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最弱な俺が『最強』の美少女たちに姫扱いされる件  作者: テトラ
第五章 ≪妖精姉弟との出会い≫
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#38.5 三度目の正直

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冥ちゃん編



 ――どうして。どうして、私はいつもこうなのだろう。

 失敗した後に、気付く。何もかもが手遅れなタイミングで、分かってしまう。


 小さい頃から、わたしはずっとそうだった。


 生まれた時からわたしは『天才』で、『才能』に恵まれていた。

 ……わたしはそう言ったが、それはれっきとした事実だったから。


 小学生の頃、周りが出来ない事や苦手なことはわたしにとって出来て当たり前のことばかりだった。

 その頃は、周りの人からの評価も良くて、みんなが「すごい、すごい」と褒めてくれたのを覚えている。


 でも、そういった『尊敬』の対象だったのもすぐに終わりを迎えてしまった。

 中学生になった時、わたしが周りの人たちには出来ないことをやってみせると、始めの内は「すごい」と褒めてくれていたのが、だんだん「なんで出来るの」とか、「なんか一人だけ次元が違うからね~」なんて言われるようになってしまったのだ。



 それが、わたしにとって初めての『失敗』と『後悔』の経験だった。

 『尊敬』の対象から、『畏怖』の対象になってしまって。みんなが私を遠ざけた。


 「お前が居るとつまらないんだよ。一人でやっとけ」


 今まで友達だと思っていた男の子に、そう言われたこともあった。

 その日は、私の人生の中で一番泣いたと思う。私がもっと普通の女の子だったら。もっと、平凡でいられたら、って。


 次の日、学校に行くと、私の机は荒らされていた。

 典型的ないじめだった。


 机の上に、マジックペンで書かれた『死ね』とか『学校来んなチビ女!』みたいな暴言。

 下駄箱の中にはカエルを入れられたり、靴の中には泥を入れられたこともあった。


 先生に相談したけれど、どうやら先生もグルらしい。

 ああ、そうだ。同じクラスの中に、先生の息子さんが居たんだっけ。わたしはそれを思い出した時、全てを諦めてしまった。



 正直、死にたい気持ちでいっぱいだった。

 頭も運動神経も良くて、ついでに顔もいい天才美少女――なんてアホらしい肩書きだろう。


 こんなものがあったせいで、今の私はこうなっているのに。


 ……そう。気付くのが遅すぎたのだ。

 もっと早くに気付いていれば。そう思うばかりだった。



 数ヶ月もしていじめがやむと、私は孤立していた。

 でも、いじめのことも、ひとりぼっちなことも家族には悟られたくなかった。だから、悠にいや紅蓮お兄ちゃん、蒼華お姉ちゃんの前では必死に笑顔で振るまっていた。


 そうして、中学校は終わっていった。

 卒業式の夜、わたしはお兄ちゃんたちに呼び出された。



 ――そこで、ものすごい怒られた。



 いじめのことが知られてしまったのだ。


 「どうしてもっと早く言ってくれなかったんだ」「どうしてボクたちを頼ろうとしなかったんだ」

 悠にいや紅蓮お兄ちゃんたちは、最初にわたしを叱った。それはもう、痛いほど叱られた。



「え――?」



 でも、次の瞬間、わたしは痛いほど抱きしめられていた。

 蒼華お姉ちゃんだった。お姉ちゃんは、とても、泣いていた。


 その時、わたしは気付いた。

 ああ、またやってしまった。また、遅かったのだと。


 もっと早くこの人たちに頼っていれば良かったのだ。

 そうしてれば、お姉ちゃんを泣かせることも、お兄ちゃんたちを怒らせることも無かったはずなのに。



 その時、わたしは誓った。

 もう、紅蓮お兄ちゃんも、蒼華お姉ちゃんも、そして何よりも……悠にいを悲しませないようにしようと。

 そして、もっともっと信頼して、頼ろうと。そう、誓った。



 高校に入ってからは、牙を取り戻したように昔のようなお調子者に戻っていた。

 だって同じ学校に、お兄ちゃんやお姉ちゃんたちがいるんだもの。だから、安心してわたしは『素』でいられた。


 それでいて、わたしの日常は前みたいに崩れることも無かった。

 だから、目の前が青い光に包まれたときは本当にびっくりした。



 ……異世界に召喚されて、もう全部終わったんだと思っていた。

 でも、違った。嘘か真か、幸か不幸か、この世界にもお兄ちゃんがいるではないか。


 それが分かった時、わたしはとにかく努力した。

 早く一人前の力をつけて、お兄ちゃんを探しに行かないと、って。



 それからいろんなことがあって、ようやくわたしはお兄ちゃんとお姉ちゃんと再会できた。

 そして、お姉ちゃんからお兄ちゃんのことを任されて、張り切っていた最中に、わたしはまたやってしまったのだ。



 お兄ちゃんは、真剣な目で聞いてきた。

 「どうしてお前はそんなに強いのか」と。


 私はちょっとだけ答えに悩んだけど、結局その答えには『天才美少女』のわたしのままで答えてしまって。


 本当はお兄ちゃんがこんなことを聞きたくないのは、表情を見てすぐに分かったのに。

 一度開いた口がとまらなくて。


 とまれ、とまれってずっと叫んでも、わたしの口は話すことをやめなくて。


 お兄ちゃんが耐えきれずに走り去っていった時、また思った。

 ――ああ、またやってしまった、と。



 なぜ、わたしはいつもこうなのだろう。

 いつもいつも、失敗してから気付く。やってしまったことの重大さに。



 もう、悲しませないって決めたのに。

 わたしはまたやってしまった。


 でも、今度は失敗しない。してたまるものか。

 お姉ちゃんに……昔のわたしに誓ったんだ。



 大丈夫。今度は、きっと大丈夫。


 ……そうだよね? だって、わたしは――――




 ――――わたしは、何でもできちゃう天才美少女、式神冥ちゃんなんだから。

次回は明日更新です!

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