも俺に出来る範囲で、の話だよ?」
流石に、何でもかんでも出来る……そう、冥のような人間だとは思われたくないからな。
俺にだって、限度はあるさ。
「わ、わかってます! それでも、ありがとうございます!」
「いいよ。……それで? 一体何があったの?」
俺がそう聞くと、目の前の小さな少年は俯きながら、自分たちの身に何があったのかを話し始めた。
◇◇◇◇◇
まず、話をまとめる前に二つ。押さえておかないといけない情報がある。
ひとつは、今俺たちがいるこの森は、『大妖精の森』という『妖精族』が生息地にしている広大な森だという事だ。
妖精族――エルフの民は、世界各地に自分たちの住処となる大森林を支配していて、人間族の住んでいるこの『アルステラ大陸』では、『ヴェインの街』の近くに位置するこの大森林がそうなのだそうだ。
ちなみに、俺が二年間を過ごした『ディクス大森林』はエルフが住むのに適した場所では無かったらしい。
そしてもうひとつは、彼女たちのことだ。俺に助けを求めてくれた、この妖精族の姉弟のこと。
俺を頼ってくれた、勇気ある少年の方が弟の『レイニー』。
そんなレイニーに連れられているのが、姉の『モネ』。
二人は、この『大妖精の森』で暮らす妖精族の姉弟なのだという。
――さて。ここからが本題だ。
どうして二人が、俺に助けを求めてきたか。
それを弟のレイニーは、詳しく説明してくれた。
「――ぼくたちは、今……里を追われてる身なんです」
「どうして、里を……?」
何か悪いことでもしたのか、と聞いてみたのだが、どうやら当たらずとも遠からずらしい。
「ぼく、お姉ちゃんを守りたくて……! それで、里から連れ出しちゃったんです……」
曰く、こういうことらしい。
近々、モネを利用した大規模な『儀式』とやらが行われる予定だった。
しかし、その『儀式』が行われてしまうとモネの意識や人格は消えてしまい、そこに残るのはただの肉体のみになってしまうのだそうだ。
だから、それを阻止するためにレイニーはモネを連れ出してエルフの里から逃げ出してきた、と。
「私、生まれつき魔力だけはすごかったんです。持っている魔力の量が、他の人とは比べ物にならないくらいだったそうで……」
「『儀式』とやらをするのには、都合が良かった、と……」
「はい、その通りです」
その儀式には、どうやら多くの魔力を消費する必要があるらしく、まさにモネはその儀式の贄として最適だったのだ。
「私、両親が居なくて……。儀式をやらないと、代わりに弟を生贄にするぞ、って脅されて……」
言いながら、モネは大粒の涙をポロポロとこぼしていく。
「なんて最低な奴なんだ、その首謀者は……!」
この世界には、そういう奴ばっかりなのか?
人の命を軽く思ってるやつばかりじゃないか。
俺は、無意識のうちに拳を固く握り締めていた。
「そういうわけで、ぼくたちは里を逃げ出してきたんです……」
「そう、だったのか」
――これは、助けてあげたいな。
……いや、助けてあげなきゃな。
素直に、そう思った。俺は弱いけど、何か……何か一つくらいは出来るはずだ。
「――俺に、力は全然無いけど……」
「え……?」
「でも、その『儀式』とやらの為に二人のどちらかが犠牲になるのは、嫌だ。だから、俺は――」
「――君たちを、助ける」
次回は明日更新です!明後日はお休みします!
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