#34 バトンタッチ
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これにて第四章終了!!なので明日は一旦章終わりのお休みになります;;
「聖騎士団が謀反を……って、どういう――」
冥から放たれた爆弾発言に、現聖騎士団の団長である蒼華は焦ったように立ち上がった。
「だー、ちょっと待ってくださいって! 言ったじゃないですか! それ以上のことは知らないって!」
「あ……ぅ。ごめん」
冥に近づけていた顔を、蒼華は離した。
しかし、納得いっていないのか、蒼華は部屋の中をぐるぐると歩き回りながら独り言をぶつぶつと言い始めた。
「ん~、あれは謀反だと思うんだけどな~。ザ・クーデター、って感じの光景だったし」
「ど、どんな光景だったの!? 詳しく教えてよ、冥!」
冥のその言葉に、再びぐい~っと顔を近づける蒼華。
「えっと、すごい気の強そうなおじさんが壇上に立って、大勢の騎士の前で何かを言っている感じだったかな?」
「気の強そうなおじさん……ガラドンさん、かな……?」
「その人って、偉い人なの?」
「うん。副団長だもん」
二人の会話を聞いて、メルは「そういえば」と人差し指を立てた。
「確かに、ガラドンって名乗ってる人がいたわね。かなり気が強そうな人だったから覚えてるわ」
「……でも、あの人がまさか謀反なんて……」
「まあ、後のことはわたしは見ていないので、お姉ちゃんがどうするか考えてくださいね?」
冥の言葉に、蒼華は頷いて答える。
「うん、ありがとうね、冥。それが分かっただけでも、すごい助かるよ」
「これからどうするんですか?」
「……流石にそれを聞いて戻らないわけにもいかないからな……」
「聖騎士団に戻るんですか?」
「うん。もし本当にそういうことが起きるのなら、事前に食い止めないと……だし」
蒼華は、「でも……」と不安を口にした。
「でも、紅蓮を置いてはいけないよ……」
「あ、それなら! ――このわたしに任せてください!」
再び小さい胸をポン!と張る冥。
「冥に?」
「はい! ここからはバトンタッチ、です! お姉ちゃんの代わりにいっぱいお兄ちゃんとイチャイチャ……じゃなくて、手取り足取りサポートするので!」
「えぇ……やだなぁ……」
「なんですか、文句があるんですか」
「だって……」
そう言って、かなり不服そうな表情をした蒼華の前に、冥はドン!と仁王立ちして、言った。
「――いいからとっとと騎士団に帰って、クーデターを阻止してください! このポンコツブラコンお姉ちゃん!!」
「あう」
ちょっと強めに叱られた蒼華。
そんな彼女は、しょぼくれながら言う。
「わかったよ……あたしは一旦騎士団に帰って、色々と調べてみるよ……」
「それでいいんです!」
「その代わり、紅蓮のことは絶対に守ってよね……?」
「当然です! お姉ちゃんのお母さんに誓って、絶対守ってみせます!」
「……うん。お願いね」
少しだけ寂しそうな目でお互いを見つめる蒼華と冥。
「これで、お別れですね……」
「うん、そうだね……」
「――じゃあ、さっさと騎士団に帰ってください……」
「――うん……嫌だ」
「は?」
と、思ったが一瞬にして険悪なムードになる二人。
「なんでですか? 早く帰ってくださいよこのブラコンお姉ちゃん」
「いや、だってもうすぐ夜だし~? 今日はこのままここに泊まって、弟パワーをたくさん補充しなきゃだもん」
「え!? すぐ出て行かないんですか!?」
「うん、騎士団に帰るのは明日の朝にするよ~」
「はあああああああああああ!?」とブチ切れる冥。
「なんだ~やるか~?」と挑発的な蒼華。
二人は再び取っ組み合いを始めてしまい、それをメル(と桜花)は呆れたような目で眺めていた。
騒々しくも、久しぶりに訪れた平穏の時をみんなは笑って過ごしていく。
そして、夜は更けて――――。
◇◇◇◇◇
蒼華達が眠っている頃、聖騎士団の内部で怪しい動きを見せる者達があった。
「団長殿はまだ帰ってこないか?」
「ええ、まだどこぞで油を売っているようです」
「それは良好。急ぎ戦争の準備を整えるのだ」
副団長、ガラドンの言葉に側近は頷く。
「ハッ。ですがよろしいのですか?」
「んん? 何がだ」
「……このことがバレたら、もうこの国に入れなくなるのでは、と……」
すると、そんな側近の言葉にガラドンはフッ、と笑うとこう答えたのだ。
「ああ、そんな事か。それなら安心するがいい。これは、国王直々の命なのだ」
「なんと……。国王様から……」
「レバンス殿から言われてな。――『大妖精の森』を、妖精族から奪ってやれとな」
「……そうでございましたか。それなら私の方からいう事は何もありますまい」
「では急ぎ準備を整えろ。……一週間後、『大妖精の森』を攻めるぞ」
「ハッ。かしこまりました……」
若干の不安を残したまま、夜はさらに更けていく――――。
次回更新は明後日木曜日になります。幕間を投稿予定。
その後土曜か日曜日にもお休みをいただくことになるかと思います!ではでは!
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